復興は自治が試される  南相馬市視察から

 福島県南相馬市へ復興状況と今後のまちづくりの課題について視察をしてきた。東日本大震災による津波や地震被害。福島第一原発事故による居住制限区域、帰宅困難区域があることや除染対応など多くの課題に対面している市だ。これらの対応から、まちづくり、自治をどのように考えていけば参考になる例が数多くあった。

minami2 南相馬市の被害状況は、下記のとおり。

●死亡 1075人 うち震災関連死(震災後に亡くなった方)439人
●行方不明 0人
●重傷者 59人
●継承者 57人
●住家被害 23.893世帯中、4494世帯で被害。
●農地被害 耕地面積8400haの32.4%が農地流出・冠水等の被害を受け、原発事故により市内全域で稲作の作付け制限を受けている(稲以外の作付は行える)。
●人口
  7万1561人(平成23年3月11日)
    ↓
  4万6824人(25年11月28日) ※市外避難者の約44%が戻る

詳しくは南相馬市のサイトをご参照ください。

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■自治と除染

 新聞などで除染の手法についての課題が報道されたが、実際にどこまで進んでいるのか。進まないとすれば課題は何なのかを伺った。
 
 除染は、福島第一原発から半径20km圏内となる旧警戒区域、計画的避難区域は国が行うものの、他の市域は市が行っている。除染後の放射線量の目標は、将来的には年間1ミリシーベルト以下としているが、当面の3年間目標として追加被ばく量を60%として設定。線量の高いところから順に実施し、結果として空間線量が平均で1.08マイクロシーベルト/時間が0.55マイクロシーベルト/時間へと49.1%の低減化となっているとしていた。

 除染による効果はでているのだが、現実には平成27年3月末までに終了する計画の進捗は遅れているという。その大きな原因は、除染した後の除去土壌などを置いておく仮置き場が決まらない、あるいは、決まるまでの時間がかかっているからだった。除染はすぐにやって欲しい。しかし、仮置き場だとしても、除去土壌を近くに置いてほしくなくという市民感情が壁となっていた。
 武蔵野市でもかつて、ごみ焼却場の場所をどこにするかが大きな問題となり、今の自治の手法の原点ともなっているが、同じことが起きていたことになる。いわゆるゴミ施設など施設の必要性は認めるが、自らの地域には建てるなというNIMBY(ニンビー・Not In My Back Yard)となり、解決のための時間がかかっていたのだ。

 現在でも決まっていない地域もあるが、決まった地域での手法を聞くと、住民に任せて結論を得るしかない。そのためには時間がかかるということだった。最も興味深いのは、その場所の選定は行政が言いだしてはダメということだった。

minami4 市は除染を早期に行うために、当初、沿岸部にある市有地を仮置き場として設定したという。しかし、線量の高い山間部の除去土壌を線量の低い沿岸部になぜ持ってくるのか、よそに持ってこないで自分たちの地域に作るべきだとの反対にあい計画を断念。そこで、旧行政区単位で場所を決めてもらうように住民に依頼した。しかし、十数人しかいないような地域でもどこにするかで協議が進まず計画全体の遅れにつながっていた。

 この経験からの市の対応が興味深い。

 それは、具体的な土地の場所は行政から言いだすべきではない。行政から言いだすと住民は反対しやすく、暗礁に乗り上げてしまう。だから、住民同士で話し合ってもらうしかないとの体験談った。
 行政は場所が決まった後、仮置き場で考えられる対応策を行い、安心感を生み出す。そして、その実例を他の地域へも伝えていくことで二例目、三例目へとつなげていくしかない。時間はかかるが、これが自治の姿なのだろう。そこまで行く間には、市職員が矢面に立っていたとの話も聞いた。メンタルになる職員も少なくないという。本来は同じ被災者なのにと思ってしまったが、極限の場合にはどこかにはけ口が必要なのかもしれない。
 課題と思えるのは、その決め方が明確ではないということだ。自治のルールだ。武蔵野市で考えれば、重要課題をどのように決めていくのか。行政、議会が決めていくのか。住民が主体になるのか。住民が主体になるとすれば、どのように決めていくことがいいのか。南相馬市のような状況に武蔵野市がなる可能性は別としても、早急に考えなくてはならないと実感をした。

 南相馬市では、線量の高い山間部での除染は終えたという。しかし、今後は人が多く住む市街地が対象になるという。人が多いだけでなく、置く場所も少ないとなれば、これまで以上に仮置き場を作ることができず、除染が進まないことになりかねない。自治が試されそうだ。

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写真は上から
・南相馬市役所。2011年4月に市役所を訪れているが、表面上は平静にもどっていた
・南相馬市の担当者からヒアリング中(山田実滋賀県議、大橋みちのぶ滋賀県議、佐藤せいこ静岡市議と)。写真に津写っていないが、小川尚一南相馬市議にも同席したいただき、説明もお願いした)
・除染状況(南相馬市資料より)
・沿岸部の状況。がれきは片付いたが、更地のまま。火力発電所は稼働しているのは何とも言えない

つづく