ハモニカ横丁とまちづくり

hamonika1 吉祥寺ハモニカ横丁で「ハモニカキッチン」など個性的な飲食店を展開している株式会社ジャパンビデオセンター代表取締役の手塚一郎さんに横丁とまちづくりをテーマに話を伺った。個性的な店と同様、話は多方面に及んだが、「面白いことをやらないと人は集まらない。課題があるほど面白い」「行政はまちづくりと商売にもっとも向いていない」という言葉が印象的だった。

 手塚さんは、1979年にビデオ機器やメディアソフトの販売店を吉祥寺にオープン。以来、個性的な飲食店を展開し、吉祥寺に17店舗、三鷹駅北口(中町のハモニカ横丁ミタカ)に8店舗の他、下北沢、高円寺、道玄坂にも出店し、現在、28店舗を展開している。店の詳細は、サイトをご参照いただくとして、なぜハモニカのように、表現は悪いかもしれないが、雑多な雰囲気の店を多く展開しているか。三鷹に進出した理由。吉祥寺をどのように考えているかに興味を持ち、話を伺った。話は、現代都市政策研究会の定例会で伺ったもの。

hamonika3■商売人の感覚 

 手塚さんは個性的な店を展開しているが、その商売の基本原則は変わらないという。それは、商売は実験と同じで失敗する可能性が高い。やりながらやるしかない。会社の会議では、売れない商品は何で、仕入れは誰が行ったか、責任者は誰かとなりがちだが、売れているのは何かで考えている。失敗を責めたりあげ足を取るのではなく、寛容にならないとならないならない。20%が売れ線で後は別だと話されていたことだ。
 売れない問題追及ではなく、売れるものを伸ばすとの考えなのだろう。失敗してもいいからやればいい、と何回も話されていたので、ここに一つの特徴があるのだと思う。失敗は想定の範囲にあるということだ。とかく、失敗をしないためにと考えてしまいがちな行政感覚とは違うな、と思った。

 これらの話から、「行政はまちづくりと商売にもっとも向いていない」との話になった。行政の基本は平等、公平性。しかし、商売にとって平等は向いていない。商売は差別化することで利益を得る。どの客にも平等にするキャバクラでは繁盛しないのと同じだとも話されていた。
 ようは、他のまちとの競争で利益を上げるのだから平等にはなれないということだろう。どのまちも共存共栄とは言いがち(正論ではあるが)だが、吉祥寺というまち全体で考えれば、立川や下北沢など他のまちとどちらが生き残るかを考えるということだろうか。まちは40~50年で終わるもの。終わることを感じていないことに問題がある。全部が発展するわけがない。捨てるまちも出てくるとも話されていたが、商売人としての現実感だと思った。行政からとても言えないことだが、それが現実なのだろう。絵空事の計画ではまちがどうなるか、と問われているようだった。
 
hamonika2 手塚さんは、気になるまちとして、ナイジェリアのラゴスを上げていた。ラゴスは「市域人口ではアフリカ最多でありエジプトの首都カイロと共にアフリカでは世界の有数のメガシティ」(Wikipediaより)で、都市計画が機能しておらず、交通渋滞はひどいが活気のあるまちだ。吉祥寺も三鷹もラゴスのようになって欲しいとはとても思わないが、活気は見習うべきなのだろう。
 商業街としては、ニューヨークのチェルシーマーケットを上げていたが、こちらのほうがいいと思う。

■三鷹への進出した理由

 三鷹駅北口にも進出したのは、新宿思い出横丁やゴールデンまちの人たちと横丁フォーラムを立ち上げ、新しい横丁を作ってみたい、実験をしてみたいと思っていたところに、現在の場所が空いていると話があったことで始めたという。吉祥寺は家賃が高くてぎっしりしてやりにくいが、三鷹に来ると駐輪場と駐車場ばかりでのんびりできるだろうなと思い始めたのだそうだ。

 この話を聞いていて、商売人としてではなく、まちがどうあるべきか、との理想も考えての進出に思えた。手塚さんは、六本木ヒルズのように何もないところにまちをデザインするのでなく、何十年もかかって空間を作る、時間をかけることが必要。一坪しかない店でも工夫はするものだと熱を入れて話されていたからだ。計画は頭でっかちの産物で的を外さないか、とも話されていた。きっちりとした都市計画を作りできあがったまちが、どうもきれいすぎて親近感がわかない、親近感がない。あるいは、どこでも同じような街並みになりがちと思っていたが、計画ありきではない逆の発想もあるのだなと思った。
 何よりも、呑めればいいじゃないか、そこにいて3年いればなんとかできるとも話されていたが、このことには、とても親近感を覚えた。と当時に、その理想のまちが横丁なのだろうと思った。

 また、立ち飲みを重要視しているのは、見ず知らず人と話すきっかけが作りやすいから、コミュニティを作りやすいから。僕は現場に強い。テロリスト、宮本武蔵タイプだ、とも話されていたことで、なんとなくまちづくりのコンセプト、考え方が分かったような気がした。

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 行政とまちづくり、商業者との関係についても今日深い話があった。それは、補助金頼みになっていないか。おかしいことをおかしいと言えない組織になっていないか、との点だった。補助金頼みではなく自ら考えて実行すること。当たり前のことだが、できていないケースがあるということだろう。景気が良いうちは良いかもしれないが、下り坂になった場合、立ち直れるのか。行政からの補助金はいつまでも続くとは限らないと考えれば、意味深い指摘だった。
 
 三鷹の今後については、イベントがなく、わざわざ行ってみようと思うよう仕掛けがない。だから、何でもいいから丹念にやるように小さなイベントを始めているという。儲からないが、フランチャイズではやれないことをやらないと話されていた。女性をターゲットにしたイベントなど吉祥寺とは別の切り口で行われている。成功となるかは、まだ分からないが、新たなまちとして今後にも期待をしたい。

 面白いイベントとしては、横浜の六角橋商店街が行った商店街プロレスを上げていた。プロレス好きとしては、このイベントは面白そうだ。

【参考】
タウンニュース 六角橋で商店街プロレス

■突破口

 吉祥寺の魅力を高めるには、まち全部ではなく、2割が元気になること必要で、そのために、ハモニカの2割が面白くなればと考えてきたという。まちの全てではなく、まちをリードする存在を作ること、生み出すことが重要ということだ。

 手塚さんは、20%が売れ線でいいとはなされていたが、これは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した統計モデル、「パレートの法則」と同じだ。また、組織論などでもよく使われる「2-6-2の法則」とも似ている。全てにまんべんなくではなく、突破口を開く2割を重視するということだ。
 平等、公平の行政計画にも意味があると思うが、このような突破口を作れる計画、事業も必要ではないか、突破口を作れる人、事業者を生み出すことを重視すべきではないかと伺っていて思った。

写真は、都市研での講演の様子とハモニカ横丁ミタカ。吉祥寺よりミタカが優れているところは、トイレが室内にありきれいなところ、と話されていたが、まさにそのとおりだった