生活保護の改正と不正受給への対応 武蔵野市の場合から

 12月6日、国会で生活保護法改正案が自民、公明、日本維新の会、みんなの党、生活の党の賛成多数で可決した(共産、社民は反対、民主は欠席)。生活保護費の抑制が目的とされ申請時に申請書の提出を義務付ける規定と扶養義務者に扶養できない理由の報告を求める規定などが盛り込まれた。
 一方で、この11月に住所を偽り生活保護費をだまし取ったとして逮捕された容疑者が、武蔵野市でも同様の手口で申請をしていたと、一部のメディアが報道していた。武蔵野市でも不正が行われているのを確認してみた。そして、法改正により不正受給が防げるようになるのだろうか。

■不正への武蔵野市の対応

 報道によるとこの容疑者は、『「仕事を解雇された上、住むところもない」と語り、戸籍や住民登録、出生地、両親についても「記憶がない」』として生活保護費や治療費を不正に支出させた疑いがあり、同様の手口で、武蔵野市、江戸川区にも保護を申請したという(読売新聞多摩版 2013.11.15 朝刊)。

 武蔵野市がどのような対応を取ったかを確認したところ、24年の夏ごろに本人が偽名で市役所を訪れている。他自治体で需給されていたようだったが、そのことは言わずに同様の手口で申請をしたため、当日に宿泊できる宿泊提供所を紹介した。本人は、施設へ行ったが、その後、いなくなってしまった。市としての支出は、一日分の宿泊提供所への費用のみで他にはない。
 同じように翌年にも来たが、記録が残っていたことを本人に伝えるといなくなり、その後、町田市へ行ったらしい。町田市から問い合わせがあったので、情報提供をしたとしていた。

■法改正での不安

 今回の法改正で、申請者は今後、書類を提出することが求められる。このことで
『申請書類を用意できるか疑問である。「書類不備」を理由に申請を受け付けない「水際作戦」が心配だ。
 申請者の扶養義務のある親族に対しては、扶養を断る理由の説明を求めることや、親族の収入や資産を勤務先や金融機関に照会できる。
 これでは親族に及ぶ迷惑を考え、申請を断念する人がでる。扶養義務を負う人の支援が制度を利用する前提だと誤解を生む』(東京新聞2013年12月16日 社説)と心配される一方で、このことでの抑制効果が期待されている。親族が裕福ならいいが、そうでない場合や関係が良くない場合には新たな問題が起きそうだ。

■改正の前に

 芸能人の親族が生活保護を受給していたことが、この改正に結びついたとも言われている。確かに増えていく生活保護費をどうするかは大きな問題だ。しかし、生活保護費よりも低額で働いている人との差、生活保護からどうやれば就労につながるのかという根本的な問題を解決せずに抑制を目的にしての改正では、余計なひずみが起きないかと思う。

 生活保護は最後のセーフティネット。水際で追い返すことはしてはならないが、不正受給は許されない。武蔵野市のように、他の自治体と情報などの連携することや、まず必要なことで対応すればいいのであって、法改正をしなくてもできたことではなかったのかと思う。決められる政治の向かう先に不安がよぎる。