工期の遅れで約6億円の工費増 吉祥寺東町の下水道改善工事補正予算

 12月16日の市議会建設委員会で、吉祥寺東町1丁目(旧法政大第一中・高校講堂跡地)で行われている合流式下水道改善施設設置工事が遅れたことにともなう補正予算が審議された。補正金額の総額は、6億4500万円。当初予算での事業費は33億6800万円だったが、遅れにより、事業費が40億1300万円になる(※1)。これは、工事関連費用としては、武蔵野市始まって以来の高額な補正予算だった。



 
gesui1 この工事は、現在、女子大通りの地下を流れる下水道が、大雨で水量が増えたさい、すべてを流すことができず、容量を超えた下水を善福寺川に放流している。そのため、川の水質汚濁や公衆衛生上や景観上の問題が発生しており、この工事で一時的な貯留槽を設置して防ごうというものだ。この場所は、市が買い取っていた。地下に貯留施設を設置し、地上部を公園にする計画だ。

補正予算資料_ページ_09 
 行われている工法は、ニューマチックケーソン工法で、『主として鉄筋コンクリート製の函(躯体)を地上で構築し、 躯体下部に気密な作業室を設け、ここに地下水圧に見合った圧縮空気を送り込むことにより、 地下水の浸入を防ぎます。そして掘削・排土を行いながらその躯体を地中に沈めることで、橋梁や建物の基礎、 あるいはシールドトンネルなどの発進立抗、地下鉄や地下道路のトンネル本体として広く活用されています。 』(日本圧気技術協会のサイトより)というもの。巨大な躯体(貯留施設本体。大きさは武蔵野市役所の西棟ぐらい)の床の下を掘りながら躯体をだんだんと沈めていく工法で、土留めを行いながら大きな穴を掘った後で躯体を作る工法よりも周辺への振動や騒音が少なく、工費も低額になるのが特徴といわれている。

 

 工期が遅延したのは、市の説明によると下記の理由からだ。

①掘削土量の増加に伴う遅延 1か月
 近くにある高圧線との距離を、当初の4mから6mへと離したことにより、掘削深を2mから4mへ変更による掘削土量の増加及び仮設の変更による変更による遅延。

②掘削工事の遅延 2か月
 土質が想定外の粘着性であったこと、含水率の高かったことが原因で初期工事が遅延

③作業ヤード縮小による遅延 2か月
 工事現場内の工事車両の通行について、近隣住民と協議の結果、振動・騒音を軽減する配慮から通行できる範囲を設定し、作業ヤードを縮小したことで建設工事などの同時施工が困難となったことによる遅延。

 工事費の補正額(増額)の概要は下記となっていた。

①工法及び構造変更等による補正 2億3700万円
 高圧線との離隔、作業ヤード縮小に伴う工法の変更及び脱臭装置の地下化に伴う構造変更による増額。

②工期遅延による補正 1億2000万円
 ケーソン設備及び防音設備等の賃料の増加。

⑨法的な項目による補正 2億8800万円
 スライド条項(※2)、遅延による事業費増に対する費用、消費税改正にともなる増額。

 概要をさらに簡単にまとめてみると、工事の当初で想定とは違った土質であったため、予定通りに掘削工事が進まなかったこと(現在では対応している)。
 高圧線が近くにあるが、当初想定していたよりも距離が必要になり、このことで、想定している容量が確保できず、より深く掘ることが必要になったこと。高圧線との距離が想定よりも近くなったため、当初想定していた廃土キャリアという土を大量に引き上げる機械を二機使えず一機となり、一機分はクローラークレーンでの対応することで引き上げる時間がかかってしまうこと。
 周辺住民からの要望で作業ヤードが縮小され工期がよりかかってしまうことや当初は地上部に考えられていた脱臭装置を地下にする設計変更をしたことでの工費増が理由だ(技術的なことは自己解釈なので細かくは違うかもしれない)。

 そして、工期が遅延することで、当初想定以上に労賃が上がっていたことでの工費増に加え年度内に工事が終わらないことで、4月からの消費税増税分も加算され、工費が増えてしまった。

■原因は何か

 委員会では単純に工事が遅れてしまうことで、6億4500万円も払わなくてはならないのか。見積もりが甘かったのではないか。周辺住民への特別な配慮に課題はないのかといった趣旨の質問があった。この場所は、法政大第一中・高校が移転したさい、売却地に学校だからと許された高さを利用して住宅地の中に大型マンションが建設されたことで周辺住民と市、法政大、建設業者とで大きな問題になっていたからだ。
 答弁は、事前調査や住民との合意形成をさらに慎重にしたい。市、工事事業者との連携に課題があったのは確かだと井上副市長からあった。

 以前、本町コミュニティセンターのエレベーター設置で技術面の確認を怠っていたために、予算を付けたのに設置できなかったことがあった。規模は違うとはいえ、同じように市の調査能力、積算能力に課題があったといえるのが今回の補正予算だ。すべての委員の意見を聞いたわけではないが、補正予算を認めないと、工事が止まってしまうため否決するわけにもいかず、釈然としないままで可決したのが正直なところではないだろうか。
 調査能力、積算能力を具体的にどのように改善できるかの決め手は思いつかない。以前から技術系職員が少なくなり積算が難しくなっていると指摘する意見を聞くが、このことも背景にはありそうだ。増やせばすぐに良くなるのではないだろうが、人事を含めて市の今後の改善策を議会としては期待するしかないのだろう。同じことを今後、繰り返してはならない。
 周辺住民への配慮は、問題があった地域であろうとなかろうと、迷惑施設でもある下水施設を受けて入れてもらう以上、一定の配慮は必要だと思う。ただ、工事に伴うリスクや費用について、どのように説明をしていたのかは分からない。答弁では具体策について明言はしていなかったが、合意形成の手法などの改善が必要なのだろう。巨額な費用とともに、大きな反省点を残した審議だった。
 

※1 工事費の財源内訳
 国からの補助金=14億8300万円。都からの補助金=7407万7000円。地方債(市の借金)=23億5050万円。一般財源=1億542万3000円
 
※2 スライド条項
工期内に工事材料が著しく高騰し、工事ができなくなるおそれがある場合に結ぶ契約。実勢価格が大きく変動している時に行われる。

画像は、議会に示された下記の説明資料からの抜粋。

【資料】
2013年12月16日建設_吉祥寺東町1丁目合流式下水道改善工事_補正予算資料.pdf