給食のコスト 単純な数字の裏にあるもの

 24年度決算審査で各会派から要求した資料の中で給食一食当たりのコストが示された。給食のコストは、先の市長選挙で争点のひとつになっていたものだ。資料によると一食が711円~909円。この価格だけど見ると確かに高いと思うのだが。

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 提出された資料から23年度決算と25年度予算でのコストをまとめてみた。単独校は、境南小、5小、本宿小、桜野小の額。北町は他の小学校8校分の共同調理場の額。桜堤は中学校6校分の額。カッコ内は小学生の食材費=250円、中学生の食材費=320円を入れていない額。保護者からの給食費は学校給食法により食材費とされているため、この額は民間に委託したとしても変らない額だ。
 このコスト計算には、提供した給食の調理数を事業費で割ったもの。イニシャルコストや施設修繕費は除かれている。

■一時期下がったが再び上昇

 給食の一食あたりのコストは、平成13年度で783円(※1)で食材費の250円を加えると、一食が1033円となっていた。平成17年度決算では、668円(食材費込で918円)と下がったものの、平成20年度には934円(食材費込で1184円)と再び上昇している。上昇の原因は、人件費が主で、市職員が13年度で37人、17年度で31人と少なくなったが、20年度は中学校給食を開始(※2)したことで44人と増えている。20年度正規職員人件費総額を44人で割った1人あたりの単純人件費が約881万円になり、この額が影響していたと考えられる。

 平成22年3月に給食・食育振興財団が設立され、同年4月から小中学校の給食が委託されて現在となっている。市長選では、その後の23年度数値で批判されていた。財団を作りコストが増えているというのが批判の趣旨だろう。

 この数字について、決算委員会での質問や他にも調べてみると、単純にはこの数字だけでは判断ができないことが分かる。

■食育のコスト

 そのひとつは、食育事業を事業費として計算しているかだ。財団は学校へ訪問しての食育を各学校で年に10数回、単独校では30回行っている(答弁から)ことや食育フォーラムなどの一般向けの食育事業を行っている。これらは調理以外の事業であり、この事業費を算入しているかだ。
 このことについて質問をしたところ答弁では、参入していないとしており、事業収入として参入すればおよそ4000万円の事業費と考えられる。この額を算入すると24年度決算額が、単独校で731円ぐらいに、北町調理場で701円ぐらいに 桜堤調理場で880~890円になるとの答弁があった。

 また、この決算数値は、現在の職員の給与から人件費を計算しており、市職員から財団に移った年齢の高い(給与も高い)職員の人件費が反映されている。今後、市職員よりも給与が低く設定されているプロパー職員に入れ替わっていくことで人件費は、今後さらに下がることになる。さらに、以前の市直営で行っていた頃の事務事業評価書には水道光熱費が算入されていないため、実際にはさらにコストがかかっていたことも分かった。 直営時との比較は、同じデータで比較することができないので正確ではないが、直営時に比べ、財団にすることでコストは下がっている。

 コストを下げるには、この人件費以外にもやり方はある。例えば、ご飯を調理場で炊かずに外部委託にすれば、その分の人件費や設備費用が下げられが、食べる時には冷めてしまう。食材についても、調理済み食材やカット野菜を使う、地産野菜を使わず、産地を問わずとにかく安い食材にすれば、さらにコストは下げられる。しかし、そこまですべきかを考えなくてはならない。コストは質と密接だからだ。

■給食の質、内容とコスト

 武蔵野市の給食は、下記の指針で行われている。昼食のためにここまでやる必要があるかとの考えはあるだろうが、たかが一食、されど一食だ。食の乱れを考えれば、教育として行うべきで、この質を下げるべきではないと私は考えている。もちろん、可能な範囲でのコスト削減はさらにすべきだろう。
 民間委託をすべきか否かを考えるのであれば、このような質を保てるのか。保つための人材を確保できる費用を払えるのかも考えることが必要だ。とにかく安くすべきか、質をどこまで保つかを考えなくてはならない。民間委託すれば、すぐに解決するものではないのだ。
 
 決算審議では、先の市長選挙で給食批判をした候補を応援した議員から、このコスト表から新たな批判はなかった。それよりも、内容、質をもっと知らせるべきだとの意見があった。このことは私も同じだ。事業内容をコストも含めて市民に知らせていくこと。そのうえで、コストをどこまで下げられるのか。質を落としてまで下げるべきかを議論しなくてはならない。食材にこだわり手間をかけてば、それだけコストは上がる。単純な数字だが、その数字の背景も考えたうえで判断をすべきだろう。コストが下がり質も保たれている。永久にとは思わないが、このままの財団方式で続けていくべきだ。

 武蔵野市 学校給食の献立作成及び給食調理の指針(抜粋)

●献立作成上の指針
 
・米飯を中心とした献立構成とし、その中に、パン、麺の献立を盛り込む。
(米飯、パン、麺の割合は、週 5日のうち米飯 3回、パン 1回、麺 1回とする)
・偏食や食べず嫌いをなくすため、多様な食品を取り入れるとともに、好き嫌いの多い食材については、食べやすくなるよう調理法の工夫を心がける。
・噛む習慣づくりに資する食材の使用を心がける。
・家庭で使用しにくい食品を出来るだけ多く取り入れる。

●食文化の伝承
・日常的に食べられる和食献立を積極的に取り入れる。
・和食献立に向く食材の紹介と調理法を伝える献立づくりを心がける。
・伝統行事と食との関係を伝えるため、行事食を取り入れる。
・四季を大切にし、旬の食材の使用と紹介を行う。

●栄養バランスへの配慮
・栄養価は、文部科学省通知を目標にし、武蔵野市の特色を活かした食品構成とし、特に不足がちな微量栄養素(鉄・カルシュウム・ビタミン類)、食物繊維の摂取に努力する。・塩分・糖分・脂肪の摂取過多にならないよう注意する。

●食材選定の基本的考え方
・食材の選定については、安全性を最優先して使用する。具体的には、公的に認証を受けた「有機JAS」や「特別栽培農産物」のほか、生産履歴や残留農薬証明書等、安全性が確認できる書類の提示によって選定する。
・生産地視察等を定期的に行い、食材の安全性の確認や生産者の安全への考え方を確認する。
・調味料・加工品については、使用材料の確認をできうる限り行い、安全性の確認されたものだけを使用する。
・食材の鮮度、質を大切にし、食品本来の味を子どもたちに伝えられる食材選定を行う。
●主な食材の選定基準
・米:指定生産者より購入。(無農薬・有機肥料米、低農薬米、特別栽培米)
・パン:学校給食会指定業者と国産小麦による学校給食用パン供給契約書を締結。
・麺:国産小麦の使用を指定して製麺。特にうどんについては、盛岡・南部産の地粉を指定して製麺。
・肉・魚:生産地、加工地などの履歴が確認できるものの中から、毎月の物資購入部会(入札)で、保護者、校長会、教員の代表と栄養士が、試食の上、決定。
・卵:開放型鶏舎、非遺伝子組み換え飼料、抗生物質不投与で育てられた国産鶏の卵を使用。
・野菜・果物:市内産野菜を優先使用するとともに、他産地の農産物については、基本的に有機JAS、特別栽培農産物のものを選定。
・乾物・調味料類:食品添加物、保存料・着色料などの無添加のもので、使用材料についても、極力使用材料が分かるものを選定。

●手作り調理の徹底
・肉、魚、野菜などの生鮮食品は、当日納品を受け当日調理を行う。
・調理品、半調理品は一切使用せず、素材からの手作りを徹底する。
・カレールー、ホワイトルーなどについても、手作りで調理する。
・旨味調味料を一切使わず、和風、洋風ともすべて出汁をとる。
・食材は手切りを基本とし、食材本来の味や食感を生かすため、食材と調理法にあわせた切り方とする。
・調理をする際は、食材と調理法の特性にあわせ、食材本来の味や食感を生かす手順によって調理するものとする。

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※1 当時は中学校給食を実施していないため小学校の共同調理場でのコスト。他も含めて事務事業評価シートからの数字

20年度(21年評価)

17年度

13年度

※2 中学校給食は平成20年11月から二中で始まり、22年4月に4中が実施したことで全6中学校実施になった。