市民参加が活発だから指定管理にはできない。伊万里市民図書館視察報告

市議会文教委員会の行政視察で佐賀県伊万里市民図書館を訪れた。「○○市図書館」ではなく「市民図書館」とあえて名付けられており、市民による支援が活発で知られ、また、図書館による市民支援、ビジネス支援でも知られている図書館だ。そして、指定管理者制度を採用しないことも決めている。佐賀県と言えば、武雄市の図書館が有名だが、その対極にある図書館とにも思えた図書館だった。

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伊万里 (4) 視察で最も印象に残っているのは、伊万里市民図書館設置条例の第1条に「図書館は地方自治の発展のためにある」と書かれていることだ。図書館にはこの条例の一文と図書館の自由宣言が誇らしげに掲げられていた。武蔵野市の図書館条例は「第1条 図書館法第10条の規定に基づき、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、及び保存して市民の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的として、武蔵野市立図書館を設置する」とあるように、通常は図書館法に書かれていることをそのまま条例にしてるのだが、あえてここまで明確に目的を示していたからだ。
 そして、この条文があることで、市民への情報提供、資料提供を行い、議員への資料提供、調査協力なども行うのだという。「図書館は貸本屋ではなく、行政課題を解決する支援をする。行政課題は市民の課題でもある」と対応してくださった館長は話されていたが、この条文の具体化とも言えるのだろうと思う。実際に議員も一般質問などの資料を探すためにも図書館を利用しているのだそうだ。図書館の本来の機能を発揮していることになる。

■なぜ市民参加が進んだのか

 伊万里市民図書館が誕生したのは、平成7年こと。まちづくりのために市民が成長するための図書館に、小さ伊万里 (2)くても日本一の図書館にしたいと当時の市長の思いで「伊万里をつくり・市民とともに育つ・市民の図書館」を目標として建設を行い、市民図書館となった。この時に設計図が固まるよりも前に市民に参加してもらい、ともに設計や図書館とは何かを協議するなど市民参加を行ったのが市民による支援が活発になった大きな理由だと館長は話されていた。市民による図書館支援は、アメリカの「図書館友の会」(friends of the library)が知られているが、伊万里市でも参考にしたそうで、実際に市民の人をアメリカまで視察に行かせたのだそうだ。市民の組織は「図書館フレンズいまり」(会員数365名。年会費1000円/25年1月現在)といい、読み聞かせなどのボランティアだけではなく、図書館の廃棄本も含めた古書の販売なども行い、その利益の一部(年額20万円ほど)を図書館に寄付しているのだそうだ。会の目的は、「図書館の活動に協力し、提言することにより、伊万里市民図書館が市民のための図書館であり続けるよう、守り育てること」だそうで、活動の合言葉は協力と提言。協力はするが意見はいう。それも楽しみながらなのだそうだ。

「図書館フレンズいまり」の活動は、ボランティアで完全に無償。活動へも補助金は出していない。ボランティアとは言うものの、有償になることもある武蔵野市とは異なる点だ。
 市民の自発的事業の支援はするが、お金は出さないことは設立時からの約束で、その代りに、可能な範囲で自由にできるようになっているという。実際に図書館の中に「図書館フレンズいまり」の専用コーナーが設けられ、図書館の中に和室やクラフトができる部屋、コンサートができる小ホールや中庭にはオーニング(可動式テント)があり古本市などのイベントができるなど市民活動を行える施設となっている。また、滞在型の図書館もコンセプトだそうで、館内や中庭に多くの椅子が配置されていることも施設としての特徴だった。
 
 武蔵野市と比較すると、市民参加の順番が違うことにも気が付く。例えば武蔵野プレイスを建設するさい、図書館友の会を参考にして市民組織、支援組織を建物よりも先に作ることがすべきだと私は議会で提案をしたことがあったが、施設全体ではなく市民活動フロア利用する人を対象にワークショップなどを開催し、組織化の試みをしていたのだが、設計や建設に時間を取られたのか、できていないのが現状だ。現在、市民団体のつながりを持てるような協議体を作り始めているが、施設よりの先に作るべきではなかったかと思う。プレイスの大きな課題だと思うが、今からでも十分可能なので、このことは今後に期待をしたい。
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■指定管理者制度にしない理由 

 図書館の多くは指定管理者制度ににより民間に運営を委託している例が多い。その理由は、コストの削減と市民サービス向上とすることがほとんどだ。伊万里市民図書館は指定管理者制度を採用していないが、その理由についても伺った。
 もっとも大きな理由は、「市民がこれほど参加している施設を民営化できない」からだという。確かに運営を別の事業者にしてしまうと、市民との関係はリセットしてしまうことになる。市民参加をどのように規定し責任は誰にあるのかを突き詰めていくと指定管理者制度では内容を仕様書に書き込み契約として指定した業者に行わせ、評価もしなくてはならない。5年ごとに事業者が変わる可能性もあり、市民との関係を続けることもその都度に契約していくのも難しいだろう。そう考えると、理解できることだった。
伊万里 (7) 費用の面では、委託とほぼ変わらないのだそうだ。そうなると、指定管理者制度にする最大の理由がなくなってしまうことになる。なぜ費用が変わらないかと言えば、嘱託職員を増やすことで人件費を抑えているからだそうだ。その嘱託職員も5年を超えて長期間雇用していることからスキルを重ねており、図書館の機能低下になっていないという。これはこれで雇用としては別問題を持つと思うが、図書館の機能を発揮させるには図書館員のスキルが重要であることを物語っていることになる。市の職員も、市役所全体の職務を理解することや人事交流も必要なことから移動はするが、基本的には図書館を職場として長期的に配置する人事を行っているのだそうだ。
 平成25年度での図書館職員は18名。正規職員(市の職員)は5名でうち3名が司書資格を持つ。嘱託職員は司書資格を持つ8名。臨時職員5名で構成されている。司書資格持つ職員が多いことで専門職で運営していることになる。

 一方で市の税収の大幅な落ち込みが激しく、図書館費は大きく削減されているという。資料費は年額で3000万から1800万になっている。これ以下になったら「図書館の臨界点」になるそうで、やらないほうがいいくらいだと市長や議会には説明しているのだそうだ。市の財政状況が大きく影響していることになる。大きな問題だろう。

伊万里 (8)■図書館の目的が問われている

 何のために図書館があるのか。何のために指定管理者制度を採用するのか。そして、このような市民参加ができたすれば、それでも行うのかが図書館には問われている、と思った。
 指定管理者制度を採用した図書館では、コストだけではなく、そもそもが活性化していない。市民への認知度も低く、サービスの内容も良くない、機能を発揮できる職員がいないなどの理由で行うこともある。図書館が本来の機能を発揮していないケースだ。
 図書館に指定管理者制度はふさわしくいないと私は基本的に考えているが、このようなケースであればベストではなくともベターな選択になるとも考えている。つまり、図書館の目的は何か。目的のために機能しているかが問われており、機能を発揮させるには、指定管理者制度が有効なら検討することは否定しないとの立場だ。指定管理者制度でなくとも、直営で一部業務を委託する選択肢もあるとも考えている。

 武蔵野市では、中央図書館と吉祥寺図書館を直営。複合施設である武蔵野プレイスを指定管理者制度により委託を行っている。ただし、プレイスの場合は市が100%出資する財団への委託であり、市の職員が出向し館長を務めているなど純粋な民間委託とは異なるが、今後、民間も含めて指定管理者制度により運営者を決めることや中央図書館、吉祥寺図書館も指定管理者制度を導入する検討も行われている。近く、どのようにするかが決まるはずだ。
 その時、武蔵野市の図書館は何ために、どのような機能を発揮しているのかが問われるのだと思う。無料の貸本屋ではなく「地方自治の発展のためにある」図書館なのか、市民がそのような図書館を求めているのかが問われるのではないだろうか。

 伊万里市民図書館は、予算面を省けば、理想の図書館だと思う。このように市民が支援する図書館を武蔵野市でも実現すべきだ。その具体的手法を今後もさらに考えていきたい。

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<基本データ>

●伊万里市
 人口 約5万7000人
 予算規模 約224億円

●伊万里市民図書館(図書館は市内に1館。他に移動図書館が2台)
 開館時間 火~日曜日 10~18時 金曜日10時~20時
 休館日 月曜、第4木曜日、特別整理10日間(蔵書点検)、祝日開館
 蔵書収容能力 48万冊
 貸出数 約51万5000冊/年
 図書館予算 1億1200万円。うち資料費は1800万円
 

●武蔵野市(図書館は3館)
 人口 約14万人
 予算規模 約578億円

●武蔵野市立図書館
 開館時間
  中央図書館・吉祥寺図書館
    月~木曜日 9:30~20:00
    土・日曜日・祝日 9:30~17:00
  休館日 金曜日、館内整理日(毎月第一水曜日、1月は4日)

 武蔵野プレイス
  平日・土・日・祝日 9:30 ~22:00
  休館日 水曜日 (第三金曜のある週および1月の5日以降の第一水曜日を除く)、第三金曜日
  (三館とも、年末年始、図書特別整理期間は休館)

 予算 4億7900万円。うち資料費は1億3000万円(保存事業含む)
 蔵書数 約81万冊
 貸出数 約240万点/年

※予算額は25年度一般会計当初予算
※伊万里市の図書館データは視察資料より
※武蔵野市の図書館データは数字で見る武蔵野市立図書館2012より

写真は上から
・中庭から見た図書館
・メインカウンターの上にある図書館の自由宣言と図書館条例の第一条の条文
・「図書館フレンズいまり」のコーナー
・図書館内には机だけでなく和室のコーナーもありここで勉強している生徒もいた。いい雰囲気
・館長室はガラス張りだった。市民との交流することを示している
・メインカウンターとは別にレファレンスカウンターがある
・図書館内部。貸出数が多い本を一回のメインフロアーに配置し、貸出数が少ない本は左上、二階に収蔵している
・読み聞かせなどを行う専用の部屋。入り口も凝っており、この部屋も暗くすると天井に光が点滅するなど趣向が凝らされていた。子どもが本に入り込める演出