吉祥寺のキャバクラ客引き行為 禁止できるか?

 武蔵野市議会にキャバクラなどの客引きを「強制的な排除力のある取締り条例」を制定することを求める陳情が提出され9月10日の総務委員会で審議された。条例が求めているのは、吉祥寺東側の繁華街で、かつては「近鉄裏」と呼ばれた地域。市は独自事業として「ブルーキャップ」を巡回させて対策を行ってきたが、陳情では、最近、客引き行為が多くなっておりこれでは効果が上がっていないために条例が必要というものだった。

 言葉は異なるが同じ趣旨の陳情が三本提出されており、審議は一括して行われた。審議の前に休憩時間をとり、議事録に残さない形で陳情された方に話を聞いたが、主に、声掛けも禁止できる条例が名古屋や新宿で行われている。環境浄化を進めるために制定してほしいという趣旨だった。

 こののち再開された審議では、条例で強制的な排除が可能なのかと市執行部への質問があった。答弁では、警察が行うとすれは都との関係でないとできない。市の条例では、指導、警告までだろう。(条例で可能だが)罰金は行き過ぎではないかと理解している。ビラを配る行為も含まれることになるが、誰にも迷惑をかけず道路使用許可を取っているのであればできない。憲法22条で、公共の福祉に反しない限り職業の自由や営業活動の自由があるとされている以上、条例では難しいとの答弁があった。

 陳情文では名古屋や新宿区で行われているのだから武蔵野市でもとあったが、名古屋は警察を管轄する愛知県の条例で行っているもの。新宿の場合は、「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」がこの9月から施行されているが、陳情が求めているように強制力はないものだ。
 答弁でも新宿区で始まったので視察してきたが、客引きがまったくなくなってはいなかった。一度、指導した人が再び行うこともあった。新宿区の条例は始まったので今後を見たい、との答弁もあった。

 この後、実際に付きまといの件数や呼び込みによる迷惑の件数などは増えているのかの質問があった。答弁では、いわゆる黒服の数は吉祥寺で延べ250名ぐらいを確認できているが数は増えておらず事件も起きていない。風俗店の数が特に増えているとの報告もない。風俗の情報館がオープンしているが、警察署に届出が出されており法的に問題はないというものだった。

 そして、新宿区の条例が例に出されているが、武蔵野市のつきまとい勧誘行為の防止及び路上宣伝行為等の適正化に関する条例の方が効力は強くないか? との質問があった。
 新宿区の条例は「違反する行為をしていると認められる者に対し、当該行為を中止するよう必要な指導をするものとする」とあり、罰金などはなく強制力はないものだ。パトロールは商店街の人などが行っている。
 これに対して武蔵野市の条例は、指導、警告しそれでも従わない場合は指導を受けたものを公表すると規定している。

 条例で最も重いものは罰金にすることだが、誰が取り締まるのかを考えると罰金にすることは難しく、公表することが一般的には最も重いものとなっている。
 武蔵野市の場合はさらに、パトロールに警察官OBなどで組織している専属の人員、ブルーキャップを配置している。ブルーキャップは21時以降の夜間パトロールをしていないが、先の吉祥寺での殺人事件をうけて、深夜のパトロールを行うミッドナイトパトロール隊を組織しており、市内を専用の車で巡回するホワイトイーグルを含めて24時間体制のパトロールを独自に行っている。これらはキャバクラの客引きだけを対象にしてはいないが、これだけやっていることは評価すべきことだろう。
 答弁では、今後さらに調査はしていきたいとしていた。

 審議の結果、継続となり11月の委員会でさらに審議することになった。

※審議内容は要約。正式に議事録をご覧ください。

【視点】
 吉祥寺駅の東側には、確かに多くの客引きがいる。雰囲気が良くないと指摘されれば確かにそうだろう。しかし、条例でできること、市ができることには限度があるのも確かだ。
 住民が自ら行動を起こすことや可能なことは何なのかを、それこそ行政を含めて協議することがまず先ではないだろうか。吉祥寺では長年にわたって環境浄化の取り組みが行われてきており、風俗店を進出させないために住民運動から図書館をあえて建設した経緯もある。
 陳情は誰でも出せるので提出すること自体を否定しないが、まずは、陳情された方の話を伺う限りでは、住民の多くの人の考えなのか、一部の人の考えなのか分からず、当該地区でどの程度話し合いができているのかも分からなかった。新宿区の条例のようにすると居酒屋の宣伝やティッシュ配布なども禁止されることになり、風俗店以外の事業者との調整の必要になる。市の担当者もいるのだから、陳情を出す前に事業者を含めて多くの利害関係者、住民との協議が必要ではないだろうか。

 市議会には、他に委員会で審議する吉祥寺関連の陳情も提出されている。これらを含めて、吉祥寺のまちを良くすることがそれぞれの陳情の目的だろう。このことは賛同するが、条例の技術的なことを含め唐突感を覚えた内容だ。武蔵野市では、今月の29日から市長選挙が始まる。まさかとは思うが、市長選に合わせてとなれば、それこそ政争の具になってしまう。まちづくりは時間がかかるもの。どのような人が市長になったからといって、劇的に進むはずはない。いろいろな立場の人が、それぞれの利益、不利益を考えて進めるものだ。それはこれまでの吉祥寺の歴史を見れば分かること。すぐにでもできるとなれば、その考えには大きな疑問符がついてしまう。あまりにも多くの権利者がいることは行政関係者、議員であれば誰でも知っていることだからだ。
 吉祥寺を良くするために、多くの人の合意と市としてできることは何か、条例も含めてさらに煮詰めるべきだと思う。結論は早いに越したことはないが、継続審議は妥当な判断だ。私も何が有効なのか考えていきたい。

【参考】
新宿区 新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例を施行しました!(平成25年9月1日)

LIVE DOOR NEWS 新宿区「客引き行為等の防止条例」を施行! 罰則のない条例は本当に効力があるのか確かめてみた

日本経済新聞 客引き根絶、なお途上 愛知県の改正条例施行2カ月

武蔵野市 
 吉祥寺ミッドナイトパトロールを開始しました
 つきまとい勧誘行為防止指導員(ブルーキャップ)

武蔵野市議会 平成25年 請願・陳情一覧