市長になって議会の重要性が分かった

 ICT導入の目的は住民とのコミュニケーションを進めるため。コミュニケーションと言えば議会がその先端だったが、いつまにか伝統的になってしまっていいのか。住民から意見を聞くことこそ、議会がやるべきではないか、と意味深い発言をICTを積極的に導入している熊谷俊人千葉市長とアナログ手法として住民との協議会を重視する山中光茂松坂市長から聞いた。


 これは8月5日に開催された「マニフェストサミット」(主催:2013マニフェスト大賞実行委員会、ローカルマニフェスト推進地方議員連盟)のなかのセッション「新しいコミュニケーション戦略で自治と政策力を鍛える」でのもの。北川正恭早稲田大学院教授をコーディネーターに自治体改革、議会改革について議論していたなかでの発言だった。

■情報は出せばいいのではない
 
 熊谷千葉市長は、例えば子ども医療費を無料にするといくらかかるかを示した上でツイッターなどネットを使い市民同士で議論できるようにしたという。医療費無料は選挙ごとに拡大していくが、一方で費用も年間3.5億円かかるなど拡大してしまう。何歳まで、いくらかけて実施すべきかなどと投げかけたところ、全額無料にするのでなく市民が一定の負担をすれば、中学生まで対象になるとなり、市民が500円を負担するようになった事例を話されていた。同じように保育園なども議論をしてもらったうえで議会に提案できる。
 このようなことができるためには、コミュニケーションの方法が重要になる。行政が持つ情報を公開し選択肢を示し、市民同士が議論できるようにすること。市長がハブになれるようにできるかがポイントになるとされていた。ICTを使うことで多くの市民が参加でき、議論も可能になると考え積極的に導入しているのだそうだ。
 そして、将来的には市民同士で議論をして、市民ができることは市民が行うなど線引きが必要になる。これこそ議会がやって欲しいと話されていた。

 一方、山中松坂市長は、自治体の規模が違うことから、住民協議会で行政情報を出しながら議論を重ねて制約や予算の使い方を考えている。一部の代表者だけを集めてお金の使い方を決めさせているのではダメ。審議会や検討会がよく設置されるが、あれは悪質。アリバイづくりに使うものだ。事務局案はできていて、それで答申でいいのか。パブコメモも本当に聞く気がない、と手厳し批判されていた。協議会では、市長がコーディネーターになることが多く市民に選択肢を示したうえで市民に聞き、市民にも責任を持ってもらうことにしている。検討会も中間のまとめの段階で市民と議員してもらい答申にすることもあると話されていた。
 山中市長は、自らアナログ的と話されていたが、道具は違っても、手法は同じだ。市民が参加すればいいのではなく、行政が持つ情報を出して、市民が自ら考えて議論するようにしている。

 この話の後に、市長の思いではなく、市民にとってどうかで考えるべき。市民の現場が幸せになるのか、で考えるべき。ICTを使うことが大事ではなく市民の現場に何を出せるか、情報は出すことが目的ではないとの考えにも共感を覚えた。

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■議会が死んだ瞬間

 これらの議論の後、議会の大切さ、やれることの範囲は議員時代には分からなかった。市長になってみて(二人とも議員出身)、重要性が分かったとの話が最も興味深かった。

 議会でできることは限られており、市長(=執行部)権限のほうが大きく太刀打ちできないと考える議員は少なくないが、立法機関として行政をコントロールすればいいとされていた。これは、条例による議会からの政策立案の重要性を話されていたものだろう。
 また、予算を否決してもいい。しかし、市民への説明をして責任をとるべきだ。感情論で否決してしまい、市民に説明できるのか。予算に問題があるのなら、議会で修正すればいい。こう話すと、議会からできないと言われることがあるという。それは、議会が死んだ瞬間だ。
 例えば、ごみ袋の有料化を行う場合、いくらがいいのかを議会で決めて欲しい。いくらにすれば、ごみが減るのかを調べて決めるべきではないか。今の時代は、透明化が求めらえれている。いろいろな選択肢なかから、どのように議論を行い結論になったのかが問われているとの話もあった。

 議会が議論の場であるのなら、質問だけすればいい、あるいは質問さえないようなことではならないはずだ。刺さるような指摘だった。執行部への質問だけではなく、議員同士でどのように結論を導くか、それが求められている議会の姿だろう。議論のためは事前の調査が必要になり、日々はそれだけでも忙しくなるが、これこそ、議会の仕事なのだ。

 また、議案は市民に対して提案しているもの。議会に示された以上、市民へ知らせるのは議員の仕事ではないかとの指摘もあった。このことも同じ思いだ。
 そして、市長に比べて議員のほうが時間があるのだから、市民の意見を調べ覚悟を決めてやるべきとの刺激的な話もあった。

 市長側から言われた議会改革というのがこのセッションだった。指摘されていることは当然のこと。分かってはいるが現実になかなかできないことを反省しながら、議会をさらに進化させたいとより一層考えた一日だった。