くまモン視察

36 HDR クマもんスクエアが7月24日に熊本市にオープンしたその日、くまモンによる広報戦略について視察させていただいた。今やほとんどの人が知っているゆるキャラ。熊本県のイメージアップや商業への好影響があることは分かるは、その成果は何に結びついているかを伺うと参考になることがたくさん隠されていた。


 

34 くまモンスクエアは、熊本市内の再開発ビルの一角を占める場所にあった。ビルには市の中心街にあり大手百貨店も入っているなど人通りが多い場所にある。この日は、オープン初日ということもあり、くまモンが登場した時間にはあふれるほどの人が集まっていた。

 視察先は、熊本県商工観光労働部観光経済交流局くまもとブランド推進課。担当課長か伺うところによれば、そもそもは、九州新幹線が開通することで大阪から人を呼ぶための事業として計画されたのだそうだ。
 熊本は無名であり、駅は途中駅であるので、観光客が通過されてしまう可能性が高かった。選ばれる熊本を目標に掲げ、ではどうすればいいかと考え、庁内だけの発想でなく、熊本県出身の放送作家でありラジオパーソナリティなど幅広い活動をしている小山薫堂氏を戦略アドバイサーとして迎え入れたことから始まったのだそうだ。

 そのさい、ターゲットとしたのは新幹線でつながる大阪とした。大阪であれば、目立ってナンボと考え、くまモンが話題になるようストーリー性のある展開が口コミやツイッターなどSNSで広がり話題を拡散させるPR展開としたのだとそうだ。
 例えば、くまモンが大阪に営業にでかけ名刺を一万枚配布するミッションを与えられたが、いやになり失踪。熊本県知事が記者会見を行い、大阪でくまモンを見かけたら、その情報をTwitterでつぶやいてください。また、くまモンが配る名刺を受取り、ミッション達成に向けて励ましてあげてください、などと呼びかけ話題性を作ったことは有名だ。また、吉本新喜劇に登場し、吉本による宣伝力が相乗効果になりより広めることにつながったとされていた。

 これらの広報戦略には、限られた予算で最大限の効果を上げることが求められていたため、初めて・唯一(最初、最大、最高・ここだけ)にこだわったこと、知事によるトップセールスを活用することにしたことがポイントだったとされていた。広告効果で言えば、8000万円の費用で、広告費用換算で2010年度に6億4000千万円。2011年度で11億2500万円の効果があったと算定されているのだそうだ。

 最初は話題にならならず、なぜクマかとの批判もあったが、名が知れるにつれ批判は少なくなっているとされていた。結局、何が成功の秘訣と思うかと聞くと、努力は人に言えないほどしていたが、後付けで理由づけることはできるものの、思えばいろいろなタイミングがあったことなど偶然の産物と言えるのかもしれない、と正直な感想を話されていた。確かにそうなのだろう。しかし、偶然を活かせるように努力していたこと、タイミングを逸しないことをしたことが成功になったのではないかと思えた。何事にも、タイミングは重要だ。

■くまモンで熊本はどうなった

 くまモンのキャラクター使用権は無料だ。熊本県が権利を買い取り、企業などが申請をして認可を受ければ無料で使用ができるようになっている。そのため、ありとあらゆる商品で見かけるようになり、北海道のお土産にまで、くまモンが「出張中」と表示されているほどだ(当然だが利用規定はあり何でもいいわけではない)。
 確かに熊本県の認知度はあがった。しかし、それで熊本県民にはどのような利益になっているのだろうか。

 県としては、食品に付ける場合は、県内産の食材を使うことを前提としているのだそうだ(初期はそうでもなかった)。そのため、県内産食材の消費が伸び、県内の事業者がくまモンを使うことを前提に商品開発を行い営業が伸びている実績がでているという。

26 それだけでなく、くまモンが知られるようになり、熊本の人が他の地域に出かけた時に、「出身は九州です」と言っていたが、「熊本です」と言うようになっているという。このことが、じつは大きな成果だとされていた。県知事は、県民の幸福度の最大化をめざしており、くまモンにより誇れる郷土となった。これは経済効果より大きいと評価しているのだそうだ。

 確かに経済面、数字的な側面だけではなく、幸福度でも考えれば大きな成果になる。非常に参考になった視点だ。各種の事業の費用対効果を考えるのは当たり前で、さらにその効果が住民の生活にどう影響しているのか。幸福になっているのかという大きな視点で考えるべきであり、これからの自治体にはこの発想が必要だと考えていたからだ。幸福度の測り方については、住民アンケートの結果になるだろうとされていたが、それでも指標にはなる。参考にさせていただきたい。

■緊急雇用対策で始まったくまモン

 くまモンのプロジェクトは、県民と触れ合う事業を今以上に進め、さらに、テディベアとのコラボなど海外との連携も考え、常に新しい試み、新しいサプライズを考えているという。仕事が忙しすぎないですかと質問をしたら、大変だが楽しい毎日です、と答えていた。このような仕事ができることはうらやましい限りだ。
 
34 くまモンについては、他に数多くの参考になる話を伺ったが、興味深かったのは、当初は国の緊急雇用対策事業としてスタートしたことだった。くまモンや隣にいて観客と会話を担当するスタッフへの人件費は当然ながら必要になるが、その費用に国からの補助金をあてたのだそうだ。緊急雇用対策事業は、ほとんどが三か月程度の一時雇用だ。くまモンの場合は、一時雇用が常用雇用になったともいえる。普段の仕事のひとつを緊急雇用として短期間だけ採用した人にやってもらうのではなく、これから可能性のある仕事をやるために活用したということ。仕事は短期間だけやればいいのではなく、いかに長くできるかを考えることが重要となれば、このような手法も非常に参考になった。

■まとめ

 ゆるキャラグランプリで1位になり、今やほとんど人が知っているくまモン。商業的な成功以外の成果があることは参考にしたい。さらに、一事業だけの費用対効果だけを考えるのではなく、成果が何に結びついているか政策体系で考えること、事業を体系だて整理する必要性があることなど武蔵野市でも参考になることが多かった。今後に活かしたい。

【参考】
くまもん 公式サイト

くまモンミリオンプロジェクト

写真は上から

くまモンスクエアでのくまモン

人でいっぱいのくまモンスクエア

くまモンの肩書は「営業部長」。営業部長の机もあった

名刺もくまモンだった

超党派地方議員によるローカルマニフェスト推進地方議員連盟の視察だった

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