家と同じように暮らしたいのにできない  建築物の福祉転用の課題

 7月19日にあった日本建築学会福祉施設小委員会主催による「空き家・空きビルの福祉転用の実践と課題 in 東京」に参加してきた。社会的なニーズが変わり、寿命がある建築物を福祉施設などに転用した実例の紹介と課題を共有化し議論をするという内容だった。新築するよりも3~4割程度はコストを下げらるそうだが、制度が立ちはだかり課題が多いのが現実だという。



 昨今では空家や空きビル、空き店舗が多くなり、一方で高齢者や障がい者、子ども施設など福祉施設のニーズが高まっている。コストも下げられることもあり、空き家などを福祉施設に転用することが求められていると思う。そのため、どのように転用すればいいのか、興味を持っての参加だった。

 このイベントは、先に話を伺った松田准教授の紹介で知ったのだが、先に話を伺ったと同じように転用には制度の壁が大きいことが改めて分かった。
 建築物は、建築基準法、消防法、バリアフリー法、耐震改修促進法、住宅品質確保法などの制限があり、福祉施設には用途により、老人福祉法、介護保険法、児童福祉法、障害者総合支援法、高齢者住まい法などによる規定がある。そのため、用途が決まっている新築であれば、法が規定しているように建物をつくればいいが、用途を変更しようとなると新たな用途にあわせられない建物が多いのだそうだ。

 また、新たな用途に合わせようとするとスプリンクーラーや火災報知器を付けたり、スロープなどバリアフリーに配慮して改装する必要があったりとコストがかさむことや建物によっては用途変更できないことも意外と多いのだという。改装ができたとしても、その費用を建築物のオーナーが嫌がり実現にならないことも多いのだそうだ。
 店舗付共同住宅を重度障害者グループホームに転用した例を伺ったが、可能になる物件を探すだけで1年間もかかったというから、用途変更をする前の段階がじつは大きな課題ということになる。

 グループホームは本来、家と同じように暮らすることが目的。だとすれば家では必要のない設備をグループホームとしたら必要になるのは疑問、と専門家の立場から課題が示されていた。これは消防法でグループホームが寄宿舎や共同住宅と位置付けられてしまうからだそうだ。杓子定規な法解釈ではなく、転用するさいの規定が必要ではないだろうか。
 事例報告の後、日本建築学会福祉施設小委員会でも同じ考えになっているとの話があったが、ではどのように規定するか、どこまでが許されるのかなどの具体的な内容についてはまだ検討されていないのだそうだ。これからの大きなポイントだろう。

 自治体によっては独自に施行した条例により転用できないこともあるそうだ。となれば現実に即した改正を、それこそ、議会が考えなくてはならないとも思った会だった。

 福祉転用の具体例は、日本建築学会編『空き家・空きビルの福祉転用~地域資源のコンバージョン~』で紹介されている。今後も転用について調べていきたい。