ネット選挙はそもそも何を目指しているか

7月4日に参議院議員選挙が公示され、ネット選挙が解禁されることになる。マスコミなどでも話題になっているが、解禁されることで何が変わるのだろうか? たんに迷惑メールが増えるだけではないかとも思ってしまう。そこで、この解禁に携わってきた国会議員の話を伺った。



 話はマニフェスト大賞実行委員会・ローカルマニフェスト推進地方議員連盟主催による「ネット選挙解禁で政治はよくなるのか? ~ネット選挙解禁の先の可能性を探る~」研修会で伺ったもの。
 研修会にはいくつかのセッションがあり、その中に議案作成に関わってきた福田峰之衆議院議員(自民党)と鈴木寛参議院議員(民主党)がなぜ解禁を目指してきたかを伝えるセッションでのこと。

■聞くツールではなく説得するツール

 福田議員は「法改正の趣旨は、政治活動を選挙期間中にできない、いびつさを解消すること。通常やっていなくて選挙期間中にだけやっているのでは意味がないからだ。
 解禁の影響は、地縁血縁で選挙をする人には関係ないかもしれないが、政策ビラを選挙期間中に配れない地方議員のほうが大きい。ただし、ネット選挙が解禁されたとしても票は増えないだろう。むしろ、有権者の説得に使えると考えるべきだ。
CIMG1115 これからの時代は、有権者の言っていることをやっていれば国は破綻する。そこをクリアするのはネットだ。聞くツールではなく、説得するツールとして使うべきだ。ポピュリズム、勝ちたいがための選挙に使うのではなく、説得ツールになると考えている。今までは、駅頭では短時間でしか言えず、演説会は支援者だけが聴衆だったが幅広い人に伝えることができる。有権者に不利なことも説得するのに使える」と地方議員出身者としての視点を話されていた。

■有権者と熟議するツール

 鈴木議員は、「お願いから約束がマニフェストだったが、これまでは、お願い先を増やすのが選挙であり、最もエネルギーがかかっていた。ネット選挙が解禁されることで、届ける先へのエネルギーが軽減されることになる。例えば、これまでは選挙の最終週になると普段は一日、300件ぐらいのアクセスが10万件ぐらいに増える。10万なんか名簿ではとても集めることができない数字で、ここで主張ができることになる。
 また、参議院だと17日間の選挙期間があり、公示後に論点が変わってくることもあるが対応できなかった。メディアは編集方針を持って報道するため、反論や追加した意見を言うことができなかったが、ネットが解禁されることでいつでも説明や解説、反論ができることになり、より政策型の選挙に近づく。選挙の主役は誰かと考えれば、有権者だ。有権者と熟議ができるようにしたい。
 ネット選挙でお金はかかるかもしれない。寝る時間が減ることもあるだろう。でも、大きな音で名前を連呼することや駅前で壊れたレコードのように名前を連呼するだけ、お願いだけの選挙から卒業すべきで、有権者からの質問に直接答えるほうがいい。駅で連呼する時間を寝る時間に使い、その他の時間で答えていたほうがいいのではないか」
「熟議とは、有権者がお任せ政治にならないためのもの。今は政治が消費されているが、当事者にならないとならない。政治は常に板ばさみで、決着をつける泥臭い仕事だ。政党でウエートの置き方が違うけれども、板ばさみで決めたこと、着地点を決めたことが重要で、そのプロセスが分かってもらう必要もある。
 例えば新薬にはリスクがある。役人に任せるとリスクの最小化しか考えないため進まないが、リスクがある一方で必要としている人もいる。メディアはどうすべきかと言わず、ポピュリズムで批判をするが、この状況で決着をするのが政治の仕事だ。有権者にわかって欲しい」とされていた。

■付け焼刃ではダメ
 
 この二人の“アツイ”話を聞いて思ったのは、本来の議会の仕事を考えてのネット解禁だったということだ。
 議会は、予算や条例などを最終的に決める決定権を持っている。しかし、どのような理由で、どのような判断で決めたのかが有権者には伝わっていないと思う。これはネット選挙解禁だけの問題ではなく議会としての大きな課題で、日常から解決しなくてはならないことだ。
 このことは別課題として、有権者が最も関心が高まる選挙期間中に議決の理由や政策などについて、候補者に質問して投票に役立てることがネット選挙で可能になるということだろう。これまでは、選挙事務所に電話で聞いても、候補者が事務所にいないことがほとんどで、熟議とまではいかないまでも議論ができなかったのが解禁前の選挙でもあるからだ。
 
 しかし、解禁されれば、即座に候補者と有権者との距離が縮まり、熟議ができるのか。
 福田議員は「期間中にだけ作っても底が浅いことがばれる。通常の活動が重要」と話されていた。まさにそのとおり。普段の活動のうえで議論できるのであって付け焼刃ではダメなのだ。

 ネット選挙の感心は高まっている。これまでにネット選挙のセミナーで話を何度か聞いてきたが、ほとんどがこのような機能が使える。動画を入れましょう、ブログやfacebookを更新しましょうという内容ばかりで、肝心の中身は論じられていなかった。
 法案に関わってきた二人の話を聞いていて、ツールがあれば選挙が変わる、政治が良くなるのではないことが、改めて分かった。ネット選挙解禁で求められているのは、ツールを使える政治家であり、それも、有権者と双方向で議論できる人ということだ。そのような人にはこの解禁が大きなインパクトになるはずだ。私もその一人になりたいと思っている。一方、政策は二の次で、とにかくお願いしますという旧来型の政治家には使えないのかもしれない。有権者がどちらの政治家を求めるかも問われるのだろう。

 川名は主催者側で、そもそも、なぜ解禁しなくてはならないのかを考える意味でこの研修会を企画してみた。ツールは、何のために使うかを考えるべきだ。ネット選挙解禁で何が変わるのか分からないという人も多く、ひとつのヒントになったと思う。
 参議院議員選挙後、武蔵野市では9月29日に告示される市長選挙、市議会議員補欠選挙をはじめ、地方議員の選挙でも解禁されることになる。要注目だ。