憲法改正 何のためにかで考えるべき

 憲法改正が注目され参議院議員選挙の争点ともなるかもしれない。自民党などは憲法改正をしていないのは日本ぐらい。改正しやすくするために憲法96条にある衆参両院の3分の2以上の賛成要件を過半数に引き下げたいと主張している。
 実際にはどうなのか。衆議院憲法調査会の資料(※1)、『憲法に関する主な論点(第9章 改正)に関する参考資料』を見てみた。ここには、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、デンマーク、スイス、スロバキア、アイルランド、韓国、オーストラリアの12か国の憲法改正手続きがまとめられている。


この資料から改正の発議要件をまとめてみた。

■議会の議決要件が3分の2以上
・アメリカ 両議院の3分の2以上+4分の3以上の州議会の承認

・スペイン  両議院で、総選挙をはさんだ2回ずつの議決(3分の2以上)+国民投票(※2)

・韓国 国会(一院制)の3分の2以上+国民投票(有権者の過半数が投票、かつ、投票者の過半数の賛成)

・ドイツ 両議院の3分の2以上

■議会の議決要件が5分の3以上
・フランス 両議院の過半数+両院合同会議の5分の3以上

・スロバキア 国会(一院制)の5分の3以上

■議会の議決要件が過半数とプラス条件
・カナダ 両議院の過半数+3分の2以上の州議会の承認(承認した州の人口合計が全州
の人口合計の 50%以上であることを要する)

・イタリア 両議院で、3ヶ月以上の期間を隔てた2回ずつの議決(過半数)(+要求
があれば国民投票。ただし、2回目の議決において、両議院で3分の2以上の多数が得られれば、国民投票は不要)。

・デンマーク 国会(一院制)で、総選挙をはさんだ2回の議決(過半数)+国民投票(投
票者の過半数、かつ、有権者の 4 割を超える賛成)

■議会の議決要件が過半数のみ
・スイス 両議院の過半数+国民投票(投票者の過半数、かつ、過半数の州で投票者の過半数の賛成)

・オーストラリア 両議院の過半数+国民投票(投票者の過半数、かつ、過半数の州で投票者の過半数の賛成)

・アイルランド 両議院の過半数+国民投票

 12か国のうち、過半数だけで発議できるのは3か国となる。イタリア、デンマークは過半数ではあるが、二回行うこと。カナダは、州議会の三分の以上というハードルを加えている。

憲法改正 この参考資料には、さらにどのような内容で改正された(画像参照)がある。また、国立国会図書館が2010年に出した調査報告書「諸外国における戦後の憲法改正」(第3版)には1945 年の第二次世界大戦終結から2010年7月に至るまでのアメリカ(6回)、カナダ(18回)、フランス(27回)、ドイツ(57回)、イタリア(15回)、オーストラリア(3 回)、中国(9回)、韓国(9回)の憲法改正内容についてまとめている(カッコ内が改正回数)が、この中にも改正内容が記されている。

 これらを読むと1954年にフランスが戒厳令の規定の追加をしていることに驚くが、他は事務手続き的なものや国民に権利拡大が主なものだ。国民に価値観や義務を強いるようなものではない。

 安倍首相は「憲法を国民の手に取り戻すためには96条を変えていくことが必要だ」と述べているが、本当にそうだろうか。自らの思い、価値観を国民に押し付けようとしていないだろうか。
 何のために改正するのか。そのことを明確にすることが必要だ。国防軍を作り、徴兵制の実現、戦争への参加への改正ではあってはならない。まずは3分の2の意思をまとめていくことをすべきなのだ。国民のためであればできるはずだ。3分の2としている国でも改正をしているではないか。

 何事も完璧はなく憲法を改正するなとは思わない。議論は必要だし、必要なら改正はすべきだ。しかし、手続きだけを簡略するのは、“ぼったくりバー”にならないか? 私は反対だ。
 アベノミクスで景気が良くなったような雰囲気はある。しかし、雰囲気だけで決めてはならないのが憲法だ。これからの選挙、ウッカリの投票でビックリの結果になってはならない。

※1
憲法調査会の資料は、top→衆憲資→衆憲資第84号 平成25年5月 憲法に関する主な論点(第9章 改正)に関する参考資料で表示される

※2
全面改正、国の基本原則、基本的権利及び公的自由、国王に関する規定に関する憲法改正の場合。その他の規定での手続は、両議院の5分の3以上(+要求があれば国民投票)