北町保育園を見学して

 4月から新園舎となった北町保育園を見学してきた。旧園舎の隣接地に建てられた施設で待機児対策として定員を96名から128名に拡大している。また、周辺地域は、豪雨の際に水害の被害があるため、旧園舎の跡地に雨水貯留槽を設置することで水害対策も同時に行うものだ。
 施設は空間をうまく配置していることや隣接の公園と連携、庇付で広めのベランダがあるなど子どもの環境としてはうらやましく思えるほどだった。

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 施設は、武蔵野市が100%出資している外郭団体、公益財団法人武蔵野市子ども協会が建設、運営を行う。2010年10月から設計が行われ、2013年4月から開設となった。

 施設設計のコンセプトは下記。 
・子どものための園舎~子どもたちが家庭と同じような安心感を持てる心地よい環境
・「遊・食・寝」の充実~ランチルームと異年齢交流ができる多目的スペースを設置
・地域に開かれた保育園~子育て支援室を設置し、市民のニーズに合った保育を展開し、地域との交流をはかる

 旧園舎は現在解体中で、ここに雨水貯留槽を地下に設置後、地上部が園庭となり2015(平成27年)4月から使える見込み。そのため現在では園庭での保育はできないが、隣接する公園や近隣公園、コミュニティセンターなどとベランダなどを使い外遊びなどを行っている。

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 内部を見学させていただいたが、最新の設計ということもあり、私の子どもが通っていた頃の保育園の様子とは違うな、との印象を持った。
 子どもの部屋だけではなく、広めの廊下、広く庇のあるベランダ、ホールに加えランチルームがある。2階にはベランダに加え、可動式の日除けまで付いている広めのテラス(夏にはプールを設置)があるなど園舎内に遊べる場所がたくさんあることだ。保護者と登園する玄関だけでなくお散歩に出かける時用の出入り口もある。子どもの定員が増えたことへの対応でもあるのだろうが、子どもにとっても楽しい園舎だろうと思う。

北町保 (11)_R 内装には木材を多用していることやランチルームには外光が入るように工夫され、ランチルームへの渡り廊下も光が入るような設計にも好印象を持った。給食室がガラス張りで調理の様子が分かること、メニューが靴箱に置かれてあり、家庭でも作れるように配慮されていることも好印象を持った。

 一方でこのような園舎ができてしまうと、年季の入った園舎の保育園はいつ建替えるのか、とならないかと余計な心配をしてしまうほどだ。

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■保育園のミッション

 少し気になったのは、園舎は保育をする側、子どもにとっては素晴らしいものだと思うが、保護者への考え方だ。
 朝、園に来て、着替えなどをボックスに入れると、子どもをドアの向こうの部屋へと通し、そこでバイバイとなる設計になっている。これは新らしい保育園にはよく取り入れられている設計で、このほうが保護者と離れる切り替えがしやすいというものだ。保護者とすれば、忙しい朝には子どもが部屋に素早く入ってもらったほうがありがたいのは経験者としてよく分かるのだが、そのことで子どもが生活する部屋を見ること、感じることができないのでは、と思ったからだ。
 なんとなくでも部屋を見ることで、子どもがどのように過ごしているか分かることがあるのだが、大丈夫かなと気になった。

 他にはお手紙を入れるウオールポケットがなかったことも気になった。設置するスペースがなかったのが理由だそうだが、そのため一人ひとりに専用の小型バックが用意され、そこにお便りを入れるのだそうだ。保護者会などからの手紙などはどうするのか聞いたところ、保育士が紙を折って入れているという。園からの配布物ならまだいいが、保護者会からのものは保護者自身が入れるべきではないかと思うと、ウォールポケットがないことで、できなくなっていることになる。

 また、お昼寝は布団ではなくコット(小型ベッド)になっていた。コットでも別にかまわないと思うのだが、これを使うことで布団カバーが必要なくなり、保護者は毎週付け替える作業がなくなるという。

 保護者会のお便りや布団カバーの取り換えは面倒なことでやりたくないと思いがちだが、そこには作業を通して保護者同士が話すきっかけを作ること。部屋を見ることで保育に関心持つこと、保育士との話の接点を作るという意味もあるのだと思う。
 以前、スェーデンの子育て施設の設計について聞いたとき、ある程度の狭さがポイントになるとしていた。それは、保護者同士が近くで作業することで話をするきっかけづくりとなる。事務所からも目が届きやすくなり保護者へ話しかけられ、話した後にちょっとした作業を頼むことで職員とだけでなく、保護者同士の接点がさらに広がる。それは、保護者同士をつなげていくことであり、将来の地域づくりの種になるという考え方からというものだった。

北町保 (14)_R 保護者に負担をかけない、あるいはサービス業という考え方の保育園もあるが、子どもを安心して安全に預かるだけではなく、昼間の子ども状況に関心を持つことや保護者と保護者同士、保育士とつながっていくことも保育園の一つのミッションと考えると、少し考えてしまったことだった。
 もっとも、かなり細かな心配であり、他の方法でフォローはできるとは思う。ソフトの問題だろう。このような園舎があれば、十二分にできるはずだ。期待したい。
 昨今では自民党政権でさえ待機児ゼロと言いだすほどで、保育園へのまなざしはかつてないほどに良い。待機児問題は早急にクリアすべきだが、保育園のミッションは何か。預かるだけでいいのかも、今だからこそ考えるべきだとも思った。少々余計なことかもしれないが。

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写真は上左から

・園舎の外観

・玄関の奥、お散歩用出入り口へつながるスペース。廊下ともいえるが広いスペースなので遊ぶな祖としても十分に使える

・子どもの部屋

・2階のベランダ。庇が大きく日陰を作り、室内の温度を上げない効果もある

・2階のテラス。可動式の日除けがある(右上のブルーの生地が日除け)

・2階ランチルームへの渡り廊下。広いガラスが印象的

・木材を多用している。網戸があり、網戸を子どもが壊さないようになっている内側の格子。外はベランダで公園と隣接している

・登園時の玄関

・保育室から見た着替えを入れるボックス。ガラスの向こう側が保護者のスペース

・玄関内部。右手に給食室

・ガラス張りの給食調理室

・園内の概略図

・玄関のホワイトボードには、1日の保育園の様子が年齢ごとに書かれていた。このような配慮はいい。

・給食のメニューレシピもおかれていた

【参考】
武蔵野市子ども協会 北町保育園

市報むさしの 平成25年4月1日号 1952号 (北町保育園新園舎が完成のお知らせ)