教育とタブレット

 銀座のアップルストアで行われた「iPadを教育に活用しよう」というイベントに参加した。教育現場にタブレットを活用している先駆的な例を10分の持ち時間によるプレゼンテーションで行うというもの。聞いていると、発表者がみんなスティーブジョブズのように見えてしまい、いいことやっているなぁ、タブレットを使うととってもいいことが起きると思えてしまうほどだった。しかし、ちょっと斜に構えて考えてみると、何やらあやしい企業の営業トークのようにも思えてしまい、そんなに上手くいくのか、鵜呑みにしていいのかとも思った。


プレゼンテーションを行った方とそれぞれのテーマは下記。

・小学校編:片山敏郎先生 (新潟大学教育学部附属新潟小学校)
 “子どもたちを先生に。自由でシンプルな発想で始めよ!”
・中学校編:金子暁先生 (広尾学園)
 “デジタルとアナログ。それぞれの良さを使い分けよ!”
・高校編:永野直先生 (袖ヶ浦高等学校)
 “『置き換え』はしない。さらに広げるための使い方を!”
・大学編:伊藤一成先生 (青山学院大学)
 “『使うこと』と同時に『使わない』という選択を教えよ!”

 小、中、高、大とそれぞれの世代ごとにどのように活用しているか、どのようなアプリが適しているかをプレゼンしていた。

 アップルストアで行っていることもあり、iPad(他社のブレットも含むと考えて)は素晴らしいとなってしまうが、この前提を差し置いても可能性はかなりあると思えた。それは、それぞれの先生の話を聞いていると、iPadは、新たな道具であり使うことが目的ではないとの主張が同じだったからだ。これまでと同じように紙の教科書が基本であり、授業で書かせることも行っている。今までの授業のプラスアルファとしての道具であり、iPadでしかできないことをやらせているだけと話されていたからだ。
 とかく機器の操作で終わってしまうことを懸念してたが、このプレゼンを聞いている限りでは杞憂に思えた。というよりも、そのようなことを吹き飛ばしている授業だからこの場にいるのだろう。
 パソコンと比較すると、フリーズすることがなく、その対応にかける時間が必要ないことは大きい。パソコンルームに移動する必要がないことも効率化になっている。養護学級で使ってみると、操作性が簡単なことから新たなコミュニケーションの道具になり授業の幅が広がった。
 どのように使うかは、試行錯誤になることが多いが、あまり気にせず子どもに任せたほうがいい。大人が創造した以上の使い方を考え出してくる(例えば顕微鏡で覗いた対象物をiPadで直接撮影すれば、グループで同じ画像を同時に見ることができ話し合いが進むなど)。一人ひとりにiPadを渡している学校では、学校で充電しない。使う時間を限るなど一定の約束事の元に使わせると子どもが自ら使う時間を判断するようになる。大人があれこれ心配することもないとの話も参考になった。

 それぞれのプレゼンを聞いていると、あまりにも上手すぎで、逆にどうなんだと思ってしまったが、なぜ教育にプレゼンが必要なのかを別会場の講座で聞いたことで、今回のイベントの意味が分かった。

 それは、話し手が説明するだけ、話しているだけのプレゼンではだめ。聞いている人が理解し納得しているか。それだけではなく、次の行動を起こさせることになったか。そこまで行けば良いプレゼンであるとの考え方を聞いたからだ。
 商売で言えば、契約が取れたか、商品が売れたかに結びつかないと意味がないのと同じで、話したこと、授業をしたことで子どもが自ら考えるような行動に結びついたかで判断することが大切なポイントであり成果。そこに結びつける効果的な道具がiPadということだろう。

 実際に聞いていると、iPadを使っていろいろなことをやってみよう、伝えるだけでなく、相手側にたち、伝えたことが次の行動を起こさせるようにはどうすればいいかと考える自分がいたことでその成果になったのかも、とも思ったほどだ。

 会場ではスペシャルゲストとして山本恭輔君、千葉県立千葉高校1年生のプレゼンもあった。
 彼は、中学生の時に英語で行ったプレゼンで有名になり一躍注目されているデジタルネイティブ世代の代表格ともいえる存在だろう。

 5月4日の朝日新聞の記事「(いま子どもたちは)さとり世代:8 僕は「ゆとり」の成果物」に『「いま教育現場に足りないのは創造性。大人に求めるのではなく、子どもが変われば教育が変わる」。自作のパワーポイントを映した大型スクリーンの前を右へ左へ。「iPadも電子黒板も、僕たち子どもが先生に教えてあげればいい」。約10分間のプレゼンを終えると、大きな拍手が湧いた』とこの時の様子が書かれているが、まさにそうだろう。

 その彼は、もともと人前でプレゼンをするような性格ではなかったが、プレゼンを行うことにより、自分が得た感動を伝えることができ、その感動がさらに広がることで自分の活動がさらに広がっていったと話していたが、iPadを道具として新たな才能が花開いたということだ。デジタル世代というとネットで調べておしまいにしてしまいそうだが、ネットを使うことで実際の人物に会うことができ、直接話を聞けたことでリアルな感動へとつながったと話していたことを考えると、やはり使うことが目的ではなく道具として使いこなしている。iPadが目的ではないということも実感できたプレゼンだった。
 同じように道具として新たな道を築ける人が増える。授業で使うことで新たな可能性が高まるのではと思ったイベントだった。

動画は山本君のプレゼン動画「これからのデジタルネイティブに必要な3つの要素」。
後編の動画や詳細は彼のサイトにある。

ちなみに余談だが、議員の質問もプレゼンと同じではとも思った。言っているだけじゃ意味がないということ…