大仏商法

 奈良市の都市観光について市議会総務委員会で視察させていただいた。神社仏閣など古くからの観光資源があると奈良市とは比べもにはならなかが、武蔵野市でも都市観光に力を入れていることや議会からも、もっと力を入れるべきとの意見が強いため参考にさせてもらおうとの考えからだった。
 いろいろな話が伺えたが、最も印象に残っているのは、これまでは「大仏商法」の観光だったという市担当者の話だった。

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 「大仏商法」とは奈良の大仏に象徴されるように、観光資源もともとあり観光客が来るために努力をしない、おもてなしの気持ちが薄いという意味での言葉だった。
 かつては賑わっていたが、京都に比べると新幹線が直接乗り入れていないこと。修学旅行数の減少があり観光客数の減少が明確になってきたのだそうだ。対策として新たに人を呼び寄せるにしてもイメージの固定化があり新鮮味がないこと。会議やコンベンションを呼ぼうにも対応できるホテルが不足していること。奈良と言われても思い浮かぶ食がないこと。みやげ物店などの店には、自分の店だけ儲かればいいとの意識が強く、通りやまち全体に来てもらう気持ちがなかったなど改めて検証してみると課題が多かったとされていた。

 そこで、観光協会に旅行会社など民間からの人材を入れたことや市民によるボランティアガイドを養成したこと。旧来からある街並み(門前町など)の保存と観光資源にすることなどテコ入れを行い、現在では活性化し始めているのだという。その活性化もアイデアを重視しているというものだった。
 活性化をしたいのはどこの自治体でも同じ。しかし、市の財政を考えれば多額の事業費をかけられないというのもどこの自治体でも同じ問題だ。そこで、アイデアを重視して行うのが奈良市の特徴だと思った。

nara2 例えば公衆トイレがなく観光客が不便であったことから店舗のトイレを観光客に提供する「おもてなしトイレ」事業だ。
 これは、店舗のトイレを貸し出しさらに常にきれいにしてもらう(トイレのきれいさが観光には重要な意味もある)費用として市から月額5000円を補助。店舗の前には、英語、ハングル、中国語でトイレがあることを表示するというものだ。
 この事業、当初は嫌がっていた店舗が多かったそうだが、テレビで放映され注目されたことやトイレを借りるついでに買い物してくれる観光客が増えたことから、今では嫌がっていた店からもぜひやってくれと問合せが来るようになったという。公衆トイレを作るとなると土地代を別にして約1000万円はかかるというから、アイデアしだいで多額のお金がかからず観光客にも店にもメリットがある事業になっていることになる。

 他にも報酬はないが、委嘱状と名刺だけの観光大使を100名任命し、観光のPRを行ってもらう(他に特別大使が3名いるとのこと)事業も行っているという。
 今後の課題としては、若い人にもっと来てもらいたいが、実現できていない。街中にバルを作りたいという市長の意向もあるが、実現には至っていないという話だった。

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 活性化するポイントについても伺った。担当者は、観光協会などに役所の人間が出向してはダメ。民間の力を入れるべき。それも、役人の部下ではなく、トップを任せないと力を出せない。また、一人だけでも出せないと話されていた。
 確かに民間の知恵を活用しようにも役所の論理でつぶしてしまうことは考えられることだと思う。何を求めるか、具体的な成果目標を設定した上であとは任せてしまうことが必要では、と思った。
 武蔵野市には神社仏閣、旧跡などが多くあるというわけではないので、観光ボランティアがどこを案内すればいいのかすぐに思い浮かばないほどだ。だが、今回の視察で伺った「おもてなしの心」を持つこと、観光客・消費者が来ているから大丈夫と胡坐をかかないことなど、武蔵野市の都市観光を考える際に参考にしていきたい。

写真は上から
・街並みを保存し観光客を呼び込んでいる「ならまち」地区
・おもてなしトイレ
・景観を守るために色を変えている自動販売機