保育料を値上げすれば待機児は減るのか?  保育料 意見を聞く会から

 10月20日に開かれた保育料審議会による「市民の意見を聞く会」を傍聴してきた。会場参加者は20名ほど。16年前に大きな運動があったことを知る身にとっては拍子抜けするほどの静かな環境での会だった。私が聞いた限りでは、保育料値上げに絶対反対という意見はなかったように思う。しかし、値上げがどう待機児対策や保育の質に影響するのかといった質問への明確な答えはなかった。ここに大きなポイントあると思う。

 保育料審議会が前回設置されたのは平成8年。翌年の9年から保育料は改定(値上げ)となった。同じ頃に認可保育園の用務職員を正規から嘱託することも示されたことから、当時は反対の署名運動などが起き、聞く会にも反対の意思を示すために多くの人が押し寄せていた。さらに、署名をした市民へ当時の市長から手紙が届いたなど、今であれば個人情報から問題になりそうなことまであり保育関係者にとっては非常に大きな問題だった。16年の時が流れたことで市民意識が変わったのかどうかは分からないが、保育園保護者として当時を知る者としては驚くくらいの状況変化といってもいいものだった。
 もっとも、認可保育園の新規開設や定員増による待機児対策や保育の質のために正規の保育職員を増やすなど市の保育施策は評価できることや市と保護者が対立関係ではないことを考えれば、反対運動にはならないと思っていた。だが、ここまで静かなままでいいのかと逆に心配してしまうほどだった。

 前置きはここまでとして、当日出された主な意見は次のようなものだった(後日、議事録がでるそうなので正式にはそちらをご参照ください)。事前に意見表明をして発言された方は3名のみ。会場から出された意見も含めて興味深いものを川名がセレクトしたものだ。現役の保護者よりも保育園職員、保護者OBといった方の意見も含まれる。

・子育て世帯の費用の実態調査をしてから考えて欲しい。昔とは違い、将来の教育費への備えもあり、世帯あたりの子育て費用割合も考えるべき。
・給与が下がっている中での値上げは困る。所得によっては値上げされれば生活を圧迫するすることになる。
・第三子の保育料減免がないのは武蔵野市だけ。やるべき。
・どの施設でも保育ガイドラインにそった保育が受けられるようにして欲しい。
・グループ保育などの施策、認可保育園増設の対応を求める。
・乳幼児期の保育や教育は将来にフィードバックするものであり、手厚くするのは先進国では常識だ。
・保育にお金がかかるのは分かるので応分の負担を求められることや財政を考えれば保育料だけが聖域でないことは分かる。
・引っ越してきて市の保育園にお世話になってきたことで市民になった実感があり、市への愛着にもなっていることを考えると市が保育をどう考えるかが問題。保育へ高い優先度を置いて欲しい。
・グループ保育へ預けているが、保育料と延長料で給料の半分強になってしまい保育料が高すぎる。助成金がないので必要。
・認可保育園は、16年前に比べて育児困難の家庭の子どもも来ている。子育て支援は重要で審議のしかたに不安がある。認可外も子育て支援ができる施設にして欲しい。
・待機児解消をめざすには、認可外が高いから認可園を見直す(値上げ)するのは違う。認可は施策としてやっていくべき。保育料の対比の対象にすべきではない。
・16年間上げていないから上げる時期で判断していいのか。
・三多摩で比較しても法外に低い保育料ではない。慎重に決めて欲しい。
・市の説明は財政から考えた説明であって、利用者の状況から考えて欲しい。家庭における保育料の割合がどの程度なら暮らしていけるかで考えるべき。データは親が負担ができるのかで見て欲しい。視点を子どもひとりあたりいくらではなく、家庭にとってどの程度の負担になるのかで考えるべき。そう考えれば、毎年変わってもいい。
・階層の低い家庭には、値上げになると負担が大きくなると危惧する。

 これらの意見が出される中、審議会委員長からも意見が述べられえていたが、そのなかでも、「待機児童の解消が第一優先ではないか。他の子どもが入れているのにうちの子どもが入れないという状況ではいけないのでないか。条件が同じであれば不公平になる。この不公平感の解消にまず力を入れるべきで、納得してもらえる部分だと個人として思っている」との発言は興味深い。確かに保育園による施設や環境の差も大きな問題だが、保護者にとっては入れるかどうかがまず第一に心配になることだからだ。

 そして、この意見に対して会場から重要な発言が出された。それは、保育料を上げれば待機児は解消するのか? という質問だった。

 委員長は、審議会は保育料を議論するのであって、増えた財源を何に使うかは市の判断でしかない。審議会では審議できない。待機児対策は、定員を増やすか施設を増やすことで可能だが、それは市と議会の判断。そこまで踏み込んだ議論はできない。諮問なので審議会で議論は可能だが、協議したからどうなるかは分からないという返答だった。

 確かに返答どおりなのだが、保育料を負担する側とすれば、値上げした分が何に使われるのかが明確でないと、そう簡単には「いいですよ」とは言えないと思う。値上げした分が待機児対策や保育施策に使われる(全額ではないかもしれないが)と確約できるのであれば、同じ保育園を利用者同士、あるいは同じように必要としている者同士として協力しようとなるのだが、「何に使われるか分かりません」では、どこかのあやしい商売のようにお金だけ取られてハイさよなら、となってしまわないかと危惧するのは理解できることだ。
 武蔵野市の財政状況が逼迫しており破綻寸前、にっちもさっちもいかないから値上げ。もしくは、待機児対策のために保育園を増やしたから財源を増やしたいといった納得できる理由が必要ではないだろうか。16年間考えていなかったからでは、あまりにも説得力に欠けている。

 以前にも書いたが、審議会のミッションを認可保育園の保育料を協議するのではなく、武蔵野市の保育全体の費用を考えた上で、必要とする家庭(旧基準の待機児家庭と保育園を利用している家庭)全体でどの程度の負担が適切なのか、負担ができるのかで考えるべきだと思う。 意見を聞く会で事務局として市の担当者が、認可保育園に限って言えば市の負担率は下がっているという発言があったが、それではこの審議会が求められている認可保育園の保育料を協議する、極端にいえば値上げする理由が現状ではないことになってしまうことになる。下がっているのなら値下げするのかとならないだろうか。これも以前に書いたことであり一般質問で指摘したことだ。
 審議会が求められている(諮問)のは、あくまでも認可保育園だけの保育料だ。これだけを考えれば、値上げにつなげる理由は、あまりにも根拠が薄いといわざるを得ない。

 このときの説明であったように、認可保育園以外への保育施策全体(認可外への補助金など)は増えているのだから、保育施策全体の費用を考えての認可保育園の保育料で考えるべきなのだ。そう考えるとこの審議会を設置した理由がつかなってしまう。審議会は何をミッションとしているのを考え直す必要が出てくるのだが、今後、どのように進めていくのだろう、と老婆心ながら思ってしまった。
 審議会の委員は、保育や子ども施策全体を考えたいようだが、それは求められていないことも現実なのだ。
 認可保育園だけの保育料を考えるべきなのか。あらためて思った意見を聞く会だった。
 
 それにしても、現役の認可保育園の保護者は、保育料をどう考えているのだろう。このことのほうが、もっと気になっている。

 認可保育園への保育料についての意見は、メールやFAXでも、まだ受け付けている。

【参考】武蔵野市保育料審議会(意見の提出もここから)