政務調査費、これまでの流れ

 地方自治法が改正に伴い政務調査費が政務活動費と名称が変更され、平成25年3月1日までに各自治体議会で現在の条例を改正する必要が出てきている。先日、武蔵野市議会でも改正する条例案についての協議があった。
 政務調査費には、家電の購入費していたり飲食に使う、自宅を事務所として計上していた、政務とは関係ないような書籍を購入していたなどが明らかになり不明瞭な使い方が多いと批判されることが多い。今回の改正で調査活動だけではなく活動にも使用できるとなったことで使途の自由度が高まり、より「第2給与」になるなど批判も声で出てきている。武蔵野市議会は1円から領収書が必要であり、使途を明確に規定するなどをしているが、そうでもない議会も多いのも事実だ。あらためて考えてみた。

 政務調査費については、全国市民オンブズマンが特設ページを開設していたり、 「政務活動費の第二給与化を許さない市民と議員の会」が10月21日(日)の14時から発足式を行うとの案内もいただいている(新宿区議会6階第3委員会で開催)ように疑問視する意見は強くなっている。これまでの不祥事を考えれば疑問視されるのは理解できることだ。

■政務調査費の流れ

 では、そもそも政務調査費はなぜできたのだろうか?

 国立国会図書館が調査を行い「政務調査費制度の概要と近年の動向」というレポートを2008年に公表している。このレポートを元に今年までの改正の流れを簡単にまとめてみた。

●昭和22年 「地方自治法」制定
 地方議会の議員に対して、報酬及び費用弁償を支給することが規定されていたが、その他の金銭の支給については規定はなく、条例上の根拠の有無にかかわらずいかなる種類の手当等が支給されても違法ではなかった。
 一部の地方自治体では、条例により調査研究費、通信費、退職手当などを支給していたようだ。

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●昭和31年 「地方行政の運営を合理化する」ため、地方自治法が改正
 地方自治体は、議員に対して、報酬、費用弁償のほかに期末手当の支給を可能とする一方、いかなる名目でも法律に基づかずに金銭を支給することができなくなった。
 このため、一部の地方自治体で行われていた議員への調査研究費などの支給は認められなくなった。

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●議員個人へ金銭支給ができなくなったことで、会派を支給対象とし支給するようになる。理由は「会派活動には、議会を活性化し住民意思を反映させる点で公益性がある」から。
 一方で、調査研究費等を地方自治法第232条の2の規定に基づく補助金として自治体が支給する場合には、首長が支給の可否を決定できるため、首長と会派が対等関係ではなくなることになる。
 
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●全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会が調査研究費の交付に明確な法律上の根拠規定を設けることを求める。

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●平成11年の地方分権一括法の成立により地方議会の重要性が高まったことで、県議長会、市議会議長会は、一般的な団体補助金と異なる位置付けにより支給ができるように地方自治法の改正を要望

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●平成12年5月の国会で「地方分権の進展に対応した地方議会の活性化に資する」ため、議員立法による地方自治法が改正され、政務調査費の交付に関する規定を設ける。
 国会では「地方議会の活性化を図るためには、その審議能力を強化していくことが必要不可欠であり、地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要」と説明されていた。

 改正により次のようになる
第100条
13 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。
14 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。

 この改正より地方自治法に政務調査費の根拠規定が設けらた同時に透明性を高めるため、収入及び支出の報告書を議長に提出する義務が会派・議員に課された。

 政務調査費を交付するか否かは、自治体の判断であり、支給する場合は条例を制定しなくてはならなくなった(要綱では不可)。

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●平成22年1月 全国都道府県議長会による「議会機能の充実強化を求める緊急要請」。
「議会機能の充実強化及び地方議会議員の責務の明確化に伴い、議員又は会派が住民意思を踏まえた活動を展開する上で必要な制度として、現在法文上調査研究活動に特化されている政務調査費制度を見直し、政策立案、議員活動の説明等を加え、幅広い議員活動又は会派活動に充てることができることを明確にするよう法律改正を行うこと」

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●平成24年 地方自治法改正
 議員立法により成立。地方自治法第100条14項中「調査研究」の下に「その他の活動」を加え、「政務調査費」を「政務活動費」に改め、「方法」の下に「並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲」を加え、同条第十五項中「政務調査費」を「政務活動費」に改め、同項の次に次の一項を加える。議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとするも追加。

 いったんは給料以外にも現金の支給ができるなどルーズな状態だったが、ボーナスの支給ができるように法律を改正すると同時に議員個人へは給料以外に金銭を支給できなくなった。
 しかし、個人ではなく会派という団体への補助金として支給できると解釈し実施したが、首長の判断しだいで決められてしまうことから、ちゃんと欲しいとなり、さらに改正され調査目的として支給ができるようになり、同時に報告を求められるようになる。
 それでも、使い勝手が悪いのでさらに改正を求めた結果が今回の改正…ということになるだろうか。

■問題なのは中身

 政務調査費は議会によって額が違う。武蔵野市議会は月額4万円だ。調査に出かけたり資料を買う、議会のレポートを作るなどで、私にはこの額では足りないほどだ。一方で都議会のように月額で60万円もある議会もある。何に使うのだろうと思うが、相応なことに使っているのだろう。問題は額ではなく、その使い方ではないだろうか。調査や研究、市民のためになっているのかだと思う。
 また、議会レポートをどのように考えるか、政務なのかも問われると思う。市民に有益な情報があるのか。単に名前を知らせることが目的ではないか。極論をいえば、選挙に有利になるために発行しているのではないかも考える必要があると思う。誰でも入手できるレポートなのか。それとも、特定支援者だけに送っているかで、その意味も変わってくるはずだ。
 どこの議会かは忘れてしまったが、レポートの配布は政治活動(政党の宣伝や自らの宣伝活動)と区別が付かないので認めないというあったと思う。活動費となったことで、このような宣伝活動も認めてしまうのではないか。他にも飲食にも使えるのではないか(一部議会では今でも公聴として忘年会費などの出費が認められているそうだ)など疑問視されていることが多いからだ。
 まずは、支給額や使途基準などは条例で規定する、つまり、行政に作ってもらうのではなく、議会が自ら決めるべきだろう。市からの補助金ではなく、自ら必要と判断して決めるべきものだからだ。そして、批判を受けないようにするだけではなく、本当に市民のために使われるようにできるのかを各議会が明瞭に自ら決めるべきだと思う。

■参考1 政務調査費ランキング

 都道府県議会では、議員一人当たりの交付月額は、東京都の60万円が最高額。鳥取県、徳島県、沖縄県の25万円が最低額。政令市の一人当たりの交付月額は、大阪市の60万円が最高額で新潟市の15万円が最低額(平成19年当時)。町村議会の議員一人当たりの平均交付月額は、12,119円(平成19年7月1日現在)と上記の国会図書館のレポートにはあった。
 では東京都の自治体議会はどうか。2008年に行った開かれた議会をめざす会アンケート項目にこの額があったので、抜き出してみた。現状の額など正確なものは各議会でご確認していただくとして、参考にはなると思う。これらの額をどのように使い、誰のためになっているかをこれから考えるべきだろう。年額で高い順に並べてみると下記となった(単位1000円)。

世田谷 2880(288万円)
練馬 2520
江戸川 2400
渋谷 2394
品川 2280
葛飾 2160
板橋 2113
足立 1920
杉並 1920
新宿 1800
千代田 1800
豊島 1800
中野 1800
港 1800
北 1715
墨田 1680
文京 1680
目黒 1680
中央 1560
台東 1500
荒川 960

(以上区。以下は都下)

八王子 720
町田 720
府中 540
日野 540
青梅 480
武蔵野 480
小平 360
三鷹 324
小金井 318
多摩 312
稲城 300
狛江 300
調布 300
昭島 240
国分寺 240
立川 240
西東京 240
福生 240
あきる野 236
太田 230
江東 200
東村山 150
東大和 132
清瀬 120
国立 120
武蔵村山 110
東久留米 91.5

 

■参考2  条例案

 武蔵野市議会で議論の素案となった条例案は下記だ。他に今でも手引きがあり使途は決められている。これがこれからどのように作り変えるかは、今後の議論になる。

○○市議会政務活動費の交付に関する条例案(素案)

(趣旨)
第1条
この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第14項及び第15項の規定に基づき、「議員の調査研究その他の活動」(以下政務活動という。)に資するための必要な経費の一部として、議会における会派又は議員に対し政務活動費を交付することに関し必要な事項を定めるものとする。

(政務活動の範囲)
第2条
この条例において政務活動とは、政党活動、後援会活動などの選挙活動などを除く、会派活動及び議員活動をいう。
2 会派活動とは、議会内の議員で構成する団体として、政策立案、政策提言、調査研究、住民意思の把握、広報広聴活動等を主体的に実施するとともに、会派に所属する議員が会派の職務を果たすための活動をいう。
3 議員活動とは、政策立案、政策提言、調査研究、住民意思の把握、広報広聴活動等の活動をいう。

(交付対象)
第3条
政務活動費は、○○市議会における会派(所属議員が1人の場合を含む。以下「会派」という。)及び議員の職にある者(以下「議員」 という)に対して交付する。

(交付の方法)
第4条
政務活動費は、四半期ごとに交付するものとし、各四半期の最初の月に、当該四半期に属する月数分を交付する。ただし、四半期の途中において議員の任期が満了する場合は、任期満了日の属する月までの月数分を交付する。
2 政務活動費は、交付月の○日(以下「公布日」という。)に交付する。ただし、その日が休日に当たる場合は、その翌日とする。

(会派に対する政務活動費)
第5条
会派に対する政務活動費は、各月1日(以下「基準日」という。)における当該会派の所属議員の数に月額○○円を乗じて得た額を交付する。
2 一四半期の途中において新たに結成された会派に対しては、結成された日の属する月の翌月分(その日が基準日に当たる場合は、当月分)から政務活動費を交付する。
3 基準日において議員の辞職、失職、除名若しくは死亡又は所属会派からの脱会があった場合は、当該議員は第l項の所属議員に含まないものとし、同日において議会の解散があった場合は、当月分の政務活動費は交付しない。
4 政務活動費の交付を受けた会派が、一四半期の途中において所属議員数に異動が生じた場合、異動が生じた日の属する月の翌月(その日が基準日に当たる場合は、当月)の末日までに、既に交付した政務活動費の額が異動後の議員数に基づいて算定した政務活動費の額を下回るときは、当該下回る額を追加して交付し、既に交付した額が異動後の議員数に基づいて算定した額を上回る場合は、会派は当該上回る額を返還しなければならない。
5 政務活動費の交付を受けた会派が、一四半期の途中において解散したときは、会派は、解散の日の属する月の翌月分(その日が基準日に当たる場合は、当月分)以降の政務活動費を返還しなければならない。

(議員に対する政務活動費)
第6条
議員に対する政務活動費は、基準日に在職する議員に対して、月額○○円を交付する。
2 一四半期の途中において新たに議員となった者に対しては、議員となった日の属する月の翌月分(その日が基準日に当たる場合は、当月分)から政務活動費を交付する。
3 基準日において議員の辞職、失職、除名若しくは死亡又は議会の解散により議員でなくなったときは、当月分の政務活動費は支給しない。
4 政務活動費の交付を受けた議員が、一四半期の途中において議員でなくなったときは、議員でなくなった日の属する月の翌月分(その日が基準日に当たる場合は、当月分)以降の政務活動費を返還しなければならない。

(使途基準)
第7条
会派に係る政務活動費は別表第1、議員に係る政務活動費は別表第2に定める使途基準に従って使用するものとする。

(経理責任者)
第8条
会派は、政務活動費に関する経理責任者を置かなければならない。

(収支報告書の提出)
第9条
政務活動費の交付を受けた会派の経理責任者及び議員は、別記様式により、政務活動費に係る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を作成し、議長に提出しなければならない。
2 前項の収支報告書は、前年度の交付に係る政務活動費について、毎年4月30日までに提出しなければならない。
3 政務活動費の交付を受けた会派が解散し、又は政務活動費の交付を受けた議員が、議員でなくなったときは、前項の規定にかかわらず、当該会派の経理責任者であった者又は議員であった者は、解散の日又は議員でなくなった日から○日以内に収支報告書を提出しなければならない。

(議長の調査)
第10条
議長は、政務活動費の適正な運用を期すため、前条の規定により収支報告書が提出されたときは、必要に応じ調査を行う等、使途の透明性の確保に努めるものとする。

(政務活動費の返還)
第11条
市長は、政務活動費の交付を受けた会派又は議員がその年度において交付を受けた政務活動費の総額から、当該会派又は議員がその年度において行った第7条に定める使途基準に基づいて支出した総額を控除して残余がある場合、当該残余の額に相当する額の政務活動費の返還を命ずることができる。

(収支報告書の保存及び閲覧)
第12条
議長は、第9条第l項の規定により提出された収支報告書を、提出期限の日から起算してO年を経過するまで保存しなければならない。
2 次の各号に規定する者は、議長に対し、前項の収支報告書の閲覧を請求することができる。
① 市内に住所を有する者
② 市内に事務所又は事業所を有する個人又は法人

(委任)
第13条
この条例に定めるもののほか、政務活動費の交付に関し必要な事項は、市長が規則に定める。

(附則)
この条例は、平成25年○月○日から施行する。

【参考】
中国新聞 政務調査費の使途緩和 住民の理解得られるか