プレイスと似たコンセプト  高い理想の塩尻えんぱーく 

えんぱーく (7)えんぱーく (3)

 図書館と市民活動支援など行う塩尻市の市民交流センター「えんぱーく」を視察してきた。施設規模は異なるものの、武蔵野プレイスを同じようなコンセプトを持つ複合施設だが、指定管理者制度ではなく、あえて市直営にしていることや市民による支援組織を施設開設よりも前から作り上げたなどプレイスとは異なった運営を行っていることで注目をしていた施設だった。プレイスとの比較を含めて報告する。


■施設概要

 えんぱーくの「えん」は、丸い円、ご縁、塩(塩尻の塩)を意味し、公園のように誰でも気軽に立ち寄れる施設であってほしいとの願いから命名されたもの。施設規模は、地下1階、地上5階建てで床面積は約12,000㎡。館内には、大きな吹き抜けがあり机などはスペースをかなり取っているなど広々とした感じだった。フロアの中央に階段を配置しているなど回遊性も考えており、この点は武蔵野プレイスと同じように思える。ちなみに、武蔵野プレイスの延べ床面積は約9,809㎡。二まわりほどえんぱーくのほうが広い。

 施設の概要は、地下が書庫や機械設備などがあり一般利用はできない(免震構造でもあるので、ダンパーなどもある)。
1階と2階が図書館で、外部に飲食店テナント。
3階が会議室やホール
4階に会議室と塩尻市の商工課、商工会議所、財団法人塩尻振興公社など市と関係の深い事業所の事務所に加え、歯科クリニックが入る。
5階は飲食可能なイベントホールと地元のケーブルテレビ会社とWEB制作会社が入っている。
 図書館の開館時間は10時~20時。会議室などは9時~22時だ。
総事業費は、51.6億円。土地代が約5.4億円、建物が約30.3億円(プレイスの総事業費は約45億円)。

 民間企業も同じ建物にあるのがプレイスとは異なるところだ。駐車場は道路を挟んだ向かい側にパーキングタワーがあり通路で結ばれている。
 施設は商業施設が閉鎖後、空き地になっていた場所に建てられたもので、組合所有となっており、市が約9割を所有しているのだそうだ。

 図書館の本の冊数は、えんぱーくが26万冊(開架スペースでの冊数)。武蔵野プレイスは約14万9000冊(えんぱーくは、中央図書館であり、プレイスは分館の位置づけ)だ。

えんぱーく (13) えんぱーく (14)

■機能

 施設が計画されたのは、中心市街地を活性化することと既存施設が手狭であった市立図書館の改善を考えてきたことがきっかけとなっている。中心市街地活性化基本計画が策定されたのが平成10年。いらい、市だけでなくはなく特別委員会による議会との協議を進める一方で、市内外の有識者と市民による「市民交流センター創造会議」が設置され構想などを策定し、平成22年4月にオープン。設計案は公募により行われ、建築家柳澤潤さんの提案が採用され、2012年日本建築学会作品選奨を受賞するなど建築作品としても注目されている。
 武蔵野プレイスの元となった「武蔵野市中心市街地活性化基本計画」が策定されたのが平成11年であることを考えると、ほぼ同じようなスタートを切っているともいえるだろう。

 えんぱーくは3つの役割と5つの分野を持つ。武蔵野プレイスには、4つの機能と3つのミッションがあり、コンセプトは同じように思える。

●3つの役割
 応援~意欲と活動を応援します。
  ◆活動を広げる機会が見つかります
  ◆活動参加のきっかけがつかめます

 提供~役立つ情報を提供します。
  ◆必要な情報に最短ルートでたどりつけます
  ◆悩みを解決するヒントが見つかります
  ◆新しい世界に出会えます

 進化
  知恵を蓄積・活用・創造します
  地域の価値を見つけて発信します

●5つの重点分野
・「図書館」
・子育て支援・青少年交流」
・「シニア活動支援」
・「ビジネス支援」
・「市民活動支援」の5つの重点分野を設定しています。

(えんーぱーくサイトより転載)

えんぱーく (17)えんぱーく (1)

■運営

 えんぱーくの運営は、現在では、民間に委託したり、指定管理者制度にしたりはせず、市の直営としている。その結果、メリットとしては4つの市の部署の連携がしやすくなった。ひとつに場所にあるので議論もしやすいとの説明だった。
 ただし、将来的には公設市民営による施設運営をめざしており、直営はオープンから当面の期間とされている。これは、当面はサービスの質の向上や市民にノウハウを蓄積するために市の直営により運営を行い、将来的には、市民による公益活動団体などが運営管理を担うというものだ。そのため、指定管理者制度も含めた、市民と行政の連携手法の研究も行うとしている。

 現在の組織は、市民交流センター(部)という位置づけの部署となり各機能を行っている。塩尻市の組織図を見ると、市長部局と教育委員会の双方の系列となっており、どのように統制を取っているのかはよく分からなかった。図書館については教育員会の元にあるとのことだった。横の連携をしやすくすることも含めて、指定管理者制度を使い市が100%出資する外郭団体が運営をするプレイスとはこの点でも対照的だった。
 

えんぱーく (15)えんぱーく (12)

■参考になるところ、気になるところ

 施設内を見学し説明を伺ったところ、参考になることがたくさんあった。そのなかからいくつか簡単にまとめてみる。
 よそ様の自治体なので失礼を承知ながら気になったところもまとめてみた。

○参考になったところ
・スペースに余裕がある。
 館内には貸し会議室など以外に机や椅子が用意されているが、すべて空間の余裕を持たせており気持ちのいい雰囲気だった。土日などには学生でいっぱいになってしまうが、施設コンセプトがあることから増やすことはしないのだそうだ。図書館のカウンター周辺もスペースに余裕があり作業がしやすいとのことだった。

えんぱーく (5)・新鮮な図書館員の制服
 図書館員の服装は、白のブラウスで統一されていた。多くの図書館では作業を考えてエプロン姿になるが、あえて採用しなかったのだそうだ。その理由は、高度な調査、要望(レファレンス)に対応するには、どうしたらいいかで職員で検討した結果、この姿になったのだという。図書館から制服として貸与されるのは黒いカフェエプロンのみ。あとは私服で下は黒のスカートかパンツ、上は白のブラウス、寒い場合に羽織る物はグレーのカーディガン、靴は黒か茶で音のたたないものと申し合わせているという。私服なのでこまかなところは異なっているとのことだが、この姿から受ける印象は良い。図書館が目指すべきことを示しているように受け取れた。

・アドバイサー会議の設置
 構想策定などに参加された常世田良さん(日本図書館協会理事・元千葉県浦安市立図書館長や設計者の柳澤さんなどをメンバーにアドバイザー会議を設置し、えんぱーくの有効活用へ専門的な助言を行う機関として設置している。年に二回の開催ペースで、これまでに7回開催されているという。コンセプトの再確認や外部からの視点を入れるにもこのような組織は必要だと思う。これはプレイスにも必要だと思った。

・館内に子育て支援センター
 専用の貸し出しカウンターがある子ども用の図書スペースに子育て支援センターがあった。図書館に行くついでになど気軽に相談できるような仕掛けは参考になる。

・市民による支援組織
 施設を開設する前からえんぱーくの運営や企画に自主的参加する市民組織「えんぱ~くらぶ」を設立している。これは将来的な市民運営を考えてだと思うが、同様な市民組織が想定されていたものの開設前に設立ができず最近になって動きが出てきたプレイスとは対照的な経過だろう。武蔵野市のには図書館運営委員会に公募市民がはいる制度があるが、図書館を積極的に支援する「図書館友の会」のような組織はない。ニーズを探ることを含めて、このような組織もプレイスには必要だ。

・畳スペース
 図書館に畳スペースがあり誰でも利用可能となっていた。子どもには、人気が高いようだ。このようなスペースは、図書館にかからず好感を持てる。

えんぱーく (10)・開放感のある屋上テラス
 眺望がよくビアガーデンをやればいいのにと思ったのが屋上にあるテラス。同様の要望もあったが、検討はしていないという。カフェでもいいので行ったほうが収益にならないかと思う。

●気になるところ
・音楽スタジオは開館前から高校生などの要望が強く設置していたが、音漏れがあるので近く改修するとのこと。音楽スタジオで問題になるがシンバルの破損だが、このことを聞いてみると頻繁に破損しているとこのとだった。数万円もすることもあり料金は懸念材料だそうだ。しかし、一方で300~900円の利用料金は、市外も社会人も中高校生でも同額だという。高校生優先枠、料金減免を考えたうえで料金を考え直すべきではないかと思った。

・協働オフィス
 NPOなど市民団体が共同で使うオフィスがあり、嘱託職員1名を配置し活動支援などを行っていた。使用期間は最大で3年間。来年には満期になる。新たに募集が行われる予定だが、新たな応募団体があるのか、今のところ分からないという。

・えんぱーくクラブの今後
 期待される組織だが、施設ができてしまうとトーンダウンしてしまっているという意見もあるそうだ。組織の高齢化も課題だという。どこの組織も同じだろうが、施設の将来を考えると心配だ。

・職員配置
 図書館の正規職員は4名。カウンター業務などは嘱託職員が担っているというが、少ないように思える。塩尻市市民交流センター運営管理方針を見ると正規5名、嘱託16名などを含め会館前より8名増やすことになっているが、増えていないようだ。市全体の財政を考えると無理なのもしれないが、塩尻市の図書館員は、専門職採用ではなく一般職採用による配置転換ということもあり、大丈夫かなと思ってしまった。

・一階の店舗
 館内ではないが、一階に店舗があった。カフェが入ると良いのにと思うが、あくまでも民間が考えることなので何とも言えないのだろう。ここにプレイスのある地元名物「油そば」があったことには驚かされた。

えんぱーく (8)えんぱーく (9)

■まとめ

えんぱーく (4) えんぱーくができたことで、視察を含め多くの人が訪れているという。正確な数値は分からないが、活性化には効果があるようだ。
 総じて言えるのは専門家や市民を交えて「役立つ情報を提供し、皆さんの意欲と活動を応援します」というコンセプトを作り出し、実現するためにミッション(役割)を示すなど理想の高さが印象的で、理想とミッションの重要性をあらためて思った。この考え方は図書館が中心となるもので武蔵野プレイスとも同じだと思う。だた、市民支援組織に課題があるように現実はそうは簡単ではないことも分かった。えんーぱーくとは直接は関係ないが、塩尻の公民館との連携があまり取れていない印象もあった。以前、視察した北海道北広島市の図書館は、公民館と連携すること図書館の市民支援組織を生み出したことを考えると他の部署との連携がもっと必要ではないかと思った。これは、武蔵野プレイスでも同じだろう(武蔵野市に公民館はないが)。
 えんぱーくは、開館後は上々の滑り出しのようだ。でも、勝負はこれからだろう。複合施設は、いろいろな可能性がある一方で、どれも中途半端になる危険性があり、運営によって変わってくるはずだからだ。初期は熱意が職員にはあっても、時がたつことでコンセプトが薄まってしまうこともある。
 プレイスと似たコンセプトを持ち、一年ほど先に開館したことで多くのことが参考になったえんぱーくだった。塩尻市民であれば毎日にでも訪れたいほどだが、残念ながら遠方だ。またの機会に再び訪れてみたい。
 
えんぱーく (6)えんぱーく (16)

写真上左から

えんぱーくの外観
図書館1
図書館2

館内のオープンスペース(壁のないスペース)。
会議室はガラス張り。カーテンもあるが、使うことは少ないそうだ

オープンスペースで囲碁を楽しむグループ
このような映写も可能

プレイスにもある、らせん状の階段

図書館カウンター。制服が新鮮
屋上のテラス

えんぱーく一階スペース。奥に2店舗がテナントして入る
油そばがあったのには驚き

図書館3

子ども用図書の専用カウンターと左奥に子育て支援センターがある。支援センター職員もここに常駐している
調理室ではなく、食育室となっていた

収納式の客席がある多目的ホール

※一部、伺った内容と実際の運営とで異なっている点があったので修正加筆した(2012/11/13)

えんぱーく (11)