20年遅れている? 日本のワクチン

 日本のワクチン制度の課題と自治体に期待していることについて、PhRMA(米国研究製薬工業協会)の方々から話を伺った(※)。話によると、ワクチン接種は100%安全とは言い切れないものの接種することで病気にかかる率は確実に下がる。しかし、日本ではWHOが接種を推奨しているワクチンを自治体が費用負担し定期的に接種を行うようにしていない。このことは、欧米から20年は遅れていると指摘されていた。

 PhRMAは、米国で事業を行っている製薬企業とバイオ企業で構成されている業界団体。主に医薬品の研究開発に焦点をあてた活動を行い、予防医療の推進、医療制度改革の働きかけも行っている。

 ワクチン接種には、定期接種と任意接種があり、どちらも薬事法で承認されているが、定期接種は予防接種法で接種が規定され、費用負担を含めて自治体が行うと規定されている。一方、任意接種は自治体に義務はなく、費用負担は原則実費だ。つまり、定期接種なら自治体が接種のお知らせなど広報活動を行い費用負担もするが、任意接種は希望者が自ら探して費用も負担して行う。いわば、やりたい人が勝手にやってくださいということになる。そのため、接種率は低くなっているのが現実だ。

スケジュール WH0が、全世界で定期接種を推奨しているワクチンはBCG(結核)、B型肝炎、ポリオ(小児麻痺)、DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風混合)、ヒブ(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌(結合型)、ロタウイルス、麻しん(はしか)、風しん(三日ばしか)、HPV(ヒトパピローマウイルス)の10種類だ。日本で定期接種が行われているのはこのうち、BCG、ポリオ、DPT、麻疹、風疹の5種類。残りの5種が任意になっている。
 なぜ任意になっているかは、これまでに副作用による被害で国が裁判で負けただけではなく、副作用だけを強調したメディアの行き過ぎた報道や科学的な検証がないないかで予防接種への不信感が高まったことが考えられるという。
(図は国立感染症研究所 感染症情報センターのサイトにある予防接種スケジュールより)

 しかし、このような状況でも新型インフルエンザが懸念されたことから、予防接種(ワクチン接種)へ国の助成を行うことになったのたが、費用を負担する根拠法がなかった。この時は、特別立法で対応したことから他の予防接種についても見直すことになり、その結果、24年5月に出された厚生労働省の予防接種部会による「予防接種制度の見直しについて(第二次提言)」では、Hib、小児用肺炎球菌、HPV(子宮頸がん)、水痘、おたふく、B型肝炎、ロタの7ワクチンについては接種が望ましいとされるようになったという。

 厚生労働省のこの資料には、接種した場合の費用としなかった場合の費用対効果がある。接種費用と接種をしなかった場合に疾病となることでの医療費、周囲への感染の影響、看護にかかる経費などとを比較したものだ。

Hib       240臆円費用超過(影響する費用よりも接種費用が高い) 
小児用肺炎球菌 30億円費用軽減(影響する費用よりも接種費用が安い)
HPV       5120億円費用軽減
水痘      360億円費用軽減
おたふく    290億円費用軽減
B型肝炎     160億円費用超過

24年5月予防接種部会資料1-3 12
 などとなっている。接種をしたほうが病気にかかる人が少なくなるだけでなく、費用超過の接種があるものの総額で考ると費用対効果があることになる。だが、財源がないことで実施できないのが現状となっているのだそうだ。
(画像は第22回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 資料1-3より)

■自治体によって異なるワクチン接種

 病気にかかる率が下がることは確かであるため、費用負担を行い接種を勧めている自治体が増えてきている。だが、すべての自治体ではない。そのため、住んでいる自治体によって接種への自己負担がことなっているのが現状だ。上記のこの資料によると、現状でこの7ワクチンを定期的に必要回数を行った場合、ワクチンの価格と問診料などを含めた自己負担の総額は、19万9,350円になるという(男子にHPVは不要)。ワクチンへの助成が自治体により異なるため、最大でこの差額が自治体によって出てしまっている。
 
 そのため、週刊誌などがこのような自治体の差を特集し、子育てがしやすい自治体かどうかをランキングしている。その結果、自治体が選ばれることになり、ひとつの自治体間競争となっているといえるだろう。
 費用負担ができるのは、基本的には財政にゆとりがある自治体が前提になる。選ばれるのは裕福な自治体となり、勝ち組がますます勝ち組となっていくのかもしれない。限られた財政でも工夫で捻出する自治体もあるとは思うが、それだけで、どこまで太刀打ちできるだろうか。

 地域主権だから限られた財源をどこに重点配分するかは自治体で考えることと言ってしまうと、それは確かにそうとは思うが、子どもの健康や命に関わることが保護者のお財布状況や居住している自治体で違ってしまっていいのか。すべての子どもは等しく守られるべきではないか、と考えると違うよな、とも思った。
 また、自治体がどこに何にお金を使うか、税金の使い道が問われているのではないだろうか。

 国の借金は莫大だ。消費税増税が決まったが、税収が増えたとしてもこのようなことにお金が回るとは限らない。考え方かもしれないが、普通に考えれば増税分は借金返済に充てられるのではないか。と考えていくと、どこかの政党が主張していたように、コンクリートなのか、人なのかの選択をもう一度、考え直すべきではないかと思う。どちらもできる状況ではないのに、結局、今までと同じことを繰り返してはならないのだと思う。

【参考】
武蔵野市で行う予防接種一覧

※2012年8月に行われた民主党東京都区市町村議員団の研修会で伺った