保育料の考え方

 先の一般質問で保育料について質問をした。主な内容は、現在、保育料を見直すために保育料審議会を開催しているが、国基準保護者負担率が50%を割り込んできたこと、保育園運営費決算額のうち保育料収入の占める割合が10%程度になることを理由として審議会を設置したとしているが、この数値を根拠に保育料を考えるべきではないとの質問だった。
 そして、今、最も課題なのは認可保育園の保育料と認可外(認証保育所、グループ保育、保育ママなど)との保育料格差であり、見直すのであればこの格差を考えるべきだとの内容だった。

 この二つの数値は、市が認可保育園へ支出している経費のうち、保育料の割合を見るものだ。国基準保護者負担率「50%」とは、国が想定している保育園の経費のうち、保育料がどの程度の割合になっているかというもの。実際には、国の基準どおりに保育園を運営している自治体はなく、自治体が独自に保育料の軽減を行ったり、保育士の数を増やすなどをしているため、その総事業費のなかで保育料が占める割合がどの程度になるかを見るのが、「10%程度」の数字だ。
 ようは、保護者の負担(保育料)が認可保育園の経費のどの程度を負担しているかを見る数字。経費が増えているのに保護者の負担が少ないから値上げをするということを考えることにつながる数値だ。

 確かに一定の負担は必要だと思う。しかし、この数字だけで考えるべきではないというのが質問の趣旨だった。なぜなら、この数字は認可保育園への市の支出額、持ち出し分が多くなったらすぐに保育料を上げろとなる数字であり、そう単純な数字ではないからだ。

■急に変わったのではない

 武蔵野市が発行している保育概要でこれまでの保育料の割合を調べてみると、平成22年度決算ベースで保育所の事業費支出総額に対する保育料の割合は10.4%となってる。この数値を見れば見直す理由となるのだろう。
 しかし、21年度決算では11.5%、20年度決算では10.4%、19年度決算では11.9%、18年度決算では11.5%、17年度決算では11.1%、16年度決算では今よりも低い10.2%となっている。つまり、取り立てて急激に10%に近づいているのではないのだ。

 認可保育園の運営経費は、国が1/2、都が1/4、市が1/4 を負担するのが基本だ。しかし、国基準のままでは保育料が高すぎることことから国基準のままの保育料にすることはなくほとんどの自治体で独自に補助を行い保育料を安くしている。三歳児以下の場合、国基準では月額10万4000円が最高額になるが、武蔵野市の場合は月額5万7100円としている。
 また、経営が厳しい民間認可保育園の運営費補助も自治体が行っていることが多く、この費用も認可保育園の総運営費には含まれてくる。国が基準額を下げてきていることや武蔵野市のように地方交付税の不交付団体には、公立保育園運営費が国から来ないことも考えると、何%が適切なのかの議論も根拠もなく、「50%」だからで自動的に保育料を値上げしてしまうのもおかしなことだ。

■不況になれば保育料が上がる?

 このことよりも、保育料はそもそも所得によって決まる。前年の所得が少なくなれば保育料は少なくなる。経済不況が続けば保育料は少なくなることになり、そのたびごとに見直す、つまり値上げとなれば、不況下になればなるほど保護者の負担が増えることになってしまう。
 保育概要で児童1人当たりの保育料をここ4年で見ると、19年度が2万1,764円、20年度が1万7,880円、21年度が1万9,785円、22年度が1万8,975円と徐々にではあるが、減ってきている。つまり、平均所得が減ってきていることになる。

 また、来年度から公立保育園が3園子ども協会に移管される予定で、このことにより、民間保育園としての運営費の増収が見込まれている。補助金は1園当たり約3,600万円(「新武蔵野方式による公立保育園の設置・運営主体変更についての検証委員会の議事録」より)だ。来年4月からの3園、さらに現在の2園、合計5園が移管されることで約1億8,000万円の増収となる。保育概要にある保育園の市負担額は約16億円。ここへこの額が増えるとなれば、一割の収入増となる。民営化して収入を増やしているのに保育料も上げるのか、となってしまう。これらを考えても、ふたつの数字で考えるべきではないはずだ。

■保育の概念を変える

 ではどう考えるべきか。保育園の待機児とは、保育に欠けることを市が認めた児童であり、本来は保護者から申し込みがあったときは市が保育所において保育しなければならないと児童福祉法では規定されている。本来であれば、必要数の認可保育園をつくらなければならないのだ。しかし、費用を考えれば、すぐに認可保育園新設に踏み切れないこと、そのために認証など認可外保育所で対応せざるを得ないことは理解できる。

 このことを考えれば、認可園に入れた、入れなかったで保育料が変わるのではなく、施設は異なるが、認可園を必要としている児童の保育料は、所得に応じて認可園でも認可外でも同じようにしていくべきではないだろうか。保育料の見直しとは、国基準での保護者負担率、保育料収入の占める割合という数字で考えるのではなく、認可や認可外を含めた必要としている児童にかかる保育費用全体を考えた上で、必要としている児童の保育料が幾らが適正なのかで考えていくべきだと思う。

 武蔵野市では、平成24年8月1日現在で待機児童数が124名もいる。この数は認可外に入園している子どもを除いている(新基準)ので、認可園を希望して入れていない子どもの数は332名だ(旧基準)。保育料を見直すのであれば、先の二つの指標で考えるのではなく、認可園の保育料と認可外の保育料を同じにするように見直すべきだろう。

■認可以外へ月5000円増の試算

 保育料を16年間も見直してこなかったのだから、値上げはある程度は必要かもしれない。しかし、それは負担が少ないからもっと出せではなく、認可に入れなかった子どもの保育料格差を埋めるために認可園に入れた家庭も少しは負担して欲しいとして考えるべきだと思う。

 児童福祉法が制定されたのは昭和22年だ。当時、想定されていた保育と今の保育とでは概念が異なっている。認可保育園だけで必要としているニーズに対応できず、認証やグループ保育、保育ママなど、認可外の多様な保育が重要な役割を担っているのが今日なのだから、認可外の保育も含めた全体の費用で保育料の負担がいくらが適切なのか考えていくべきだ。保育とは認可保育園だけではないと考え方を変えるべきだろう。

 武蔵野市では認可外保育所へ子どもへ、3歳児以下は月2万円、3歳児以上は月1万円の補助をしている。これは、市で比較すると多いほうで評価できるものだ。しかし、現実にはこれでも大変だろう。

 例えばだが、認可外の子どもへ月5000円、年間6万円を増やすと仮定した場合、旧基準の待機児が300人とすれば、1800万円が必要となる。これを認可保育園の児童数1400人(24年度の入所児童数は1421人)で割り返すと、一人当たり年間約1万2857円となり、月額にすると約1000円強の保育料増で可能となる。当然だが、実施するとなれば、低所得者への保育料の増はなしとして高所得者により負担してもらうべきだろう。さらに、保育所への入所申請には所得の証明が必要であり、市が認可外となってしまった子どもの保護者の所得を把握することが可能であることを考えれば、旧基準全員ではなく低所得の方を重視して補助を増とすることで、認可側の負担をすくなくすること、反対に認可外への補助をさらに厚くすることも考えられるはずだ。全額を認可園保護者が負担するのではなく、市も負担するとすれば、額はさらに変わってくる。

■市長も格差は認識

 市では現在、保育料審議会を設置し、保育料を見直している。しかし、この保育料とは児童福祉法に基づく保育料、つまり、規則上は認可保育園の保育料を審議する会で認可外については諮問されていない。認可と認可外の保育料を考えるのであれば、審議会で審議する内容(諮問内容)や規則をほんとうなら変更してから審議すべきではないかとも思う。

 審議内容は別として、この保育料格差について市長は、児童福祉法で家計に与える影響を考慮して保育の額を徴収すると規定されているため、家計に与える影響も視点として捉えたい、保育料の差は過大だと認識していると答弁していた。保育料を所得に応じて認可園でも認可外でも同じにすべきと質問には、保護者側からすれば、同じような保育料と考えられるかもしれないが、運営側から考えると、事業、制度が違うこともあり一律にはなかなか比較できないとしていた。ふたつの数値だけでは考えないとも答弁していた。

 これらの課題の指摘について、市長も認識していることを今後に期待はできると思う。保育料審議会は、近く市民意見も聴くとしている。このような論点でも考えてもらいと思う。

【参考】
武蔵野市 保育概要2012