もんじゅでもうひとつ考えておくこと

 高速増殖炉もんじゅには、原子力による発電装置としてはでなく、別の視点からも必要性を考えておくべきだと思う。それは、国防の視点。核抑止力として必要かの視点だ。


■もんじゅや原発は核抑止力

 次の首相にふさわしい人で名前があがる石破茂元防衛大臣(自民党)は、SAPIO(2011年10月5日号)で次のように語っている。

『原発を維持するということは、核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れるという「核の潜在的抑止力」になっていると思っています。逆に言えば、原発をなくすということはその潜在的抑止力をも放棄することになる、という点を問いたい』
『安全保障の面から、日本が核兵器を持てることを否定すべきではないと思うし、憲法の解釈上も禁じられていないというのが政府の立場です。「非核三原則」は憲法ではなく、あくまで政策的判断として貫かれているものです。
 しかし、翻って日本は、核の平和利用を原子力発電の技術によって営々と積み重ねてきた。なればこそ、テクノロジー面においても、マネジメント面においても、世界で一番安全な原発を作っていかなければいけない。これは、世界に対する日本の責務だと私は思う。だから、私は日本の原発が世界に果たすべき役割からも、核の潜在的抑止力を持ち続けるためにも、原発をやめるべきとは思いません』

 同様に「外交上の隠れたパワーになっている。核抑止力に相当するものをもんじゅによって日本は持っているという側面があることは確か」と元原子力委員会委員九州大学大学院吉岡斉教授も発言している(TBS news23 ※1)。

「もんじゅ」について菅首相(当時)が衆院予算委員会で廃炉を含めて検討する、との意向を示したことへ8月10日付読売新聞社説は次のように記していた。

『中国は先月から高速増殖炉の発電運転を開始した。韓国は、日本と同じく再処理を始める、との方針を示している。北朝鮮は、核兵器開発に固執している。
 日本は、平和利用を前提に、核兵器材料にもなるプルトニウムの活用を国際的に認められ、高水準の原子力技術を保持してきた。これが、潜在的な核抑止力としても機能している。首相の無責任な言動には、こうした配慮がうかがえない」(要約)

 つまり、もんじゅは、日本の核兵器との関係も考えなくてはならないということだ。もんじゅからは、核兵器に転用できる高濃度プルトニウムを生み出してしまう施設であり、容易に核兵器に転用できること。それは、核抑止力になると考えるべきか。核というカードを日本が持つべきかだ。

■すでに準備はできている

 古くからもんじゅへの疑問を示している槌田敦氏(元名城大学教授)は、「核開発に反対する物理研究者の会通信第42号 日本核武装によるアジア核戦争の恐怖 (2006年12月)」(※2)で、日本は常陽ともんじゅですでに原発を30発以上作ることができる原爆材料を生産している。兵器とするには、さらに再処理が必要だが、可能とするリサイクル機器試験施設(RETF)という特殊再処理工場がすでに東海再処理工場の付属施設として建設されている(※3)と指摘している。だが、1995年に起きた東海再処理工場の爆発事故で止まったままだ。
 また、もんじゅについてはナトリウム漏れ事故により1995年より運転が行われていない。復旧するにしても、軍事費であれば修理費はいくらでも使えるだろうが、発電目的になるため思うような修理費が得られてない(1000億円の必要額に対して200億円という)』とも指摘している。
 このことは、事故により施設は止まったままだが、修理をすれば兵器転用が可能だということになる。
 
 核抑止力としてもんじゅが必要と考えれば、早期に再開が必要と考えるべきだろうか。

■原発をミサイルで狙えば

 ある議員と話しているときに、中国が原発を持って核兵器を作るに日本が原発を止められるのか。日本が脱原発を決めるとウランなどの燃料があまり、中国や韓国、北朝鮮がより簡単に入手できるようになってしまう、と脱原発へ疑問を示していた。隣国がやるから、対抗上やるとの考えだろう。でも、そのような考えでいいのだろうか。

 一方で、日本の原発を狙えば核爆弾と同じ効果が得られるとの話もよく聞くことだ。

 統一日報の2009年06月12日付記事に「日本の原発51基をミサイル攻撃すれば」 の記事があり、張ヨンスン朝鮮労働党中央党副部長による講演内容が掲載(※4)されている。その中に次のようなことが話されていたという。

『北海道から九州の南端までの日本全域を打撃するには、1,500kmあれば充分です。率直に申し上げると、我々は1,500kmまで飛ぶロケットは、坑道(トンネル)の中に系列生産されています。その上、日本チョッパリらは、土地も狭いのに、原子力発電所がちょっと多いです。51個あります。今、我々が、ロケット一発で日本の原子力発電所一つを打っ壊した時、2次大戦の時、広島に落ち20万も殺した原子爆弾の破裂の320倍の破裂が出ます。原子炉一つが壊れた時。狭い日本の地に50個の原子炉を我々が打っ壊した、と想像してみて下さい。どれくらいの破裂が出て、どんな現象が起きるだろうかを。
万一、日本チョッパリらが補償もせず、あのように悪く居直り続けたら、我々は地球上から日本という国を跡もなく消せます。だから、日本チョッパリらが、わがミサイルやロケットを見て喚きたてるのです』

 原発を狙えるだけの命中精度があるのかとの疑問もあるが、気持ちのいい話ではないはずだ。もんじゅであれば、通常の原発よりもより危険度が高いことになる。狙うとすれば、と考えてはならないだろうか。
 もんじゅや原発の開発は、発電というよりも、核開発のチキンレースではないだろうか。ゴールをどうなるのだろう。
  

■アメリカの判断
 
 高速増殖炉はアメリカ、フランス、ロシア、イギリス、ドイツ、日本などで開発されてきたが、事故が多発し開発を中止している。開発を行っているのは、日本、ロシア、中国、インドだとされているが、実用化は大幅に先送りされ、商業炉の運転は2030~40年頃になるとされている(Wikipedia 高速増殖炉)。

 核情報をまとめているサイト「核情報」に2012年07月14日付で、フランク・フォンヒッペル氏による論文が『世界』8月号に掲載されたとの記事を掲載していた。
 フランク・フォンヒッペル氏は、1977年にカーター政権の高速増殖炉・再処理撤退政策決定に影響を与えた専門家だ。

『米国は、74年にインドが平和利用名目の再処理で得たプルトニウムを核実験に使ったのを受けて政策を見直しました。乏しいウラン資源を活用するには、高速増殖炉が不可欠であり、再処理は、その初期装荷燃料用プルトニウムを取り出すのに必要との議論に対し、著者らは原子力の伸びの過大予測とウラン資源の過小推定の誤りを指摘しました。増殖炉開発の必要はなく、再処理もいらないとの結論の正しさは歴史が証明しています。

核兵器5000発分以上のプルトニウムを溜め込んだ日本の硬直した政策を変えるための国民的議論に必要な理論をこの論文は提供しています』というものだ(リンク先に原文あり)。高速増殖炉から撤退した国は、コスト的に合わないことが理由であり、テロリストが核燃料を奪う可能性や平和利用と言いながら、転用できることを考えれば危険性が高いことを指摘している。

 また、天然ウランの採取可能年数は100年(資源エルギー庁資料/60年説もあるが根拠は不明)であり、いつかはなくなってしまうエネルギーであることも考えるべきだ。ウランも限りがあるから、高速増速炉が必要と考えるのではなく、再生可能エネルギーへとシフトすべきではないだろうか。

■それでも続けるべきか

 もんじゅを含めた原発政策は、今、岐路に立っている。どちらへ進むかは大きな政治判断だ。票目当ての人気取りではなく、人間としてのモラルで考えるべきだ。
“近いうちに”総選挙があるようだが、その時には、判断材料として原発をどのようの考えているか。党の方針ではなく、それぞれの議員のモラルとして示すべきではないだろうか。核抑止力として必要かも含めてだ。

 私は脱原発へ進むべきと考えているが、武蔵野市議会でもすべての原発をなくせないと考えている議員は少なくないように、全国的規模でみれば必要だと考えている議員は多いのだと思う。考えはそれそれで否定はしないが、岐路になっている以上、どちらかなのか考えを示し、有権者の判断を求めるべきではないだろうか。
 電気をたくさん使いたいから、あるいは国防上必要など理由はそれぞれでいいが、理由をハッキリと示し有権者の判断を受けるべきだろう。お茶を濁し先送りしている場合ではないのだ。

【参考】
環境問題を考える 
http://www.env01.net/

(※2)上記参考サイトから「enter」→「その他の重要な内容」→「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」

(※3)日本原子力研究開発機構による解説
「高速増殖炉燃料の再処理技術の開発を高レベル放射性物質研究施設(CPF)などで実施しておりますが、これまでに得られた開発成果を踏まえて、工学規模での試験を実施するため、リサイクル機器試験施設(RETF)の建設工事を行い、現在、試験棟建屋工事およびこの工事に関連する内装設備工事までを第一期工事として終了しています。今後は、「高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)」の結果と整合性を取りつつ、次世代の核燃料サイクル技術開発の国際的中核施設として利用していきます」

(※4)
金正日の特別指示で党幹部らを対象に行われたという講演の録音テープが元だという。講演は2006年12月以降としていた。

(※1)