もんじゅ視察報告 その2

 高速増殖炉、もんじゅは現在、外部有識者による「安全性総合評価検討委員会」が安全性を検証している。7月31日に委員会が開かられたが安全性の結論は出されていない状況だ(中日新聞2012/8/1)。視察のさいにも、福島第一原発の事故を受けて、安全性を再確認しているが福島第一原発のようなことは起きない、電源車も確保していると説明されたが、もんじゅに実際に入ってみて感じたのは、本当に大丈夫なのかとの不安だった。想定外で事故が起きてしまった以上、そう簡単に結論は出せないと思う。
 そして、もんじゅを止める止めないを決定することは必要だか、その前に現場の人のことを思うことも重要だと思った。


 説明によると福島第一原発などの軽水炉(水で冷却する)は、最終的に海へ熱を逃がすため複数の設備が必要で電源が必要になる。しかし、もんじゅはナトリウムで冷却しているため、空気で冷やすことが可能であり電源がなくでも熱を冷却できる。主要施設は海面から21m以上の高さにあるため、福島第一原発のようなことは起きない。なおかつ、事故後、電源車を用意してあり高台に配置してあるとしていた。

もんじゅの安全性1もんじゅの安全性5

■地震は大丈夫? 地層には破砕帯

 しかし、福島第一原発の事故は、津波ではなく地震が原因で、配管が壊れた可能性があると指摘されている。そう考えると、熱を加えていないと液状にならないナトリウムの特性から、ナトリウムの配管にニクロム線を巻きつけて熱を保つことや熱交換器との間を複雑に走る複雑な配管構造(説明資料の図参照)を見ると、素人目にも振動には弱い、つまり、地震に弱いのではないかと思えてしまう。

 実際の配管には、二方向からダンパー(衝撃吸収装置)によって配管が支えられていたが、建物自体が損傷したらどうなるだろう。もんじゅが止まっている直接の原因は、この配管からのナトリウム漏れを考えると、巨大地震には耐えうるのか。そして、そうなった場合の被害、福島の事故以上の影響を考えると恐ろしさを感じてしまった。

もんじゅの安全性3もんじゅの安全性4

 もんじゅが建設されている地層には、破砕帯(帯状に砕かれた地層部分)があり周辺の活断層によって引きずられる形で動き建屋へ影響が出ると指摘されている。視察資料にも周辺に活断層があるとしていたが、安全性は確保されていると視察のさいには説明していた。だが、7月31日付読売新聞が、この破砕帯について自主調査も行うと報道している。調査結果を待たないと何とも言えないが、不安材料はここにもあるという状況だ。

もんじゅの安全性6

■ウルトラ警備隊基地

 施設内に入って感じたのは、ウルトラ警備隊本部みたいだな、とも思ってしまった。最新鋭の設備の秘密基地というイメージだが、今の時代から見ると、なんだか古さを感じてしまうからだ。最近の工場はコンピューター仕掛けでいろいろな装置が所狭しと動くイメージがあるが、ほとんどの場所に人は少なく、しーんとしていて、金属製の巨大なケースと複雑に伸びる配管と中央制御室を見ると原子力発電所というよりも、何かの工場のようだった。これは、先に視察した六ヶ所村の施設も同じような雰囲気だったので、原子力施設では共通なのかもしれない。

 
■想定外は大丈夫か

IMG_6450 炉の視察のさなか、菅前総理が担当者に向かって、ナトリウムの沸点を超えたらどうなるのか。格納容器が溶けてしまったらどうなるか、と質問していたが、そうはならない、という担当者との押し問答になっていた。そうはならない、と言われてしまうと、想定外のことが起きてしまった現実を考えると大丈夫なのかな、とも思う。あくまでも技術的な検証ではなく、素人の感想だが。
 また、もんじゅの研究が成功したとしても、高速増殖炉を実用化するには、さらに規模を大きくした実証炉を建設しなくてはならない。その実証炉を検証した後でやっと実用炉(商業炉)となるのだそうだ。実証炉の規模はもんじゅの5倍程度の規模。実用炉は2050年にというのが目標となっている。
 だが、建設する場所も決まっていないばかりか、もんじゅ自体が稼働していないことを考えると、この先の計画も先行きは不透明ということになる。実証炉にするさいには、もっと配管を短くしたい、熱膨しない材質にしなくてはならないとの説明もあったが、その材質はあるのかの質問には、革新的な技術が必要という答えだった。
 だから、もんじゅの研究が必要なのか、あるいは、革新的技術ができるまではできないとの意味だったのか確認はできなかったが、現状ではまだまだ課題があることは確かなようだ。となると、費用はまだまだかかることになる。

■動いていなくても一日5500万円

 もんじゅに費やした費用も課題と指摘されている。視察資料によれば、これまでにかかった費用は、9656億円。約1兆円だ。
 小林桂二さんによれば、この費用には燃料費や専用の燃料製造費などが抜けており、総額は1兆3000億円を超えるという。停止している現在でも、年間約200億円、一日当たり5500万円の費用がかかっている。原燃とは無関係だが、ゆるキャラが注目されている「もんじゅ君」によれば、これまでに2兆4000億円を使っているという。
 今後、実証炉を作るとなると3000~4000億円。実用炉で7000億円がかかるだろうとの説明だった。これは炉の建設費のみで土地代などは含まれていない。となれば、さらに必要なことも明白だ。

もんじゅの予算

■目的が変わっている

 今回の視察でもんじゅの必要性として強調されていたのは、高速増殖炉で使用済み核燃料のリサイクルができることだ。国内の原発で使われた使用済み核燃料をリサイクルして燃料とするので、高速増殖炉が実用化されない限りは、現在でも処理方法が決まっていない使用済み核燃料の行先ができないことになる。行先がないなかで、国内の原発には燃料があり、再稼働するかどうかは別としても、いずれは核燃料を処理しなくてはならなくなる。もんじゅの技術が確立していれば話は違うのだが、現状では実験用に稼働さえしていないのだ。

 高速増殖炉は、本来は使用した以上に燃料を生み出すという夢のような目標があった。しかし、そのことよりも、使用済み核燃料の処理をする施設との意味合いが強くなっていると今回の視察では受け取られた。しかし、その技術は確立されていないばかりか、多額の費用が動いていなくてもかかってしまっている。
 菅前首相は、視察の後の記者会見で、当初目的と異なってきている以上、原発をゼロにすれば、このもんじゅも必要なくなる。原発をなくし、もんじゅもなくすべきだ、との見解を述べていた。私もそう思う。

 しかしだ。ここで働いている人。研究者はどうすればいいのだろう。目的も変わってきてその先も不透明。そのなかで働く、研究をすることでいいのだろうかということだ。何よりも、モチベーションを保てるのだろうか。
 止めるとしても、決めた翌日から仕事や研究がなくなるのではない。この施設をどうするのかの新たな課題も出てくる。止めればいいと後先考えないで主張することは野党なら簡単に言えることだが、与党である民主党は止めたとしてもその後をどうするかの目標も設定をすべきだろう。止めろというのは簡単。その先を考えること。特に再生可能エネルギーによる電力がどこまで可能なのか。生活の利便性をもっとさげられるのではないかも考えていく必要があるはずだ。

 結局は、自らのライフスタイルの問題でもある。と改めて思った視察だった。そして、原発をどうすべきか結論をだし、その結論に基づいた目標設定と現実的なロードマップを今だから示すことが必要なのだとも思った。それは、国任せではなく、自治体から、国民一人ひとりからだ。この観点からは、自治体議員の役割はあり、重い責任を持っているはずだ。

 そして、いつまでも“夢”を見続けているわけにはいかない。現実を考え、決める時期になっている。今年、2012年は運転を再開する予定の年だからだ。

内部の写真撮影が許可されていないため、説明しにくいことをご容赦ください。

スローガン ←ナトリウム漏えいなどの事故が研究に大きな影響を与えているのだろう。この垂れ幕を見ていて、原発の可否だけではなく、施設で働く人や研究者の立場も考えてしまった

唯一、内部に入った“証拠”。線量計を身につけ線量を管理していた↓monnjyu 001