都型学童クラブの課題

 都型学童クラブ(学童保育)の問題点と課題と題した勉強会に参加した。主催は、東京の学童保育を充実させる会。学童クラブへの新たな補助金となったのが都型学童だが、その狙いは、保育園と学童保育との終了時間の差から来る「小1の壁」への対応と民間活力の導入。このことで、より利用しやすい学童にするというもの。しかし、現実には狙い通りとはなっていないようだ。

 


 都型学童クラブとは、国の制度に頼らない都独自の補助金制度。2010年1月にマスコミが報道されたことで公になったもの。保育園と学童保育との保育時間が違う(保育園は武蔵野市の場合、19時15分まで。学童は18時まで)ために「小1の壁」と呼ばれるギャップがあり、これを越えるためがうたい文句だった。
 だが、多くの保護者や指導員、民間事業者さえ事前には知らない状態で始まっている。マスコミ報道の後も詳細は不明で、同じ年の6月に実施要綱などが決まった。スピード感あふれる、というかドタバタで始まったと言えば良いのか分からないが、考えながら走り始めた制度だった。制度に影響があったかは分からないが、担当の課長と係長がこの年の4月に移動していたこともあった。
 また、補助金の対象は、民間のみで公設公営の学童クラブは対象としていないため、民間(社会福祉法人など)活力の導入も目的とされていた。

 制度は別の話として、実際にはどうなっているのだろうか。この日の勉強会では、実際にこの制度を使い学童クラブを行っている台東区と町田市、稲城市のクラブ指導員から現場の報告を聞いたうえて意見交換となった。

●台東区の例
 学童クラブは、区に24施設あり、15が社会福祉事業団(福祉法人)、他は民間事業者が実施。昨年7月に都型が導入された。それまで実施する話はなかく5月になってからの話しだった。
 職員は保育時間が延びることで正規職員は、早番と遅番のズレ勤務で対応。短時間勤務のアルバイトを補充して対応している。勤務体制は、正規とアルバイトの組み合わせ。子どもを一日通してみることができないことや職員同士の打合せ時間がすくなくなり、現場としては困惑している。保護者にアンケートをとったところ、利用時間が増えてよかったの声が多い。
 18時から19時までに保育時間を延長したが、利用しているのは1名程度。補助金が延長が前提のなので職員を常に二人配置している。他のクラブによっては利用が多いところもあり、20人以上というところもあるが、全体的には利用度は高くないようだ。
 夏休みなどは、朝を30分繰上げ8時からの開所にしており、朝の利用は多く20名以上いることが多い。
 朝の30分と18時以降利用するには、事前の登録と事前申請が必要。使用するしないに関わらず、育成料が月額1000円増える。

●町田市の例
 43の学童クラブがあり公立が6。指定管理者制度が34。他に民説民営が3クラブある。このうち、都型を申請しているのは29クラブ。夏休みなどの保育時間は、8時30分~18時が基本で、8時からの利用や18時~19時の利用は事前に登録し、事前申請で対応する。希望者がない場合は18時で閉所してしまうところが台東区とは異なる点だ。職員の勤務体制は台東区と同じ。
 延長利用は、月額2000円。朝の利用は多いが、夕方は毎日10名ぐらい。報告のあった学童は他のクラブに比べると多いほう。

●稲城市の例
 都型は、民説民営の学童クラブ一箇所のみで実施。マンションの一階で開設しているクラブで25名登録という小規模施設。朝、夜と2名程度が利用している。利用がなければ、延長はせずに閉めている。おやつは出していないので、子どもはおなかが空いてしまっている。疲れや寂しそうな雰囲気が見て取れる。延長分は別料金で月額1500円。
 市内の他の学童クラブは公設公営で、18時までの開所で「お迎え」が前提となっている。18時に「お迎え」がないと子どもを校門から出して帰らせることになるので、この民間学童に通わせてているという家庭もあり、一定の意味はあるようだ。

◆延長を利用しない理由

 夕方の延長利用者が少ないのは、19時に伸びたとしても仕事先から戻れず保護者が「お迎え」に行けないこと。「お迎え」が必須条件ではないとしても、19時過ぎの暗い中で1人で帰宅させるよりも、定時にほかの子どもと一緒に帰宅したほうがいいと考えるだろうから、利用しないだろうとこれまで私は考えていた。
 だが、町田市では19時でも「お迎え」が前提となっていないこと。台東区では定時の18時でも「お迎え」が前提となっていることを考えると、「お迎え」の問題ではないと思えた。では、利用者は少ないは何か。

 今回の例だけで判断はできないと思うが、多くの保護者は、延長料金がかかる、かからないかで判断しているように思えたしまった。朝の延長時間では、8時30分の前に子どもが学童に来てはいるが、登録していない(料金がかかる)から学童クラブ室に入らないようにと子どもに言い聞かせている保護者が多いというからだ。指導員としては入れてあげたいと思うが契約上はできず心の葛藤が起きているという。

 西東京市では、朝の利用が多く誰が申請をしているか簡単には見分けができないこともあり、朝の延長は別料金にはしていないとしていた。指導員をその分、加配していないとならないが、子どもにとっては、このような柔軟な方法のほうがいいのではとも思った。

◆都型学童の効果

 延長をすることで補助金が増えることになり、民間事業者にとっては収入増となり、民間活力導入となっているだろうか。

 今回参加した自治体の例では、運営事業者にとっては直接の収入増にはなっていないようだった。その理由は、都型学童の補助金増分は、自治体に入っているためだ。そのため、自治体としては学童への支出が減り財政的にはメリットになっていることになる。本来ではあれば、民間事業者へその分の補助金を増やすことになるはずだが、この日の報告を聞く限りでは、そのようにはなっていなかった。

 また、参加者と意見交換をしている時、ある自治体では、都型学童の補助金があるから民間事業者に学童をやって欲しいと打診したところ、自治体でやっている事業単価では低額すぎて、とてもできないと断られたとの話しがあった。自治体が、非正規職員だけで学童クラブを運営している場合、指導員人件費は、民間レベルと変わらないことが多く、民間事業者の“取り分”がないため参入のしようがないというケースだ。なんでもかんでも民間にすれば、物事がうまくいくと考えている人がいるが、現実をよく考えるべきということだ。

 話しは戻るが、都型学童クラブは、保育時間の延長され、利用がしやすくなり「小1の壁」を克服することが目的だったが、この日の報告を聞く限りでは、そうはなっていないと考えられた。おおよそだが、利用者の5%程度の家庭が登録するようだが、登録をする家庭は、そもそもから必要だったのであって、都型学童になったから必要になったのではないと考えられるからだ。
 とはいえ、否定はできない。保育時間の延長は、もともとあったニーズに対応しようとした制度と考えれば、納得はできると思う。

◆課題と問題

 そもそもを考えると、19時という時間だけが問題ではない。19時以降も必要な家庭は、少数かもしれないがあり、そのような家庭では子どもがどう過ごしているかを考える必要があるはずだ。
 22時まで子ども預かる純粋な民間事業者(公の補助金が入っていない)へ高額な料金を払って利用しているのか。もしくは、料金は払えず子どもだけで夜を過ごしているだろうか。労働環境とも関係するため、これですぐに解決する魔法のような施策はないと思うが、時間延長だけにとらわれず、子どもへの最善は何かを考えていくべきだと思う。本当に必要なら、もっと時間延長をすべき、他に最善策があるのかを行政だけでななく、保護者も本来は考えなくてはならない。

 都型学童クラブの当初目的には効果的とは思えないのが実情だが、民間活力導入かどうかは別課題として、そもそもは必要なことだったのだと思う。とすれば、課題と問題は制度ではないことになる。

 都型学童始まる時に、ある自治体職員とこの制度を使わないのかと話したことがある。その時は、都は思いつきで始めて、思いつきで止めてしまうことが多い。一度始めてハシゴを外されてら困るのでやりたくないのが本音、としていた。都型学童の本当の課題は、いつまで続ける気があるのかだろう。 

【参考】
東京都福祉保健局 学童クラブ事業について

都型学童クラブ新設 民間委託がさらに加速か

都型学童の可能性

都型学童クラブ 実施要綱公表 武蔵野市でも考えるべき