クラウドを利用した協働による公共サービス

 

 クラウドを利用した行政サービスが注目されているが、その先例となるマイアミ市の例を聞いた。どこの国も同じようで、事業費カットと人員削減がされるなか、どのように質の高いサービスを維持するかでクラウドを利用、さらに市民参加手法も取入れることにより市民からの評価も高いという。武蔵野市でも導入は可能だと思うが、市民の使い方によりけり、との前提がありそうだ。


 アメリカ・マイアミ市は人口40万人の都市。御多分に洩れず、予算削減が行政の課題で、IT部門で18%のカットと24%の人員カットが行われたという。この前提で、これまでと同じサービスがでいないかと考えついたのがクラウドだった。

 クラウドにすることで、行政が開発コストやハードを用意することが不要となり導入コストが下がること。対価は必要な時に必要な分だけを払えばよく、最大使用時を想定してサーバーなどを用意する必要がないためコストダウンになる。安定性、堅牢性も高く、メインテナンスも頻繁に行われるので専門の職員が必要ないこといこともあり、コストバイパフォーマンスが優れている。何よりも、災害時に市役所にあるコンピューターが使用できなくなってもシステムが利用できるメリットもあるといういうのが“ウリ”だ。

 マイアミ市が導入しているのは、Microsoft社のクラウド構築用プラットフォーム、Windows Azureを使用した「Miami 311」。
 311は市民向けの相談窓口の短縮電話番号のことで、このシステムはインターネットの地図情報を活用し、市民から受けた苦情や情報を地図に書き込み、対応状況や解決したかどうかが、誰でもインターネット上で知ることができるというものだ。

 電話だけではなく、パソコンからの連絡やスマートフォンで写真を撮って投稿し地図上に表示させることもできる。例えば、市内のある場所で不法投棄されたごみを見つけた市民が、その写真と位置を投稿すると地図に表示され、行政による対応がその後に投稿されていくというものだ。
 ごみだけではなく、街路灯、道路の穴、落書き、歩道の破損、街路樹が折れているなど細かな課題がまちでは発生するが、それを行政職員だけで見つけるのでは時間もコストもかかってしまう。市民からの情報提供を受けて対応することは今でも可能だが、行政の縦割りもあり、担当課へ割り振りする時間やコストが発生してしまう。担当課が違えば、同じ場所に複数の課が出向いてしまうこともある。そのため、地図に市民自ら投稿し(メールアドレスなど連絡先も描き込む)、行政職員がその情報を見て対応し、その情報を共有することで時間とコスト短縮ができることというシステムだ。

 市民にとっても、行政がどのように対応しているかが分かり、行政への信頼感も増すことにつながることになる。行政にとっても、どの課からも同じ情報を見ることが可能でどの場所にどのような問題が発生していくかが、担当課を超えて蓄積できることも可能になりまちづくり計画などの参考にもなる。クラウドを利用しているので、システム開発費やサーバーへの初期投資も不要だ。

 同じようなシステムは、ロンドン市でも「Love Clean Streets」として使用されている。今年7月のロンドンオリンピックを控えて、市内をクリーンにするために始めており、落書きが73%、不法投棄が53%減少し、住民満足度は31%向上したという結果が出ているという。システムの運用費は年間100万円程度で事務コストも削減されているそうだ。

 このようなシステムは、災害時の対応にも活用ができる。被災状況や避難状況などを投稿することで、市役所以外でも情報を把握することが可能で、広域行政(都道府県や国)でも把握ができることにもなる。
 
 クラウドを利用した市民と行政の協働による新しい公共サービスともいえる。

 このようなシステムは、武蔵野市でもすぐに導入は可能だろう。導入はしたほうがいいとも思う。ただ、実際にはどのような情報がどの程度、投稿されるかが懸念材料になりそうだ。例えば、ひとりの市民が、本来は行政が解決すべき課題ではないことを何度も投稿した場合はどうするか。愉快犯のように、ウソの情報を書き込まれたらどうするかがだ。投稿する側のモラルをどう考えるかがポイントになりそうだ。それでも、魅力はあると思う。

 (※ 内容は3月10日に開催されたカンファレンス、「震災復興とICT」と日本マイクロソフト社に伺った内容をまとめた)

【参考】
ASCII.jp マイクロソフト、参議院議員会館で「震災復興とICT」カンファレンス

下記はマイクロソフト社によるマイアミ市の事例紹介(生年月日のみ登録が必要)