行革のブラッシュアップ

 2012自体サミットでは、「パブリック・ガパナンス革命の現場」と出したセッションで「奈良市総点検」についての話を伺ってきた。仲川げん市長による事業仕分けのもう一歩先をやってみようとの発想で行なったのだという。これまでと同じという発想を変えてみる重要性と何かを一度やればそれで行革はおしまいではなく、行革手法のブラッシュアップも常に必要というだと思えた。

 奈良市総点検は、2009年に当選した仲川市長が自らのマニフェストに「新しい風を生活(くらし)に送り込む3大ゼロ宣言」にあった「不要な事業を廃止・縮小し、37億円の政策予算を生み出します」からマニフェストに基づく行革の推進として行われたもの。財政状況が「待ったなし」というほど悪化していたことが理由だとされていた。
 
 奈良市は市町村財政比較分析表(平成21年度普通会計決算)によると人口約36万5000人の中核市で財政力指数は0.79。経常収支比率が98.8%となっており、財政の硬直化が著しいことが分かる。
 仲川市長も、将来負担比率209.4%(中核市40市中39位) 、実質公債費比率14.1%(中核市40市中39位) 、外郭団体含む市全体の借入金残高が約3100億円もある。土地開発公社が購入し塩漬け状態の土地は、約214億円の簿価に対して実勢価格は約26億円しかないと見えない負債がさらにあり、増え続けた公共施設と外郭団体が増え続け18となっていることなど過去の放漫経営による負の遺産が大きいことから「待ったなし」だったとされていた。

 さらに、市職員が給料をもらいながら病気を理由に長期休暇を取得していた問題や職場の中抜け問題、公金着服などがあり、「不祥事のデパート」状態でもあったのだそうだ。

 そこで、マニフェストに基づく行革を行い下記のように行い、2年間の総額で約50億円という成果を生み出したという。

・事業仕分けによる見直し→約7億1600万円
・箱モノ事業の見直し→約25億6800万円
・市長任期中の退職金を廃止→1期3450万円
・補助金の廃止や人員削減など→約17億8000万円
・外郭団体の統廃合18団体→9団体

 行革の切り札となったのが事業仕分けだが、直接事業費が議論の中心になってしまうこと。奈良市には約1500の事務事業があるが、そのうちにできたのが2年間で92と対象とする事業数に限界があること。事業単位でしか切り込めないため庁内全体への波及効果の限界があるなどの課題が出てきたことから、人件費を含む見えない間接コストの洗い出しやすべての事業の見直し、部課を超えた横串の議論の必要性が認識されるようになった。
 そこで、

・財政担当課による査定方法の見直しによる予算査定力の強化
・事務事業評価シートに現れない間接人件費の洗い出し
・事業仕分けの対象にならなかった事業についても必要性やコスト削減の余地を再点検
・内部監査による課題を洗い出し、監査力の強化

などを行ない、真の行政フルコストを捕捉できるようにして、事務事業評価では現れないグレーゾーンのコストをあぶり出し見直すことで財源を生み出したという。

 さらに、各課へのヒアリングや職員からの意見提案を受け付け、職員全員参加による無駄の洗い出しを行なったとされていた。その結果、次のような例で削減すべき業務と強化すべき業務に見直しを行い組織や権限、人事制度等を見直したとされていた。

《削減すべき業務》
■住民対応業務( 電話・窓口対応)
・件数、業務量が多く、残業や嘱託職員で対応している。内容的には必ずしも市職員が対応しなくても良いものもある。
・内容に応じて、問い合わせ対応窓口が各課に分散している。

⇒特に定型的な業務については集約して民間委託を検討

■予算策定業務
・予算要求・査定車務自体に膨大な事務量が発生
・予算重視・手続き重視のためVFM(バリュー・フォー・マネー)を基調としたマネジメョ・サイクルが機能していない

⇒予尊から決算重視へのパラザイムシフトと仕組みの変更が必要

■間接業務全般
・物品などの調達が各課ごとによる発注し契約しているため単価が高いケースが発生
・旅費、給与計算などを各課で実施しており事務コストが上げている
・データの分散、非連携など業務効率を阻害しているITシステム

⇒業務の簡素化、集中化、ITの高度化による業務効率化

《強化すべき業務》
■債権管理業務
・債権が各課に分散しており、課によっては官理・回収に十分手が回っていない杭況

⇒機能、業務、人員を集約して税収最大化を図る。専門性の観点からは民問委註も検討すべき

■財務管理業務
⇒行財政管理の有効活用、売却、民営化などアセットマネジメントの考え方を導入

(アセットマネジメントとは、資産を最適な時期に投資を行い価値を高めることや取得、処分などにより最適な配置を行い利益の最大化を図る手法)

■福祉関連業務
・少子高齢化や国の制度改正などにより事務量が毎年増え続けており残業で対応している

⇒増え続ける福祉需要に対応するため、現場対応だけではなく今後の戦略を立案できる人材も考える

■内部監査業務
⇒VFMの最大化の観点で評価、監視を行い庁内のPDCAサイクルと資源配分を機能させる

★仲川市長は、事業仕分けの功罪について話されていたが、市に寄せられる声は偏っており、一部の人のための事業を切り込めたこと。財政や監査がいかにいい加減であったかが分かったことが功で、罪としては、行革をやった振りができること、と話されていた。まさにそうだな、と思えることだった。
 また、すべての事業に実施できないなど限界もある。そのため事業仕分けの一歩先をやってみようと考えたとされていたが、これが行革のひとつのポイントとも思えた。

 事業仕分けを行なった自治体のなかには、一度やったことで終わってしまう例もある。行革をやったというパフォーマンスだけに使う例、実際にナタを振ろうとしたら内部や外部からの抵抗で頓挫してしまうなどがその理由と思えるが、事業仕分けが目的化ししてしまっているような例だろう。奈良市の場合は、実施した以上にさらにブラッシュアップしたということになる。何事にの完璧はないのだから、この発想は大いに参考になった。

 また、予算策定力を強化したことについて、財政課は自らが正しいと思い込んでいるエリート意識が課題の根底にある。査定の目の粗さを客観的に洗うことが必要だった。毎年何%カットという行革では、行革のルーチンになり効果を生み出しにくいとの発言も参考になった。行革自体が目的化してしまい、やっていることで満足してしまうということだろう。そもそもでいえば、行革は日頃から業務をチェックできるようにしておけば、本来は必要がないことだからだ。

 いずれにせよ、何ごとにも完璧はない。行革も何かをやれば終わりではないということ。常に見直しを続けるという意識改革がもっとも重要だと思ったセッションだった。

【参考】
奈良市 行政経営課