大阪維新から考える“チーム橋下”の戦略と発想

「大阪維新から考えるー“チーム橋下”の戦略と発想ー」をテーマに大阪維新の会政策特別顧問で慶応大学総合政策学部教授の上山信一さんの話を伺った。上山教授は、テレビによく出演しているだけあって、話し方が上手く主張も分かりやすいもので、東京は豊かだから政局に結び付けたいとマスコミ等は考えている、との一言には考えさせられるものだあった。上山教授が考えた橋本市長の“戦略”も興味深いものだった。


 話を伺ったのは、フジテレビ報道局解説委員の安倍宏行さんが行なっている「リテラシー強化ゼミ」でのことだ。
 上山教授と橋下市長との出会いは、テレビ出演がきっかけだったそうで、現在は大阪府と大阪市による府市統合本部の特別顧問(前大阪維新の会政策特別顧問)ということもあるが、市役所だけではなくメールでの相談が毎日のようにあるという関係とされ、橋下徹と喧嘩しない唯一の学者とも言われているのだそうだ。

 橋下戦略については、大阪を知るものでないと分からない。上山教授は、大阪生まれで、大阪で育った。大阪を変えたいというインセンティブは、自分のまちと思うからだ。東京で考えるのとは違う、との話も興味深かった。
 大阪と東京を比べてみると、所得は若干ではあるかもしれないが東京は上がってきている。しかし、全国平均はゆるく下がっている。大阪はかつて全国2位だったが、著しく下がり今では愛知、神奈川よりも下で全国平均と同じ。タイヘンな状況にある。失業率もは、全国平均よりも高く、関西でもっとも悪い。大都会で悪いのは大阪しかない。生活保護の伸びも急に上がってきている。ホームレスも多い、犯罪も多い。女性の就業率も奈良の次に悪い。離婚率が高く、離婚しても仕事がないと生活保護になる。学力も低い。貧困の再生産になってしまう。だから教育にうるさい。しかも、急激に悪くなってきている。そんなトンデモもない状況だからトンデモない橋下が出てくる。維新もできた。
 さらに歴史的な背景もある。2015年に大阪都へ移行と主張しているが、この年は大阪夏の陣から400周年。憎き徳川、東京に負けた屈辱記念日から400年ぶりに独立しようと本気で考えていることだ。
それに、その昔、大阪は自由都市だった。だから離脱しようとの考えもある。今、税収は国に7割は持っていかれるような状態でしかも右肩下がり。しかも規制が多くがんじがらめで不幸になっている。このままでは日本国にいる意味がないだろう。規制緩和や免税特権が欲しい、そういうビジネスモデルを作るのが狙い。そのためには、外にでることが必要で空港が重要になる。空港は夜中でも使える空港でないとダメだ。物流都市にするには、市と府が対立でできない。まるで旧東ヨーロッパ状態だ。どうしたら独立できるか。戦車ではなく選挙と考えているのが維新の会だ。上海が憧れだ。ダイナミックに動くソウルもそう。規制がありすぎで自由にできない日本国のことはどうでもいい、シンガポールがうらやましい。これらのことは、大阪の衰退対策でもある、との趣旨の話だった。

 また、橋下流の政策の進め方はマスコミを使うことに特徴のひとつがあり、よく橋下市長のぶら下がり会見での発言がマスコミで取り上げられるが、あれが会見でポンと出すことで世の中の反応を見て、ブレーンに相談し、さらに職員の反応を確かめるために行なっているもの。実は職員への指示でもある。一般的な行政の審議会を一年ちかくかけてやってから、それからまとめて考えるという手法とは違い、記者会見からその反応で考えるまで6時間でやってのけているというものだ。これは発想が逆の流れ。ただし、発言が常にそのまま動くとは限らず、軌道修正もある。
 このようなことは、ベンチャーやオーナー会社ではみんな同じようにやっていることでソフトバンクなどではツイッターを社員が見ながら対応しているほとだ、との橋下市長の手法についても話されていた。
 確かに王道的な行政手法とはまったく違うものだ。スピード感、ダイナミックに動くという点では見習うべきことかもしれないと思う。とかく何を考えているか分からない、ことなかれでスピード感がないと行政手法への批判があるがこのような手法もあるのだな、と思った。ただし、誰にでもできることではないだろう。言葉という武器を持つ橋下市長だからできることかもしれない。
 
■なぜ大阪市か

 大阪府知事から市長に橋下氏が転進したことについては、大阪では市長のほうが偉い。これは小学生も知っている常識だ。大阪市は府の面積の面積は12%でしかないが大阪のGDP54%は市。あんこの皮とあんこの、どちらがおいしいかを考えれば分かりやすい話。大阪市と府を比べると、警察と教員を除くと市のほうが職員が多く職員の給料も高め。借金も多い。一方で地下鉄など収益源も持っている。大きな政府のまちが大阪市、と改革を必要性がより高いと話されていた。
 また、よくある疑問への答えとして、国政を考えるかについては、国政までは考えていない。どの政党でも関係ない。自治法を改正してくれればいい。なぜなら地域政党だからだ。既成政党のすりよりはありがたい話。地方自治法改正してくれるのは全員友達、反対は敵だ。反対している人は落とす。刺客を送らないほうがいいとは思っているが、刺客を送り込むかもしれないし刺客が集まって政党になるかもしれない。
 日本国このままじゃいかんと橋下は言っている。内政の問題に気が付くことも多い。でも、日本国の単位では考えていないだろう。今の国の制度では機能しない。あんなでかいものはコントロールできない。ダウンサイジングしたほうがいい。国政の泥舟の船長にはなりたくないだろう。
 対立ではなく、仲良く協議しないのはなぜか、については、いつも良くするには、どちらかを消せばいい。大阪府と大阪市に首長が2人と議会が二つあると4つが同じ方向を向かないとできない。議会の廃止はありえないから府か市を廃止すればいいだろう。
 統合で巨大な都になるといわれるが、民営化を進めるので巨大にはならない。区長や区議会のコストは増えるかもしれないが、市の職員を減らすほうが効果的でこのくらいのコストは関係ない。
 都構想ですべてが解決するのではない。突破口だ。少なくとも財源は出てくる。実験的な要素もあるが、みんな状況が悪いから好転することもある。東京は困っていないのだから、文句言わないでよと言いたい。借金を減らす唯一の手段は税収を増やすしかない。公務員が多いの減らしていけばお金は浮いていく。
 東京都の制度は理想ではない。どうでもいい、手本にはしない。将来的には関西州があるかもしれないが、大阪が正常になってから考える。他の政令市の問題をどうするかについては、どうすればいい。自分で考えろ。
 言いたいのは自治法の改正だけ。住民にとっては不幸をなくすようにしたい。今は異常事態。成長戦略とはいうが現実はシビア。東京では分からないだろう。東京は豊かだから、すぐに政局に結び付けたがる…。

     ◇

 上山教授の話は、それこそテレビを見ているように次から次へと話題が変わり、歯切れのいい見解を述べ、あっという間に時間が過ぎてしまった。そのなかでも気になった発言に、現状の大阪市の問題として、議会、議員もあるとしていたことがあった。
 議員は基礎自治体で住民に向き合っているとはいうが、いざ道路を延ばすと夜眠れないという支持者がいるから反対する。高速鉄道を作ろうとすれば、自分の選挙区に駅を作れという。広域行政で考えるべきだとの発言があったことだ。大阪維新の会のサイトにある都構想への疑問についての回答にも『府のあり方にも改善の余地はある。だが大阪市のほうは政治体質に致命的な限界がある。大阪市政は、24区の中選挙区制で選ばれた議員(わずか3千票強で当選する人もいる)が率いる典型的な田舎の利権政治である。古臭い選挙制度が、狭い地域の目先の利益を追求する政治家を生んでしまうのである』ともある。議員がどうあるべきかも、じつは大阪都構想にはあるのだと分かり考えさせられた。これは大阪だけの問題ではないはずだ。

 上山教授の話し方は、分かりやすく言い切り型で、このような話をされてしまうと、つい、そうだよなと納得してしまい支持をしたくなってしまう魔力がある。言葉による説得力は政治には重要であり、発信力は大きな力になると驚かされた勉強会だった。大阪都構想については、維新の会のサイトに詳しくあるのでご参照いただきたいが、かなり現実的な話で、指摘されるように東京では理解し難いかもしれない。自治のあり方としても、もっと、深く考えてみる必要があるとも思った。

【参考】
大阪維新の会
上山信一@”見えないもの”を見よう