長期計画条例 決議が付き成立へ

 9月議会に上程され継続審議となっていた武蔵野市長期計画条例の審議が11月17日の市議会総務委員会で行われた。長時間の休憩時間の後、採決が行われたが、条例については全会一致で可決し12月の本会議で成立する見込みとなった。しかし、条例文の解釈に委員の間で違いがあったことから今後の運用で違いが出ないようにとの決議が出され、全会一致ではなく賛成多数での可決になった。

 長期計画は、一般的には総合計画と呼ばれるもの。昨年までは地方自治法により自治体には基本構想を定め議決を行い、この構想によって計画的に自治体運営を行うとされていたが、地域主権、地方分権の考え方から国が一律に決めるものではないこと。実際には、『コンサルタント委託の金太郎飴的な夢プランであったり、企画課の作文であったり 、形骸化して存在感を失っている』(※)ことから2011年8月から法による作成義務付けがなくなっていた(地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号))。そのため、武蔵野市として長期計画が必要であり、基本理念部分(従来の基本構想)には議会の議決が必要との考えから提案された条例だった。

 条例の審議でポイントになったのは、条例文に書かれている用語の定義。何を示しているかが文だけを読むだけでは分からないと考えられたことだった。
 例えば政策という用語。日常的にも使われるが、理念なのか、一つひとつの事業を示すのか、それとも事業を束ねた施策なのか、実は定義をするとなるとあまりにも幅が広い。それを条例文に入れるのだから、どこまで何を示すのかの定義が条例文書だけでは全く分からなかった。また、議会が議決範囲も言葉だけでは理解ができないものだった。
 答弁ではこれまでと同じとしていたが、これまでのことを知っている人は分かったとしても、人が入れ替わった場合や将来の人が条例文を読んで理解できるのか、と考えた場合分からないのでないか。当初想定してこととは別な解釈ができてしまうのではないかとも思えた。
 そのために、より詳細に規定する要綱や規則を示してもらい確認をしたかったのだが、その資料も当初は示されなかっために9月に委員会では継続審議となっていた。

 2回目となる11月の審議では、資料として規則の考え方、長期計画の概要図が示されたため、おおよその定義は理解できるようになった。これは継続しなければ示されなかった資料で、このような資料さえ出さないで議決を求めること自体に課題があると思う。このことについては、私以外の委員からも是正を求める意見が出されていたほどだ。5tyou_ページ_2
 
 委員会では資料の説明の後、言葉の定義がある程度明確になったことから条例文の用語の定義、解釈についての審議となった。
 私からは、まず、条例とはをそもそもを考えると、市民や団体(市も入る)の権利を制限したり義務を課す(税金など)ことが可能となるため、余計なこと書き込まずできるだけシンプルにすること。そして、解釈に違いが出ないように作成すべきだと思うと考えかたを聞いたところ、市も同様の前提としていた。
 そうであるなら、なぜ、条例文に「なければならない」、「するものとする」、「努める」と用語が異なっているのか、「すべて」、「特に」という言葉が入るのかを質問してみた。

「なければならない」、「するものとする」、「努める」のそれぞれの用語は、条例の解説書によれば、義務付ける度合いが強い順になっており、これまでの策定方式をそのままに条例にしたとすれば、同じ度合いの用語にすべきではないかと考えたからだ。
 武蔵野方式は、市民参加による策定委員会に最大の特徴があることだと考えていたが、条例文では強い位置づけではないように読み取れてしまう。また、実際の個別計画(福祉総合計画や子どもプランなど)は、長期計画を内容を「努める」とすることで、より緩やかになっている。長期計画が武蔵野市の個別計画の最上位とするのなら、なぜ“縛り”、規範性を緩めてしまうのか、と思う。

 今回の審議で最も解釈分かれた2条の4項には、「すべて」「特に」という用語が使われている。そのため、法的な効力が増すのか、必要性はあるのかと質問をしたところ明確な答弁はなかった。つまり、この用語を入れることにより効力が変わるというものではない。たんに“国語的”に意味を強調するために使われるているのだろう。実際にこの文を読めば、よほどのことがない限り、新たなことはしないと読める。これまでに示されている第五期長期計画案にも同様のことが書かれていることを考えれば、かなり強い“縛り”、規範性を持つ条例を作ろうとしていることになる。このことで、市民からの要望や議会からの提案があったとしても、財政や長期計画に根拠がなければやりません、と執行側としては言えることになるはずだ。

 このことはひとつの考え方だ。今後の税収減を考えれば今までと同じように市の運営を行うわけにはいかず、事業全体を減らしていくマイナス型の計画にならざるをえない。災害などの特例はあったとしても、当初考えた事業以外はやらない、思いつきの事業はやらないとすることで、財政規律を保つには有効になる。そのことを広く市民や議会がが理解する、何よりも長期計画(総合計画)は、行政のためではなく市民全体の計画と位置付けておくことが前提のうえでの条件付だが、私もそうすべきだと考えている。
 しかし、答弁では、たいていのものは探せば長期計画に根拠があり、今までもできないことはなかったとしていた。“絵に書いた餅”しないのが武蔵野市の長期計画だとすれば、規範性が薄れてしまうことになり、長期計画の存在は何なのかとも思ってしまった。

5tyou_ページ_1 他にこの日示された資料に、条例の施行にあたっての考え方があった。ここには、法定受託事務を除くとしたあり例外規定を持っているとが分かった。そのため、規則より上位の条例で「すべて」と書き込んでしまうことで規則の意味がなさないのではないか。政策の範囲の規定が条例にないため、個別の事務事業までを含むことと解釈されないかの疑問が出てくる。基本構想の策定義務を削除した地方自治法改正案には、 法定受託事務についても、国の安全に関することなどを除き、条例で議会の議決事件として定めることができるとされたことへの影響もあるはずだ。
 さらに、条例文には『後期5年を展望計画とする』との一文があるが、これを調整計画として読み替えることにしているとしていた。としているのであれば、条例に使わない用語を使うべきかの疑問も出てきてしまう。実行計画部分を時代の流れも反映させて見直すのは当然だが、見直すのが前提なら、当初から前期実行計画、後期実行計画などとすればより分かりやすいのではないだろうか。

 このように細かいことかも知れないが、条例文を読むだけで疑問点が多く出てきてしまった。審議のなかで明らかになったことも多いが、説明を聞かないと分からないのでは条例としてどうなのだろうと思う。何よりも市民が見ただけで分かるのかと思う。
 これらのことを考えていくと、できるだけシンプルにするとの原則から修正が必要だとの私の結論にはなった。しかし、修正は必要ないと考えている会派との協議があり、結果としては現状の条文で賛成し、その後に提出された付帯決議に賛成することなった。
 疑問を持ちながら賛成したのは、現在、第五期長期計画を策定中であり、これ以上遅らせるわけには行かないという現実的な判断からだ。長期計画が目指そうとしていることは理解しているつもりだし、条例は修正ができるものだ。より不都合なことが明確になった時点で考え直す、それも、議会が自らでと考えた結果だった。
 長期計画が本来目指していること、それを市民、議会に分かりやすく示すこと。条例により明確にすべきだ。課題は残ったと思うが、まずは、目指すべき武蔵野市の将来に向かって長期計画を基本として進むべきだ。それも、行政任せではなく、議会としても。

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●決議文

条例の運用にあたっては、本委員会における議案審議の内容を踏まえ、規則等の作成において、文言の解釈に疑義が生じることのないよう努められたい。
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●武蔵野市長期計画条例

(目的)
第1条 この条例は、武蔵野市( 以下「市」という。) が市政に関する長期的かつ基本的な計画を策定することにより、市の目指すべき将来像を明らかにするとともに政策資源の有効活用を図り、もって総合的かつ計画的な市政運営を推進することを目的とする。

(長期計画)
第2条 市長は、前条の目的を達成するため、武蔵野市長期計画( 以下「長期計画J という。)を策定するものとする。
2 長期計画は、市政運営の基本理念、当該計画期間に実施すべき政策、財政の見通し等を定めるものとする。
3 長期計画は、10年を1期として定め、当該計画期間の前期5年を実行計画とし、後期5年を展望計画とする。
4 市が実施する政策は、すべて長期計画にその根拠がなければならない。ただし、速やかな対応が特に必要と認められるものは、この限りでない。

(実行計画の見直し)
第3条 市長は、市長選挙が行われたとき又は市政をめぐる情勢に大きな変化があったときは、実行計画の見直しを行い、新たな実行計画を策定するものとする。

(市民等の参加)
第4条 市長は、長期計画の策定又は前条の規定による策定( 以下「長期計画等の策定」という。) を行うときは、市民、市議会議員及び市職員が参加する機会を確保しなければならない。
2 市長は、長期計画等の策定を行うときは、策定委員会を設置するものとする。

(議決)
第5条 市長は、長期計画の策定を行うときは、長期計画のうち市政運営の基本理念及び施策の大綱について、市議会の議決を経なければならない。

(市長の責務)
第6条 市長は、長期計画に定められた政策の着実な実施及びその状況の管理を行わなければならない。

(他の計画との関係)
第7条 市長その他の執行機関が分野別又は事業別の計画を策定し、又は変更しようとするときは、長期計画との整合性を保つよう努めなければならない。

(委任)
第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

付則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 この条例の規定は、この条例の施行の日以後の日を始期とする長期計画について適用する。

(提案理由)
総合的かつ計画的な市政運営の推進を図るため、武蔵野市長期計画について条例を制定するものである。
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画像は総務委員会資料

※北海道町村会法務支援室のサイトにある福士明札幌大学法学部教授による「自治体法務入門・政策実体論総論(1)自治基本条例と総合計画」より転載。元文は『桑原隆太郎「自治体総合計画の進行管理システムに関する一考察」フロンティア180第23号(2000年)』。