カルチャーショック? 安城市事業仕分け 

8月20日に行われた愛知県安城市の事業仕分けに仕分け人として参加したが、これまでとは違い、一種のカルチャーショックを受けたきた。それは、仕分け自体は、税金の使い方が正しのか、効率的なのかを論点にしていたのだが、判定人となる市民の方々の意識がこれまでとは違っていたからだ。これまでの私の経験で判断すると、仕分け人よりも市民判定人が厳しい判断を下すことが多いのだが、安城市の場合は逆に増額すべきとの意見が出るほどだったからだ。

■財政力指数 全国12位

 安城市は、トヨタ自動車関連の事業所が多いこともあり財政的には裕福な自治体だ。財政力指数は1.49で全国の市のランキングでは12位(生活ガイド 行政データランキングより)となっている。
 しかし、昨今の経済状況から税収が減ってきている状況もある。市が公表している「予算規模と市税収入の推移」の市税収入を見ると平成20年度の約382億円に対して21年度が335億円、22年度が約308億円(いずれも千万単位を四捨五入)と減り、22年度の市税収入は20年比マイナス74億円という状況だ。一般会計規模が約500億円~600億円という安城市の財政規模を考えると歳入の1割以上が減ってきているという状況だ。
 さらに、昨今の円高も考えれば、自動車産業を含め経済状況は簡単に好転するとは思えず、今後、税収が増えていくとは考えられない。つまり、市財政は今後右肩下がりとなっていくことが容易に想像ができ、今までと同じような事業を市が行ってことができないのが現在ということになる。

 そのこともあり、神谷市長が選挙の公約に掲げ、市民も現状のままの行政サービスでいいのかを考えてもらうために事業仕分けが行われたのだろう、と思った。しかし、全員というわけではないと思うが、その財政状況が伝わっているのかと思えたのが市民判定人による結果だった。

 この市民判定人というのは、事業仕分けを築いてきた構想日本からの仕分け人(私は構想日本からの派遣)と市民から選ばれた仕分け人などが仕分けの議論を行い、この議論を聞いて不要や見直し、現在のまま継続、あるいは増額などを判定する市民の方々のことで、仕分け人だけではなく、当事者である市民が結果を判定するシステムで最近の事業仕分けでは主流になっている方式だ。

■対象者が使いにくい事業。赤字が増えるばかりの事業

 財政状況について伝わっているのだろうかと思った特徴的な事業は、私の入った班で仕分けした事業で言えば、市民保養事業とコミニティバス事業だった。

 市民保養事業は、市民が旅行をすることでリフレッシュすることが目的で、旅行代金の一部を市が補助するというもの。しかし、利用率は対象となる市民の16%でしかなかった。
 仕分けの議論のなかで明らかになったのは、対象が市民税を滞納していない人とされているため、市が確認するために旅行の前後二回、書類を市役所まで提出しなくてはならず、手間がかかることだった。これでは、仕事などで忙しくリフレッシュを必要としている人が使えず、時間に余裕がある人が使えることになってしまう。市では、旅行代理店でも代行できるように改善したとしていたが、今の旅行の多くはネットで予約などを行うことが多いのに、ネットは対象外ともなっていた。

 つまり、現状のシステムでは市民全体の税金を一部の人だけ、時間的に余裕がある人が使いやすいシステムになっている。市民全体に保養が必要なら全員に旅行券を配付したほうが公平になるのではないか。何よりも市民に保養が必要と判断したのであれば、事業のシステムをゼロベースから組み立てなおすべきと構想日本からの仕分け人は全員が判定。全体としてもゼロベースで見直しとなったのだが、市民判定人のなかには増額すべきととの意見があったからだ。

 あんくるバス運行事業(コミニティバス事業・武蔵野市でのムーバス)は、市内の一部区間で行われているが、運行されていない空白地帯があり、市民要望もある。バス交通は社会資本と考えているので、交通弱者対策としても必要と市は判断しているので全市で行いたい、との前提での仕分けだった。
 社会資本として必要と市が判断したのであれば、それはそれで尊重すべきことだ。しかし、問題はその手法ではないか、というのが仕分けの議論の中心だった。
 それは、乗客一人当たりの事業経費が現在420円かかっているが、バス代は100円。赤字分の320円を市が補填するというのがこの事業のあらあらの事業構造となっていたからだ。つまり、事業を拡大すればするほど、赤字が拡大していくことになり市の財政を圧迫することになる。このことを考えると、必要な人が利用する時だけに運行をするオンデマンド方式にする、バスの初期投資やランニングコストが少なくて済むワンボックスタイプにする、タクシーを利用する、NPOと協働した移動システムを考える、何よりも100円でいいか考え直すことも必要となる。
 となれば、コミニティバス事業をゼロベースで考え直すことが必要となるのだが、これも市民判定人には伝わらなかったように思え「要改善」となっていた。

■事業仕分けは気づきの道具

 今あるサービスは、現状かもっと増えて欲しいと思うのは市民とすれば当然のことだと思う。でも、その先がどうなるのか。市民が自ら考えるべき時期ではないか。「囚人のジレンマ」の例え話も思い出したのが安城市の事業仕分けだった。
 赤字事業を拡大し市全体の財政を悪化させるのもしないのも、最終的には市民や議会の判断となるので他自治体の住民が良い悪いとは言い切れないが、今回の事業仕分けが将来を考えるきっかけになればと思う。

 私は2日間実施されたうちの1日目だけの参加だったが、他の仕分け人と話をしていると、安城市は財政が良かったため、今後も続くのだから市民サービスはより増やすべきと思い込んでいる市民が多いのではないという意見で一致した。これからの課題を市民と共有していくことが安城市には求められているのだと思う。
 他自治体の事業仕分けでは、市職員が将来の財政への意識が薄いことがあるのだが、安城市では職員の方がこの問題意識を持っていたのが特徴であり優位な点だと思う。市民にも財政見通しが伝われば、より事業仕分けの意味が分かり、市政はよくなると思う。破綻寸前の自治体とは異なり、安城市の財政状況はまだまだ余裕がある、今から考え直すことでいい未来が切り開けるはず、と思った。
 また、同じことが武蔵野市でも考えられないかとも思った事業仕分けだった。
 

【参考】
安城市 事業仕分けの結果
安城市 市長のページ 安城版・事業仕分け