これからの高齢者住宅

 現代都市政策研究会の例会で園田眞理子明治大学建築学科教授から居住のセーフティネットの視点から高齢者の住まいについて話を伺った。高齢者というと介護と思い浮かべてしまうが、住宅=住むところが大きな問題になる。これは、これからの若者も同じになっていくという指摘でもあった。

 寿命が延びたことや単身者が増えたこと、少子化を考えれば、特別養護老人ホームや高齢者専用住宅を作るので財政的に限界があるのは確かだ。そのため提案されていた「高齢者ペンション」は非常に興味深いものだった。

 園田教授は、今の日本が今まで何が変わったかといえば、産業構造の変化、寿命が延び少子化であるため子育て期間の減少などの社会変化に加えて、世帯、家族が変わったことが大きい。20世紀の大前提は、二人以上で住んでいることで、住宅施設といえば単身者の寮か家族しかなかった。しかし今、東京で最も多いのは単身者。子どもがいてもシングルの家庭も増えているため、単身世帯の住宅を考えなくてはならない。

 昨年、消えた100歳の話題があったが、これは“すでに起こった未来”だった。年金パラサイトとも言われたが、今の人の年金はあてにならず、正規雇用もない。正規でないとクレジットも組めないから住宅を得ることもできない。結果として住宅を持ち年金が出ている親を当てにせざるを得なかったと指摘され、年金問題だけではなく住宅問題が実はこれから大きな問題になると指摘されていた。
 
 これまでのように病院のような高齢者施設(1989年ゴールドプランモデル)を作るのでは、一床あたり1000万円がかかってしまう(東京では2000万円との指摘もある)。このような施設は、20世紀型であり、高コスト、低負担、低ベネフィットといえる。
 そのため、中コスト・中負担・中ベネフィットとして2010年高専賃モデルが考えられてきたが(※)、これでも一戸あたり1000万円の建設コストがかかってしまう。これからを考えれば、コスト面からでも行き詰る。これはグループホームでも同様。

 そこで、解決策案として共助型高齢者ペンションを提案しているのだそうだ。ひとりあたり30平米程度の個室でキッチン付き。昼間は管理人が常駐して入るが、入居者は個室で各自で生活し夕食だけは一緒。運営は近隣の主婦などがNPOとして担い、入居者も近隣の人とすれば地域で済み続けることにもなる。NPOの代表を開業医がしている例があり、最後には医療が必要になることを考えれば、このようなことがベストとされていた。

 このペンションの考え方は、高齢者になり課題となる見守りや食事、家事など介護保険で対応する範囲以外が必要になってくるが、コストもかかるので共同にすることで対応しようという考え方だ。現在ではこのようなことは家族が対応するか施設に入るしか選択肢がないが、単身者ではできないことや高齢者でも格差が広がっており(※2)、施設入所できない高齢者への対策にもなるとされていた。

 ペンションとはいうものの中古マンションのいくつかの部屋を使うことや高齢者用のアパートのような施設でも可能だそうで、いわば大型施設ではなく、小規模な施設でよく、既存の家屋のリフォームでも対応はできる。上層階を一般住宅にして低層階をこのような施設にする集合住宅や自治体の土地を貸して、社会福祉法人やNPOに運営をしてもらうなどもできるとされていた。

 そして、このような規模の施設を高齢者の生活範囲でもある中学校区単位で作っていけば、家を移ったとしても地域で暮らすことになる。地域の雇用、経済にもつながるとされていた。

 今後、団塊世代などが段階の世代が、勤労から需給世代となり高齢者はもっと増えていく。このような施設で住まいを考えるべき。タイムリミットは5年もない、との指摘には考えさせられるものだった。

※ 施設経営には、医療・介護・食事・見守りと土地代、建物の固定費が必要だが、医療と介護を外したもの。

※2 高齢者=弱者ではないく、同じ高齢者でも、経済格差が大きい。持家(有資産)か借家、さらに、年金が国民年金か厚生年金などで分かれるという。

【視点】
 これからのことを考えれば、住むところは大きな問題だ。特養を作れ作れでは財政は追いつかない。家族介護で担うのでは家族の負担の大きいばかりではなく、家族がいない人はどうするかの問題もある。特に低所の高齢者への対応と考えれば、貧困ビジネスが広がってしまう懸念もある。
 そう考えていくと、重度の人は施設となるかもしれなが、ある程度までは共同生活することで見守りや食事などのコストを下げることで低所得の高齢者でも住まうことができるようにしていくことは必要になるのだと思う。これは、高齢者に限った問題でもないはずだ。

 ただ、気になるのは、そのような施設が広がるのかということだろう。民間任せでは、そう簡単には進まないはずだ。呼び水となるように行政の関与が重要になると思う。特に地価の高い武蔵野市ではと思う。
そして、もひとつは、家に固執してしまう日本人の意識を変えられるか、だと思う。家屋は持っていても所得のないという高齢者の話しをよく聞く。武蔵野市でも、持ち家を子育て世代に貸して、高齢者用住宅に住んでほしいとの施策を進めているが、そう簡単には進んでいないようだ。意識改革をどのようにすればいいかも課題だろう。