死者は4000人ではなく100万人  チェルノブイリ被害実態レポートの翻訳プロジェクト 

 ロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士を中心とする研究グループが2009年にまとめた報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment)を日本語に翻訳するプロジェクトが進められている。
 チェルノブイリ事故について、国連、IAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機構)などは「直接的な死者は50人、最終的な死者は4000人」としているが、この本では、事故の起きた1986年から2004年までに98万5000人が亡くなっている」と指摘しており、『これは史上最大の嘘の一つ』(※)なのだそうだ。



 チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクトのサイトには、最新記事として暫定訳が公開されており、興味深い内容が記されている。
 例えば、『チェルノブイリ事故による放射性物質の放出から22年を経ても、ベラルーシ、ウクライナ、ヨーロッパ側ロシアの高汚染地域では、放射能に汚染された土地の農産物の摂取を避けられないというまさにその理由で、一人当たりの年間線量当量限度(訳注1)は1ミリシーベルトを越えている。ベルラド研究所の11年間の経験により、子どもを放射能から効果的に守るには、子どもの介入基準値(訳注2)を公式の危険限界(訳注3)(すなわち体重1キロにつき15?20ベクレル)の30%に設定しなければならないことが明らかになった。ベラルーシの高汚染地域に暮らす人々の体内に蓄積されたセシウム137(Cs-137)を全身放射線測定機(ホールボディカウンター・訳注4 )で直接測定すると、年間被曝線量は、少なく見積もられた公式の地域被曝線量一覧の3倍から8倍に達するのがわかる』(第13節 チェルノブイリの放射性核種を除去する【要旨】より引用) などだ。

 このレポートは、5000以上の論文を基にされており、現場の医師などの意見を反映しているという。しかし、残念ながら邦訳はされていない。そのため、『私たちはチェルノブイリに匹敵する放射線被曝が日常化する時代を生きなければならなくなりました。“フクシマ後”の日本人がチェルノブイリ被害から学ぶには、その真相を知る必要があります』(『チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクト』に掲載されている作家・翻訳家の星川 淳氏のコメントから引用)として、翻訳作業が現在進められており、協力者も募集している。いち早く、翻訳されることを望みたい。

 また、チェルノブイリの彼我については過小評価が公式化されてきたが、実態ははるかに深刻という指摘も考える必要があると思う。被害が明らかになってからでは遅いのだ。

※本へ寄稿しているジャネット・シェルマン博士へのインタビューで司会のカール・グロスマン氏が述べた言葉。Youtube参照。日本語翻訳もあり)。インタビューでは、『IAEAとWHOの「談合の協定」』がありWHOは原発事故による健康被害を過小評価せざるを得ないとの発言もある(本にも書かれているのだそうだ)。