問題は砂場 境こども園新園舎で保護者と市が対立

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 7月1日に 平成25年4月の開園が予定されている「境こども園」の新園舎についての意見交換会が開かれた。「境こども園」は、市立境幼稚園を発展的に解消した後に予定されている幼保一元化の認定こども園。市の担当者と運営を担う市の外郭団体、武蔵野市子ども協会から新園舎についての説明が行われたが、境幼稚園保護者や将来的に入園したいという保護者からは、現在の砂場などを残して欲しいとの異論が相次いだ。

 境こども園の新園舎は図のとおり。これは基本設計段階のもので今年度に行われる実施設計で詳細が固まっていく予定だ。境こども園_ページ_2

 意見交換会では、新園舎の二階に財団法人武蔵野市こども協会の事務所があることから、境幼稚園の特徴でもある砂場や築山が削られてしまい、広い園庭が狭くなってしまう。今のこどもは体力不足が問題であり、走り回れる場所が必要。園庭を狭くしないで欲しいというのが参加していた境幼稚園保護者や将来に利用したいと考えている保護者の意見だった。

 園側(市担当職員、こども協会、保育士・教諭)の説明によれば、今の園舎はこどものことを考えて設計をした。特に4,5歳児は幼稚園タイプのこどもと保育園タイプの子どもの保育が必要となり広めのスペースが必要。図面では一階と二階にあるが、二階のスペースは昼間一緒に過ごすスペースで、幼稚園タイプのこどもが帰宅した後の保育園タイプのこどもの気持ちを切り替えるために、一階へ移る必要があるので一階のスペースも必要としていた。
 また、通園しないこどもたちも来ることができるスペースや相談スペースも考えてある。壁で仕切ったような図書室はないが、こどもには、オープンスペースのほうが良いと考えて図書コーナーを作るなどの説明もあった。

 園庭については、他の市立保育園と比べても広いが、今の広さは定員200名を想定していたもの(新園舎の定員は幼稚園タイプ46名、保育園タイプ61名の計107名)。新園舎を作ると狭くなるが、こども園では、現在行っていないような園外へのお散歩などを実施したい。砂場については、どのくらい残せるかは分からないが、園舎の設計変更などで対応できないか検討するとしていた。

 
【視点】
 保護者の意見と園側の説明と聞いていて思うのは、これまで、なぜ説明や意見交換の場を設けてこなかったのか、ということだ。現在の幼稚園のこどもは、園舎ができる頃にはいないということがあるのかも知れないが、思い入れのある園舎や園庭がどうなるかの、心情を考えれば丁寧に意見を聞く必要があったはずだ。保護者からみれば、突然、図面を出され、決定したことになり、戸惑いから憤りになってしまうのは理解ができるからだ。

 説明の方法にも課題があったと思う。それは、なぜこの園舎になったのか。内部の配置は、どのようにこどものためになるのかの理由を示しながら説明すべきだったと思うからだ。
 特に設計には、市の事務方職員ではなく、こどもと常に接している保育士や境幼稚園の教諭が関わっているのだから、専門家としての思いを伝えて、だから、この図面になったと説明すべきだと思った。砂場の広さについて、雨のことを考えると室内で遊べるスペースが必要との説明があったが、同じようなことを一つ一つの部屋について、丁寧に行う必要があるはずだ。

 もうひとつ、時代背景をどのように考えるかの説明も必要だと思った。

 武蔵野市の現在の保育園への待機児は104名。認証保育所などに入園してはいるものの認可保育園を希望しているこどもは208名(旧基準の待機児数)いる。この数字以外にも潜在的に保育園を必要している家庭はもっと多いはずだ。
 例えば、リストラされて仕事がなくなった、正規から非正規になってしまったなど経済状況が急変した家庭の場合、現在の保育園への入園基準では、夫婦ともにフルタイムである家庭が優先されるために入園できないという課題がある。
 さらに、働いている保護者が優先される基準なので、求職中では入れないことのほうが多い。シングルになり働こうと思っても、こどもが保育園に入れないので仕事もできないということも良くあること。日替わりで預ける人を変えて仕事を探しているケースも現実にはあるからだ。
 このような状況を考えると、定員を増やすために施設規模はなるべく大きくしなくてはならない。それも、子どもの環境を考えたうえで、詰め込みにならない程度の広さも考えて、となるはずだ。このような時代背景の説明も必要だと思う。

 境幼稚園の今後について、市のホームページには次のように書かれている

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■30年の間の境幼稚園を取り巻く状況の変化
1.開園当時と比べ、幼児数は減少の一途をたどり、大きく定員割れした状況がここ10年以上も続いています。昭和48年当時6,164人いた武蔵野市の幼児(3~5歳)は、現在では3,000人を下回っており、この公立幼稚園の定員割れの傾向は、他の自治体でも同様で、廃園の動きが広がっています。

2.共働き世帯の増加に伴う保育園需要の増加により、幼児教育に対する需要は激減し、市内の私立幼稚園の経営は危機的な状況になっています。昭和48年には18園あった私立幼稚園は、現在では、13園と減少し、市内私立幼稚園の定員に対する幼児数の割合は平均約79%で、厳しい経営状況が続いております。現在まで本市の子どもたちの幼児教育の大半を担っていただいている私立幼稚園の存亡の問題は、市としても関心を持たざるを得ません。
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 そのために、平成17年に「発展的解消」が決まったとしている。

 それならば、決めた後、どのように保護者と接してきたのか。特になくなってしまうことには感情的にも複雑な思いがあることを配慮してくるべきだったはずだ。

 市は発展的解消とはしたものの、境幼稚園の理念を継承することも考えて認定子ども園とした経緯もあるはずだ。このことを、なぜ丁寧に伝えてこなかったのか。そして、保護者の思いを受け止め、設計に反映することをしていたのかの疑問も意見交換会を聞いていた思った。この疑問は、市役所にいる職員だけではなく、境幼稚園の現場の職員がどのような対応をしてきたのかも含めてだ。

 会場では意見交換会なのだから、今回、保護者から出された意見をどうするのか、返事が欲しいとの発言もあった。そのとおりだと思う。一度だけではななく、なるべく納得してもらい、よりよい園舎、子ども事業とするためにも、もっと意思疎通を図ることをすべきだ。この日には、次があるのかなど具体的な返答はなかったが、早急に行うべきだ。

 境こども園について、市議会に「境こども園(仮称)建築計画における境幼稚園の園庭規模と幼児教育環境の確保に関する陳情」が出され、 建築計画の見直しが求められている。
 陳情は、8月19日の文教委員会で審査されるが、ここで議会が見直しや設計変更をすべきと判断するとなれば、スケジュール的に境こども園が平成25年4月の開園ができなくなる可能性も出てくる。そうなると、待機児対策が進まないばかりか、107人の子どもの居場所がなくなることになる。議会も重大な判断が求められている。

【参考】
武蔵野市 市立境幼稚園

写真は、境幼稚園の砂場。幼稚園や保育園でこれだけ広い砂場は見たことがない。この場所に園舎が予定されており大半がなくなるのが現状の設計だ