原発を再考する「19兆円の請求書」

 自民党の河野太郎代議士のブログに「原子力政策の分かれ道」(2011年3月27日)の記事があり、『経産省内部でも、事務次官黙認の下、今でいう「ジャスミン革命」の芽が生まれ、「19兆円の請求書」というタイトルの快文書が世論に訴えるために作成された』という文書の紹介と六ヶ所再処理工場への疑問を投げかけている。

 そして、『これまでのように、電気は必要だから原子力発電に文句を言うな、再生可能エネルギーなんてコストは高いし不安定だからダメに決まっている、といった乱暴な声は少なくなっていくだろう。もう一度、徹底的な日本の原子力政策の見直しのための議論が必要だ』だと主張している。同感だ。

 


 
 
 六ヶ所再処理工場は、日本の原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を集め、核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場。青森県上北郡六ヶ所村で建設が進められているが、これまでに完成が18回も延期され、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる施設だ(ウィキペディア「六ヶ所再処理工場」より)。

 いわば核燃料のリサイクルをする施設で「軽水炉サイクル」(プルサーマル)と呼ばれる再処理方式を採用している。だが、『欧米では経済的に見合わず、資源的にもメリットも少ないことから、軽水炉サイクル(プルサーマル)を放棄し、再処理せずに直接処分へと移行する国が続出』方式で日本だけが固執しているという)』(19兆円の請求書より)。

 建設費は約2兆円。だが、実際に動かすと総額で19兆円のコストがかかることが明らかになっている。しかし、これまでの前例では実際には3倍になることから総額で約50億円にもなるだろうとも予測されている。
 さらに、「もんじゅ」の事故などで処理した燃料を使う高速増殖炉が実用化の目処がたっていない以上、節約効果が限られていることや核廃棄物は大幅に増えてしまうこと。再処理の過程で原発とは比較にならないほど放射線被爆が発生するなどの問題点が指摘されている(19兆円の請求書より)。

 この19兆円は、バックエンドという費用のことで、発電が終わった後の後始末まで含めた費用のことだ。電気事業連合会が2003年11月11日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会の小委員会に報告した数字が根拠になっている。内訳は、『六ヶ所再処理工場を40年動かすとして、その建設・操業費と、工場の廃止措置(2078年まで)が合わせて約11兆円。海外からの返還分も合わせた高レベル廃棄物の貯蔵および処分、輸送、中間貯蔵など他の「バックエンド」事業も合わせた総額が約19兆円との計算』(核情報「バックエンド・再処理コストの基礎知識」より)。

 そして、『この核燃料サイクルを巡る構図は、古くは国鉄、住専、最近では道路公団、年金問題と同じ(問題の先送りによるツケが国民に回ることに)』との指摘もある(19兆円の請求書より)。

 コストだけではなく、原発そのものの大きな課題の指摘もある。それは、福島原発などで使用済み核燃料をプールしているが一杯になると発電ができなくなってしまう。そのため、六ヶ所村の再処理工場の近くに使用済み核燃料の貯蔵プールを作り、移動しなくてはならないというものだ。
『電力会社にとって、再処理工場本体が動くかどうかは問題ではありません。再処理工場に付属した貯蔵プールが使えれば良いし、使えなければ後一、二年で原発停止という事態になってしまうのです』と河野代議士は、2008年6月9日付けの「再処理工場の稼働に反対する1」の記事で指摘している。しかも、六ヶ所再処理工場はトラブル続きだという。

 そのような施設をなぜ作るのか、なぜ30年前に立てた計画が見直されないか。

 河野代議士は、次のように指摘している。

『与党(自民党)の政治家は電力会社と経済産業省に鼻薬をかがされ、野党の政治家は電力会社の労働組合から様々な支援を受けているためにモノが言えません』(「再処理工場の稼働に反対する1」より)。

 また、マスコミは電力会社が莫大な広告宣伝費を使っているため報道しない、太陽光発電や風力発電が増えれば、原子力発電はいらないではないかという声があがるのを恐れている経済産業省は自然エネルギーを徹底的に妨害し続けてきたとも指摘している。

 
 上記は原発へ疑問を持つ立場からの指摘で電力会社からの反論は当然あるだろう。しかし、原発や核燃料サイクルだけではなく、電気がどこまで必要なのか。ライフスタイルを見直すことも含めて、一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないだろうか。