国に言われる前に議員自ら議会を考えよう

 政府は、現在開かれている通常国会に地方自治法の改正案を提出した。朝日新聞が「地方議会、通年開会も選択OK」との見出しで記事を掲載したこともありご存知の人も多いと思う。
 しかし、なぜ提出するのかの理由についての報道はほとんどないようだ。総務省のサイトにある提案理由を読むと、自治の仕組みとして現行の議会制度には課題が多く、多様な議会制度を検討すべき、と書かれていた。このことは、大いに注目すべきだ。

 


 今回提案された議案の提案理由は、「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」として総務省のサイトで公開されている。このなかから概略をまとめてみよう。

■現状の地方自治法は十分ではない

 総務省は、これまでに地域主権戦略会議を設置し地方自治法の抜本的な見直しの検討を進めてきた。同会議は、総務省の政務三役のほか、地方公共団体の長、議長と学識経験者によって構成され、2つの分科会(第一分科会主査:西尾 勝 東京大学名誉教授、第二分科会主査:碓井 光明明治大学教授)で検討し現時点における地方自治法の抜本改正についての考え方を取りまとめ、速やかに制度化を図るべきものについて法案として提出したというのが、今回の提出理由だった。法案以外でもさらに検討を進めるとしている。

 そして、検討するにあたっては、人口減少・少子高齢化社会の到来、旧来のように家族やコミュニティに頼ることもできない時代から地方公共団体の役割は、これまで以上に重要になるが、現行の地方自治法では、真の意味での地方自治の基本法として十分でないことから、自治の仕組みとして議会制度についても検討すべきとしてあった。

■日本の二元代表制は特異な例

 その検討するにあたっての現行の議会、議員の課題も明記してある。簡単にまとめてみると下記のようになる。

○日本の二元代表制は、一般的ではない

 例えば、アメリカ合衆国の連邦政府において大統領と連邦議会の議員がそれぞれ住民の選挙で選出されるが、連邦議会は大統領に対して不信任議決を行う権限を有せず、州政府及び強市長制を採用する地方公共団体における長と議会の関係についてもこれと同様となっており、我が国の制度は独自性が強いと考えられる。

○与党を作らざるを得ない。政策形成ができない
・議案を通すためには与党を多数にせざるを得ないが、与党が多数になると監視機能が十分にならない。野党が多い場合は、十分な執行ができない。
・議会活動が執行機関の監視に重点が置かれることで、団体意思を決定する機関、政策形成はについて執行機関に大きく依存しがちになる。
・議決権は、最も重要な議会の権限であるにもかかわらず、現実には長の提案を追認する傾向が見られる。

 このほかにも、名古屋市や阿久根市のように長と議会が対立した場合の課題も多いとしている。

■議員内閣制か純粋な二元代表か

 このようなことがあることから、以下の基本的な2つのモデルを例として議会制度を見直すことを考えるべきとしている。

(a) 議会が執行権限の行使に事前の段階からより責任を持つ
 例えば、
 ・「議員内閣モデル」
  (イギリスの「公選首長と内閣制度」のようなもの)
 ・「特別職の兼職許容モデル」
  (議員から副知事・副市町村長を選任するもの)

(b) 議会と執行機関それぞれの責任を明確化し、純粋な二元代表制にする

 さらに、下記のモデルもあるのではないか、との提案もある
 ・「自治体経営会議モデル」
  (議員その他外部人材からなる合議体を設けるもの)
 ・「多人数議会と副議決機関モデル」
  (多人数議会又は住民総会と副議決機関が併存するもの)

 これらの制度を検討するには、日本国憲法上、許容されることか。また、地方公共団体の運営を円滑化できるのかなどで様々な意見があり、各方面から幅広く意見を聴きながら検討していくとある。

■プロかアマチュアか

 この議会制度を議論するにあたっては、議員の課題も示している。
 それは、議会は、団体意思の決定機関及び執行機関を監視する機関としての役割を担っており、これらの役割を果たすために政策形成機能、多様な住民の意見の反映、利害の調整、住民の意見の集約の機能を発揮することが求められている。

 しかし議会の現状は、こうした期待に応えられていないばかりか、上記の課題のほかにも議員間、専門家との政策議論が十分に行われていない、財政状況や公金支出への監視が十分でない。
 また、住民の意見反映・集約等の機能の観点から、議員の構成は「住民の縮図」として多様な層の幅広い住民の意見を的確に反映できているのか、住民との直接対話、住民参加の取組みが十分に行われているのかと指摘があり、議員のあり方として二つのパターンを検討すべきではないかとしている。

 (1)政策形成機能に着目する場合
  議会は専門的知識を有する者で構成されることが望ましい。
  この場合、機能が十分に発揮されるようにするためには、
  比較的少数の議員で審議を行うことが有効である。

 (2)住民の意見反映の機能に着目する場合
  多様な層から幅広い住民が議会に参加することが重要であり、
  多人数の議員により議会を構成し、
  審議を行うことが有効であるという考え方もあり得る。

 いわば、(1)は少数のプロフェッショナルの少数議員で議会を構成する、(2)はボランティア型の多数の市民で議会を構成すべきかの考え方だろう。
 (1)については、多様な層の幅広い住民の意見を反映できるのか。(2)には、住民の意見の集約が困難になり、議会の権限の適切に行使できないという問題があるとしている。また、都道府県と市町村、地方公共団体の規模の大小により、どちらがふさわしいのかも考えるべきとしている。

■議会の課題は審議が形骸化していること

 現状の議会運営についての課題を下記のように指摘されていた。これは皆さんも実感していることだろう。

・地域住民の多様な意見を行政運営に反映されるようにするためには、議会機能のさらなる充実・強化が必要になる。
 一部の議会では、議会の活動理念、審議の活性化や住民参加等を規定した議会基本条例の制定や議員による条例案等の積極的な提出、休日・夜間の議会開催、積極的な議会審議の公開や広報活動などが行われているが全体としては、審議が形骸化している。

・諸外国の例を見れば、イギリスでは、議会運営への地域住民の参加の手法として、議会の本会議や委員会の最後に地域住民が自由に出席し、議員に直接質問することができる機会が設けられる例や、議会の委員会に地域住民の代表が参加する例がある。
 ドイツでも、議会の委員会に議員以外の専門知識を有する住民や学識経験者等を参加させている例があり、アメリカにおいては、議員同士の討論を基本としつつ、議会が設置する各種委員会に住民が委員として参加するなど、各国において、様々な取組みが見られる。
・ 我が国の議会においても、議員同士の議論、議員と住民の議論の実施等によって、議会における議論をより充実させるべき。

 □■政府の指摘を議員が自らどのように考えるか■□

 さて、長々と提案理由「考え方」について記したが、正直なところ、読み込んでいくと、いったい何が言いたいの良く分からない。通年議会は、自治法を改正しないでもできることだし、示されている選択肢はこれまでにも考えられていたことで結論らしいことはあまりないからだ。
 しかし、ここで指摘されている課題は耳が痛いことではないだろうか。良識ある議員であれば、誰しも実感しているはずだ。

 昨年、12月19日に開催した「地方政府の多様化を進めるシンポジウム」では、責任ある議会にするために現在のような議会制度を変えるべきではないかとの提案に対して、現状でもできることをまずやってみるべきだとの意見が多かったように思う。確かに、正論だろう。

 しかし、政府が今回のようなことを示し、制度の変更を検討すべきと言い出していることをより深く考えてみる必要があると思う。
 
 それは、現状のままでの議会では期待できないと言われていると思えて仕方がないからだ。さらに言えば、国民全体が地方議会のことをどのように考えているかといえば…、と想像は簡単だろう。自ら変わると言ってもどれだけ信用されるのか。マトモになるまでの間、議員への税金は何になるかと突き詰められた場合、どのように返答できるだろうか。

 同じく、このシンポジウムのパネル1で、「議会があって住民に良かったこと」という質問を川名から会場参加者にしたところ、執行上の問題を指摘することができ、存在意義があったとの会場からの発言があった。これもとても正しいことだ。実は、何かを要望して実現したというのが議員の成果だとすることが多く、議会があってよかったことが出てて来るのか、少々不安だったので助かった気持ちもでもあった。

 しかし、このことは監視機能として役立っている例になるが、そもそもを考えると行政がいつかミスを犯す、間違いがあるという前提にたち議会が存在意義があるという消極的な意義になっていないだろうか。行政が自ら監視機能を高めたとすれば、議会は必要なくなってしまらないか、と思わないだろうか。

 例えば、行政評価をしっかりと機能するようになる。さらにお手盛りにならないように外部監査も行うようになれば、と考えてみるとどうだろうか。経理や財政の専門家による政策評価も行われるとなれば、専門家にた太刀打ちできる議員がどれだけいるのか、と思ってしまう。
 さらに住民との対話を重視し、予算も編成段階から透明化し、住民の意見を取り入れるということまで行ったとした場合、議会の存在意義はあるのか。

 議決する機関との考え方もあるが、単に投票するだけならネットでの投票や、それこそ、住民から携帯電話で直接投票してもらう。地デジテレビを使ってお茶の間から賛否を投票することだって技術的には可能だろう。議案全てに電子住民投票をするようにしたら、議会は何ができるのか、と思ってしまわないだろうか。

 そのときの議会の存在意義はあるのか。

 と考えていくと、生き残り、あるいは本当に必要な、税金をいただいても必要な機関になるには、政策形成機能に着目することがもっとポイントになるのだと思う。それも、支援者に言われたからあれもこれもよこせ的ではない政策だ。そして、何よりも言っているだけ、夢物語ではなく、具体的に実現できる政策と考えるべきだとも思う。

 そのために今のままで二元代表制でいいのか。あるいは、議員内閣制、議院内閣制などいろいろと言葉が乱立して分かりにくいが、責任あるポジションに議員が入ることで、現実に動かすことができる議会・議員に変えていくのか。それとも、議会・議員と行政がきっちりと役割を分けるていくのか。国に言われるよりも前に議会・議員自身が答えを出す必要があるはずだ。そのことが、議員自らの“質”を変えることになるのではないか、と思う。

 総務省の提案理由、読めば読むほど奥深い意味が隠されていると思う。このことをもっと地方議員自ら考えてみるべきだ。また、の法案だけではなく他の法案も含めて今の国会では審議さえ行うかも分からないくくらい混沌としている。地方議会をいう前に国会議員自身の“質”も考え直したほうがいいかもしれない。