「事業仕分けの方法論」

 弁護士であり仕分け人でもある水上貴央さんの『弁護士仕分け人が語る 事業仕分けの方法論 官の行動原理を理解する4つの視点』を読んだ。主に国で行われ事業仕分けを実例にして、どような視点で仕分けをしていくかが書かれている。ショー的に注目されてしまう事業仕分けだが、事業仕分けの視点、考え方は一時では終わらず漢方薬のように税金の使い方の費用対効果を改善していく、地方分権にも役だつとの主張は共感できるものだ。



 水上さんとは京都府で行われた事業仕分けで仕分け人として同席させていただいたことがある。互いに厳しい質問をしますね、と話していたことが印象深い。余談だが、仕分け人にも人柄があり、比較的穏やかな判定になる人と厳しく判定する人とに微妙に分かれ、なかには血も涙もないともまで後に言われる人もいる。とはいえ、仕分け人の全員を知っているわけでもないので断定的なことは言えないが、あくまでも個性であって判定への視点、考え方は共通していると思っている。
 その視点、考え方として明確に水上流の方法論が書かれているのが本書だ。

 読んでみると、官の思考回路、特に国での考え方への指摘が面白い。予算の効果よりも、予算額確保による組織や天下り団体の温存が結果的に優先されていることが仕分けによって明確になっている実例が書かれている。
 また、地方自治体での実例から、事業仕分けは自治体職員にとって貴重な機会になるとも書かれている。自ら担当している事業の目的、手段の適切性、運営状況、費用対効果などに対して分析し簡潔に答えなくてはならないため、同様のことを市民にも行えるようになるからだというのだ。市民の税金をどのように使うかを判断するのは本来、市民であるべきと考えれば、このことも共感できることだ。

 このことで思い出したのは、最近の事業仕分けでは判定を仕分け人だけで行わず、議論を聞いたうえで市民が判定する「市民判定人方式」が増えているのだが、以前、私が関わった仕分けでも行われ、仕分け人の判定よりも市民の判定のほうが厳しい事業が多かったことだ。これは、意味のないことで我々の税金を使うな、という意思でもあったと思う。

 本書では、市民に税金の使い方として事業内を適切に説明して納得してもらうプロセスは、多くの自治体で重視されてきていなかったために職員に技術が蓄積されてこなかった。今後、このような取り組みでしていくことで、行政への信頼が高まり、地方分権を進める近道になる、とも指摘している。これは議員も同様だろう。行政内部、議会内では説明し納得してもらっていても市民に理解されているかは別問題だからだ。

 今後、大幅に税収が増えないなか、高齢化社会による費用増が予想され、現状の市の事業は縮小しなくてはならないのは明白だ。そのときに、今行われている事業が本当に目的に対して効果的なのか。必要なのかを議論しなくてはならず、市民にも納得してもらわなくてはならないはずだ。コスト意識、効果などの説明ができなければ、なぜ縮小するのかと言われてしまうことも簡単に思い浮かぶ。市民判定人方式の経験からでは、市民のほうがはるかに厳しく判定するからだ。
 たぶん、すぐ近くに訪れる(現実には起きている)そのときに対応するためにもこの本は役立つと思う。事業仕分けの視点、手法は、事業のあり方を再考することにも役立つからだ。

 ご興味があれば、ぜひご一読を。
 

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