武蔵野初の無作為抽出ワークショップ(プラーヌンクスツェレ)  課題もあるが好印象

 11月13日に開催された武蔵野市第五期基本構想・長期計画の策定のための無作為抽出による市民ワークショップの様子を見学させてもらった。武蔵野市の未来を参加した人が5人程度のグループに分かれワークショップ形式で話しあい、途中でメンバーを入れ替えながらどのようなまちがいいかを議論した上で、このようなまちに、という「提言」(キャッチフレーズ)を投票で決めるという内容だった。
 議論されていたテーマは、市政の課題としてこれまでに検討されていることも多かったのだが、印象的だったのは参加した人たちが、談笑しながら、しかも、全員が発言していたことだった。この方式に好感を覚えたが、課題もあるように思えた。



■プラーヌンクスツェレ

 今回行ったワークショップは、プラーヌンクスツェレと呼ばれる方式。『プラーヌンクスツェレ(Planungszelle:計画細胞)は、ペーター・C・ディーネル(Peter C. Dienel)ドイツ・ヴパタール大学名誉教授により1970年代に考案された市民参加の手法』(市民討議ネットワークの解説より)で、無作為に選ばれた市民がメンバーで少人数で話し合い、「提言(結論)」を出してまちづくりに反映させるというもの。
 特定の人の意見だけが反映されないようにすること、他のメンバーの意見も聞くことができるようにするため、話し合うべき課題ごとにワークショップのメンバーを入れ替えて議論を行う。メンバーを男女比、年齢のバランス、職業など考慮して偏りがないように選ぶことから、地域の平均的な人たちによる結論となることが多いといわれ、地域代表、地域の集約された意見になると考えられている。特定課題への当事者や関心を持つ人などで構成される市民委員会や公募型市民会議とは別の新たなスタイルのものだ。メンバーの意識を高めること、「仕事」として行う意味からメンバーに報酬を支払うことも特徴だ。

 話しを聞いただけ、一部の人だけしか発言できなかった、声の大きな人の意見になってしまうなど市民が参加する会議には課題があるが、この方式ではこのような課題を防ぐことができると考えられており、参加者の満足度が高まる方式としても知られているものだ。武蔵野市では初めて実施された方式でもある。

■提言

 今回のワークショップは、「緑・環境・市民生活」分野と「都市基盤・行財政分野」がテーマ。住みたいにまちにする、環境に配慮したまちにするなどの「提言」が表明されていた。この「提言」は、今後の長期計画策定へ反映されることになるのであって実施をすることが決まったのではない。しかし、今回の「提言」は平均的な市民意識のように思われた。基本構想・長期計画を策定するさいに大きな要素になるのは間違いがないだろう。
「健康・福祉」と「子ども・教育」分野は11月6日に行われている。投票結果は後日公表される予定だ。

■財産は市民

 今回のワークショップは住民基本台帳から無作為抽出した市民のなかから、希望のあった人で行われたもの。1000通を出して参加表明したのは104人。10.4%の市民が手をあげたことになる。正確なデータは知らないが、他の自治体の例を見るとこの数はかなり多いと思う。その市民がメンバーとなり全員で議論をしていたことを見ると、参加意識の高さ、見ず知らずの人といきなり議論をできる市民がいることが実は武蔵野市の大きな財産ではないかと思った。今回参加した市民、市政に関心がある市民をこのままで終わらせるのではなく、常に市と意見が好感できるのような常設の仕組み、市の体制も含めて作るべきではないか、とも思った。

■個別課題への対応

 今回のワークショップには好印象を覚えたが、個別課題は数多くある。現実に困っている市民もいる。無作為抽出なので言いたくてもいえない市民も多いはずだ。平均的な意見は尊重すべきだが、個別課題への対応をどうするのか。そもそも、意見を言いたい(文句を言いたい)市民の意見も同じ市民の意見。どのように対応するかは今後のポイントになるのかもしれない。平均的な意見ばかりではなく、多様な意見もくみ上げて、武蔵野市の未来を描くべきだろう。従来と同様に地域別、団体別のヒアリングも今後実施されるが、意見の乖離があるとすれば、実際に策定を行う策定委員会には大きな負荷がかかってしまうかもしれない。
 いずれにせよ、新たな取り組みを実施したことは高く評価したい。先行きはまだ分からないが、今回の様子からは期待が持てるような気がした。
 余計なことかもしれないが、少数意見を反映できる仕組みができるこのような取り組みが日常的になると議会の存在価値は何か、とも思ってしまった。

 プラーヌンクスツェレ方式のワークショップは、第五期基本構想・長期計画の策定へむけて今回が第一回目。第二回、第三回が今後予定されている。

【参考】
武蔵野市 第五期基本構想・長期計画を策定しています
市民討議会推進ネットワーク(CDPN)
Wikipedia 市民討議会