市民への情報公開が重要 富岡市の事業仕分けで思ったこと

国の事業仕分けも始まったが地方自治体での事業仕分けも各地で頻繁に行われている。そのなかで、先週、さいたま市と富岡市の事業仕分けに仕分け人として参加してきた。事業仕分けというと「不要」という仕分け結果のインパクトが強く、事業費をいくら削減ということに注目されてしまいがちだが、本来は、支出している税金の妥当性と有効性を公開の場で議論して仕分けするというもの。結論よりも、その過程が重要なのだ。

 どこの事業仕分けでも多くの自治体で参考になる事例が出てくるが、富岡市の事業仕分けでは、ひとつの事業の赤字も含めどのように税金が使われているかが市民に知られてない事実が明らかになっていた。事実を知ることで市民がかわりまちも変わるのだと思う。


 群馬県富岡市での事業仕分けは、構想日本スタッフの仕分け人が市の担当者と議論を行い、その議論を聞いて、市民の判定人も判定を行うという仕分け方法だった。判定は、仕分け人と市民の判定数で決定するという方式だ。

 仕分けした事業のそれぞれに興味深いものが多かったが、印象的だったのは富岡市であった健康センター(スーパー銭湯)事業と遺跡の保存事業だった。
 それぞれの細かなことは書かないが、仕分けをしていて明らかになったのは事業の実態が市民に知られていなかったことだった。

■毎年6000万円の赤字の健康センター

 健康センター(かぶら健康センターかのさと)では、市民や議会からは利用をしやすいように市内から専用のバスの運行を求められたことから実施したが、健康センター自体が赤字を出していたことに加え、このバスの運行でさらに赤字が増えてしまい今では毎年6000万円の赤字となっていた。そのため、赤字のため施設の改修費用が捻出できない状態が続き、レジオネラ属菌汚染防止対策を強化する公衆浴場法が改正されたさい、浄化装置が取り付けられず打たせ湯などを廃止したことや周辺地域に温泉施設ができたことなどで沸かし湯である施設の魅力が薄れてしまったことで経営の好転も見込めない状態にあった。つまり、負のスパイラル状態の事業だったのだ。さらに送迎バスは25年も使われているもので修理部品がなく新車の購入予算もない。施設は老朽化しており大規模な修繕も必要なことも分かった。そしてこのことが、実は市民に知られていなかったことも今回の事業仕分けで浮き彫りになっていた。

 あればあったほうがいい施設かもしれないが、これ以上、税金の支出すべきないと判断し仕分け人の判定は5人全員が不要。市民判定人も13人のうち10名が不要と判断していた。

■事業費、ランニングコストの説明がない遺跡公園

 遺跡の保存事業は、高速道路の建設のさいに遺跡が見つかったことから、遺跡を保存するために大規模な公園を作ろうというものだった。仕分けをしているなかで、事業費は数十億円規模になるが完成したあとの施設のランニングコストが計算されていなかった。遺跡のあるエリアよりも拡大したエリアで整備をしようとしていたが、なぜそこまで拡大しなくてはならないのか明確ではないこと。さらに、林業としても宅地としても活用ができないような急勾配の斜面まで購入しようとしていたことが分かった。土地の所有者にしてみれば、活用しにくい土地を市が買い上げてくれることになり非常にいい条件に思えてしまい妥当なことか疑問に思えたものだった。何よりも、今後の財政状況を考えれば、必要最低限でもいいはずだ。
 そこで、なぜそこまで大規模な公園にすることに決まったのかのそもそもを確認していくと、遺跡が見つかったことで公園にしようとの庁内の会議で決まったもの。外部有識者やコンサルなどを入れて費用や必要な規模については検討していない。簡単に言えば、庁内での理想の公園がそのまま事業となっていたことが分かった。住民への説明会を開いたとしていたが、そのさいには事業費についての説明はしていないことも分かった。住民は公園になるのはありがたいと思ったかもしれないが、費用を知らなければ良いも悪いも判断できないのではないだろうか。

 他の事業でも、赤字の実態が市民に知られていなかった事業もあった。仕分けが終わって、何人かの市民の方に声をかけられたが、今回の事業仕分けで事業の費用が明らかになり参考になったと感謝の言葉をいただいた。他の事業では、仕分け人は要改善と判定したのに市民判定人が不要と判断した事業もあったほどで、実態を知らせていくこと。特にそのコストを明らかにしていく重要性を改めての認識したのがこの富岡市の事業仕分けだったと思う。

■外部の目の重要性

 富岡市の事業仕分けは、今年4月に市長になられた岡野光利市長の強い意志によって実現されたものだ。
 所信表明で市政運営の5つの柱を示されその中のひとつにある「行財政改革」として実施されたのが事業仕分けだった。庁内で良かれと思ってきたことを外部の目で評価してもらいたい、職員への刺激にしたい。そして、市民への情報公開をしたいとの願いから実施したと話されていた。tomioka

 今や富岡市の代名詞となり多くの観光客が訪れている富岡製糸工場でさえも年間3000万円の赤字になっていることが今回の事業仕分けで明らかになったこともあり、きっと市民の方々も事実を受け止めて現状を変えなくてはならないことが分かったのだと思う。このことが、今回の事業仕分けの最も大きな成果ではないかとも思った。仕分けをしている最中に公務の間をさいて岡野市長が熱心に議論を聞いていたこと。そして、仕分けがすべて終わったときに拍手が起きたことが印象的だった。
 今回の仕分け結果をどのように予算に反映するかは行政と議会に判断で決まるが、きっと、今回がまちが変わるきっかけになりなるのだろうな、とも思った。

★武蔵野市では、事業単位のフルコストが明確になっているため、富岡市の状況があてはまることはないと思う。一方、富岡市では今年から次年度予算の編成方針の公開と今後の予算編成過程の情報公開を始めようとしている。このことは、以前から主張していることだが、武蔵野市でも取り入れるべきだと思う。そもそも、なぜこの事業費なのか。誰が、何時、何のために始めたのかを明確し市民にも公開しておかないとなんとなく続いている事業になり、税金の使い道としておかしなことに成りかねないからだ。自治体によっていいところ、課題はそれぞれだ。完璧なことはない。いいところはどんどん参考にすべきだ。

【参考】
富岡市
 「富岡市版 事業仕分け」を実施しました(結果速報) 
 平成23年度予算編成方針を公開します。

東京新聞 12年間で赤字7億5000万円 温浴施設『かのさと』 5人とも『不要』
毎日jp 富岡市:事業仕分け かのさと運営など、4事業を「不要」 /群馬
朝日新聞 赤字の入浴施設など3事業「不要」 富岡市の仕分け

多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ
 富岡市 事業仕分けが終わりました
※仕分け人でもある伊勢崎市議の多田さんのブログ。傍聴者として客観的に見ていた仕分け内容についてコメントしている。