小笠原からやってきたネコ

 我が家で飼っていたネコが先日、交通事故死をしてしまった。その前に飼っていたネコが病死してから一年後だったこともあり重い気持ちでいたけれど、何時までも沈んでいてはダメと思い、近所の獣医さんからネコを譲ってもらうことなった。やってきたネコの出身地は小笠原だ。



 小笠原諸島は、世界自然遺産の登録候補地となっている。だが、人間が持ち込んだ多くの外来種によってここにだけにしか棲まないアカガシラカラスバトやオガサワラカワラヒワなどの希少野生動物が絶滅の危機となっていて、特に飼いネコが野生化したネコの影響は深刻なのだそうだ。

 そこで、野生化したネコの駆除となるのだが、捕獲して殺してしまうのでは忍びないという島民からの声もあり、ネコの不妊化を進める一方で捕獲したネコを飼いネコとして島外に“転居”してもらうことを考えた。しかし、小笠原諸島には、母島に獣医が一人いるだけなのだそうで地元だけでは対応ができないため、東京などの獣医によるボランティア協力を得て、ネコの不妊手術や健康診断、“転居”なども行うことになったのだそうだ。

 その協力団体でもあり、小笠原に獣医師を派遣している東京都獣医師会は、サイトで『とくに飼いネコは、野生化すれば生態系に大きな影響を与える外来種です。でも、彼らはわたしたち人間が家畜化し、数千年にわたって共に暮らしてきた家族でもあります。
 東京都獣医師会は、10年以上前から小笠原のネコ対策に取り組んできました。しかし、それでもネコは野生化し、カツオドリたちの繁殖地を壊滅させ、アカガシラカラスバトを捕食しています。(中略)わたしたち東京都獣医師会は、何ができるかを考え、そして決断しました。世界の宝である小笠原の自然や人と動物の豊かな関係を守るために、このネコたちがまた人と暮らせるようにすることがわたしたちの使命だと。こうして、希少動物も飼育動物も人間も共存できる地域社会を目指して、村・都・国・民間による前代未聞の協働がはじまりました』と活動について記している。

 原因を作り出したのは人間でありネコも被害者なのだから、共存を考えようとの思いなのだろう。その前代未聞の協働による一匹が我が家にやってきたというわけだ。我が家でネコを飼うことは、直接には野生生物の保護には役立たないかもしれないが、微力の中の超微力ぐらいには役立てばいいなと思いながら小笠原ネコと暮らしている。

 さて、我が家にやってきた小笠原のネコだ。飼い始めて約3ヶ月たつがが、野性の血が濃いのか、それとも性格なのかは分からないが、未だに抱き上げようとすると逃げまくっている。そのくせ、おなかがすくと小さな鳴き声をあげて近寄ってくる状態だ。家の中で野生動物を飼っているようだね、とは我が家ではの状況分析だ。ogasawaracat
 でも、最近では寒くなってきたこともあり、時としてひざの上に乗ってくることが多くなってきた。小笠原出身が影響しているのかは分からないが、毛の長さが短く寒さには弱いように思える。飼いネコ度を上げるには、これからの季節が最適なのもしれないな、と思う昨今だ。
 おっと、おなかが減ったのか近づいてきた。飼いネコ度を上げるために、えさを武器に親交を深めよう。

 自然と共存を考えるさい、野生生物をどのように保護していくか、人間の手によって野生化してしまった動物の住む場所をどうするかは大きな問題だ。動植物と人間が共存していく試みとして、この小笠原での取り組みは意味深いと思う。いろいろな人がいろいろなところで、少しだけ協働することが大きな力になるのではないだろうか。

【参考】
小笠原自然文化研究所
(社)東京都獣医師会

日本経済新聞 第2のニャン生、どうする? 小笠原の野猫、ペットに転身
小笠原村議会議員 一木重夫の政治日記 「小笠原動物派遣診療・2009を視察
 ※2009年の小笠原動物派遣診療の様子が報告されている