認定子ども園モデル事業の結果は?  (視察報告)

10shisatu1-01 市議会文教委員会の視察で登別市の幼保一元化施設「コロボックリの森」を視察した。同施設は、幼稚園と保育園を一緒にした認定子ども園事業を進めるために、国が平成17年にモデル事業を公募、登別市が応募したことで実施されたものだ。武蔵野市でも、市立境幼稚園を発展的に解消し保育園機能を兼ね備えた認定子ども園にする予定。モデル事業の結果、どうなったのか、課題は? をテーマに伺ってきた。


 結論から言えば、認定子ども園は、都市と地方と同じに考えていては制度が成り立たなくなること。政権が変わったこともあり制度自体が今後どうなるか分からないので、今の段階では何ともいえない状況というのが登別市の事例からは分かったことだった。

■登別市の事情

 登別市が一元化を始めた理由は、子どもの数が少なくなったことから市立幼稚園3園を廃園、市立保育園も定員に満たない状況にあった。その中で保育園施設の老朽化が差し迫ったことから3園の市立保育園を廃園する代わりに新たな園舎を新設、それまで実施していなかった0歳~2歳児の保育も同時に実施すること。そして、保育園の民営化も実施することを考えていたことが前提にあった。そのため、現在の運営は、市内の私立幼稚園を運営していた学校法人が市からの委託事業として行う公設民営施設となっていた。つまり、公立保育園の園舎建替えと統合、民営化を一気にこの事業で行ったことになる。

 認定子ども園には、大きく分けると幼稚園型と保育型があるが、登別市の場合は、一元化を想定し独自の保育計画を策定していた。実際の保育内容など細かな現状については短い時間の視察では分からなかったが、制度的には現状で課題があることは分かった。

■民間でも成り立つのか10shisatu1-02

 そのひとつは、認定子ども園を実施する場合に義務付けられている一時保育や広場事業などを行う子育て支援センターがあるが、この経費については国からの補助はなく事業者の負担になってしまうことだ。登別市の場合は、市が委託事業として経費を支出していたが、経費削減で民間に誘導することを主目的にしようとするのであれば、負担をしてまで実施しようという事業者があるのかという課題となっていた。

 このことは、都市部では待機児問題があり保育園の補完事業として幼稚園を誘導することで成り立つ可能性は高いと思うが、子どもの数が減少している登別市のような自治体では将来的に経営がなりたつのか、という現実問題になっている。幼稚園も保育園も利用する子どもが減っていくなかにあって、両者を統合するで事業の効率化は進められるかもしれないが、さらに少子化が進めばどうなるのだろうか。
 公営では簡単に事業を止められないが、民間であればすぐに切ってしまうことができる、なんてことが考えられていないのか疑問が出てしまった。少子化で私立幼稚園の経営が困難。それなら認定子ども園をどうぞ。ただし、将来は知りませんよ、民間だからなくなっても当たり前という制度なのかもう少し考えてみる必要がありそうだ。

 もし、民間事業が成り立たなくなってしまった時、少数でも必要している家庭をどうするのか。委託した民間保育園が倒産してなくなってしまうことも現実に起きている。その場合にどうするなるのか。経営が行き詰った民間に公費を増額投入するのか。公営に戻すのか、戻せるのか。公立が残っていれば、対応は可能だろうが、数の問題もある。残すとしてのどの程度まで残すのか。民営化の行く末も考える必要もあることになる。
 幼保の一体化、一元化は、子どものためというよりも経営効率の向上が実は目的ではないか、とも思えるからだ。

 国は幼保の一元化で待機児対策をしようと考えているようだが、そもそも子どもが少なくなっていく地方では一元化したところで少子化対策にはならない。地域ごとに何が必要なのかも考えるべきだ。このあたりの制度設計が分からないこと。そして、政権交代で補助金がどうなるかも分からない。
 これらのこともあり、幼保一体化モデル事業を実施したものの認定子ども園になっていないが登別市だった。一元化であれば、名称はひとつになると思うが「コロポックルの森」は登別保育所と白雪幼稚園を渡り廊下でつないだ合同施設の名称であり、市の委託事業のままとしていた。現時点では賢明な判断だと思った。

■保育士は働き続けられるのだろうか

 幼稚園や保育園の経費で最も大きなものが人件費だが、経費を削減しようと考えればここを削減するしかない。長期間勤めることで給与が上がらないように辞めてもらうことや生活できるような給与ではないことから、結果として、幼稚園教諭、保育士が長く勤められない、数年で保育士が入れ替わってしまう例はよく聞くことだ。公立から民間委託になった場合、経費削減が主目的になるので特に注意しなくてはならないことでもある。
 このこともあり「コロボックリの森」ではどうなのかの疑問も残った。今回の視察で応対してくださった保育士の方々が若い人ばかりで少々不安を持ってしまったからだ。民間事業者なので経営的なことは視察では分からなかったが、今は良くても将来は大丈夫なのかと思ってしまった。

 保育内容、質は保育士の力量にかかることが多く、ある程度の年数が必要で保育士の年齢構成も若い保育士からベテランまでが必要だと私は考えている。だが、積み重ねたスキルを評価しているのかという大きな問題がある。幼稚園、保育園は経費が安ければいい、民間に任せればそれでいいということではなく、民間に任せても必用な費用は当然ある。それを行政、議会、市民が理解しているのか。理解し公=国民の負担も当然と考えていけるのだろうか。続けていって欲しいが、今は良いとしても将来はどうなのだろうと、余計なお世話かもしれないが気になってしまった。これは登別市だけではなくどこでも同じことだと思う。
 

■今後はどうなるのだろう10shisatu1-03

 認定子ども園の目的は、少子化対策でもあるはず。心配ばかりしていても仕方がないが将来まで安定できる仕組みなのか。消え去ってもいい事業として考えているか精査する必要があるのかもしれない。

 特に、認定子ども園の特徴に、認可保育園のように市が入園を決めるのではなく園が直接決めることができることがある。このことは、園が子どもの入園を拒否できることになるものだ。
 例えば、障がいを持った子どもが入園を希望した場合、表向きの理由は他にあったとしても、経費がかかる(保育士の加配、施設整備などが必要になる)ことから入園をさせないことができるし、保育に欠ける子どもでも、園の判断によっては退園させてしまうこともできる。他の保育園が多くあり選べるのであればいいが、入園できない場合はどうなるのか。認定子ども園の課題だ。

 武蔵野市が行おうとしている認定子ども園でも同じ課題が出てくる。保育料の独自設定もできることを考えれば、認可保育園や私立幼稚園との差額をどうするのかの課題もある。現状では武蔵野市の方針は見えていないが、登別市を視察してみて武蔵野市での一元化は、どのようにすれば良いのか考えてしまった。

 平成21年3月31日付けで各都道府県知事、教育委員会宛に文部科学省初等中等教育局長と厚生労働省雇用均等・児童家庭局長名で認定こども園制度の普及促進についての通知が出されている。ここには、人口減少地域等における制度の活用の項目があり『人口減少地域等においては、子どもの健やかな成長にとって適切な集団規模を確保するため、幼稚園と保育所の連携を進めることが必要であり、特に、幼稚園又は保育所の一方しかない地域においては、小学校就学前の教育・保育及び子育て支援を総合的に提供する観点から、認定こども園制度を積極的に活用されたい』とはある。

 しかし、子どもがいなくなってしまったらどうなるのだろう。利用者がいなくなった場合、認定子ども園を廃園し、どちらかを復活させろというのだろうか
 地域主権の名目で地方に基準なども作らせて事業を行うことも考えられるが、そのさいに財源は現状のままなのかの疑問も残されている。一括交付金が考えられているが、今まで補助金として出されていた経費が他の事業と一緒にされ全体として減額となれば、認定子ども園に自治体が費用が出すのかの課題もでてきそうだ。

 とりとめもないことを書いたが、政権の未来が見えてないことも制度の背景にありそうだ。未来を見据えたビジョンを現政権は早く出して欲しいとも思った。

写真は上から

コロボックリの森の外観。右が保育所。左が幼稚園。中央の渡り廊下でつながっている。幼稚園側に玄関があったが玄関はひとつにすべしという国の“指導”で廊下左にある玄関だけを使用している。

玄関から入った園内。鉄骨を使ったデザインがいい雰囲気。

ホールから玄関方向を見る。給食室が隣接してあり、合同で昼食をこの場所で食べるのだそうだ。

【参考】
白菊幼稚園&コロボックリの森(幼稚園の事業者によるサイト。幼稚園の内容が
中心)