打率2割でOK 樋渡武雄市長のツイッター革命

 9月27日に樋渡啓祐佐賀県武雄市長の講演会に参加してきた。主催は三鷹ICT事業者協会と三鷹商工会。題して『ちいさなまちの革命 ~ツイッター革命~』。主催者は、技術者の集まりであり、想定した技術以上の利用方法が広まっているがツイッターに注目し、可能性と活用方法を聞くという趣旨の講演会だった。樋渡市長は、ツイッター学会の会長でもある。
 講演のなかで最も印象に残ったのは、市政はまずやってみることを大切にしていること。成功は2割でいい。そして、議会との議論を重視していることから議会の中継は40%もの視聴率があり眠っている議員はいない、との発言だった。



 樋渡市長は、サラリーマン家庭で育ち東大から総務省へ入り、無投票だからと“だまされて”で市長選挙に立候補。現職をやぶり平成18年に38歳という当時の全国最年少市長になった。市長になってからは、「がばいばぁちゃん」のロケ地をテレテレビ局へ直接交渉して成功させ、レモングラスを市の特産品として商品開発を行ったことや朝市を始めたことで観光客が増えたことなどで市税の増収を実現。一方で市民病院の民営化問題でリコールがあり、辞職した後の選挙で再選された。市長を目指したのは、子どものころに面白い町長がいたことがきっかけだったが、武雄市は市なので町長になれないと後で分かったなどユーモアを交えながら自らの経歴を話され、非常にポジティブな考え方を多くのユーモアを交えながら話されていた。話の内容はいろいろとあり、USTREAMで見ることができるので、ぜひご覧になって欲しい。ツイッター学会は2010年8月19日に発足。相互フォローで会員になれ会費などはないという“ゆるい”学会だ。川名も“学会員”だ。

 さて、話題てんこ盛りの講演で私が印象に残ったは次のことだった。

 ■まちづくりの三つのF

 市政運営については、三つのF。まちづくりの三原則、FIRST、FAST、FUNで行っているという。
 FIRSTは、なんでも最初にやること。他がやっていないことをすること。
 FASTは、早くやることで、あらゆる武雄市役所は組織体で最も早いとされていた。大切なこととして、ますやってみること。行政は間違えを恐れるが人間がやることだとやらせてみることにしている。成功は期待しない。やってみれば2割はいく。2割で十分。やっての失敗は怒らないが、先送り、やらないで失敗することに怒る。その代わり、止めるのも早いのだそうだ。
 FUNは、楽しい、楽しむこと。職員は分からないが、市長の私は毎日そう思って仕事をしているとされていた。

 ■総合計画は誰も読まないからイラスト

 武雄市には総合計画(武蔵野市でいう基本構想と長期計画)がないとしていた。総合計画は誰も読まない。協働を行政が言っても意味がない。何よりも分からないような文章ばかりで意味がない。霞ヶ関時代に分からないような文章ばかり作っていたからこそ分かる。その代わりに、総合計画は10年後のイメージをイラストにしてカレンダーとして全世帯に配布している。文章はうそ付けるがイラストではできないからだとの話も興味深かった。takeo

 実際には、文章の総合計画がないのではなく、市のサイトにはイラストの計画とともにシンプルな計画も掲載されていた。読んでみると、確かにカレンダー方式のイラストのほうがはるかに分かりやすく、市民にとって将来像が分かるように思えた。何よりも、そのイラストでさえ将来目標を数字で示したいたことには驚かされた。文章ばかりの計画で、実際にどのようになるのか分からない、誰のだめのなのかも分から総合計画があることを考えれば非常に参考になるな、と思った。

 (画像は総合計画のイラストのひとつ)

 
 ■全職員がツイッター

 武雄市のこと、そして樋渡市長のことを私が知ったのは、全職員にツイッターをはじめさせたこと。そして、市長が自らツイッター学会を創設し学長になったことからだった。
 講演会は全職員がツイッターを行う意味とビジネスにつながるかが今回の講演会のメインテーマでもあったのだと思う。樋渡市長は、庁内の人間的なやり取りが分かることになり市民と近くなる、行政の垣根が低くなること。職員同士が仲良くなること。組織の金魚蜂、何をしているか分かる 入っていけることも効果だとされていた。

 樋渡市長のツイート(つぶやき=書き込み)を読んでみると、市長が市民から直接相談を受け、職員に対応の指示をしていることが分かる。このことは市政の透明化にもつながり、確かに垣根を低くしているように思えた。樋渡市長はまた、相談を市長が受けて返信をしているが、間違えている場合は、読んだ職員がリツイート(他の人のツイートを引用してツイートすること。おもしろいツイートなどを広めることができる。自分のコメントを書き込んでリツイートすることもできる)して訂正することもあるのだそうで、情報を常に早く修正していく上書き効果もあるのが特徴とされていた。

 このことは、職員にとって思ったことをすぐにやれるという楽しさにもつながっている。いちいち、市長も含めて他に職員に電話をしたり会いに行くことも少なくなり業務の効率化になっているそうだ。ツイッターによって職員も変わってきているとされていた。 
 

 ■打率は2割でいい

 市政運営について、まずやってみることを大切にしているともされていた。行政は間違えを恐れるが、人間がやることだと思いやらせてみる。その代わり成功を期待しない。やってみれば(成功は)2割はいくものだ。徴税などは別だがやっての失敗は怒らないが先送り、やらないでの失敗は怒る。そして、反省はしない。反省しても同じことが起きるわけがない。そんな暇があれば前を見ろと話しているとされていた。その代わり、止めるのも早いのだそうだ。ツイッターも3年たてば分からないとされていた。
 このことへの批判もある、怪文書も多いがノー天気が一番だ。ひとの悪口は言わないようにもしているとされていた。

 行政は石橋をたたいても渡らないような慎重さとやらないことの理由だけは山ほど見つけるのが行政ともいえるので、正反対の発想とも言えそうだ。市民には、どちらに共感を持つだろうかと思ってしまった。武雄市のようには行かないかもしれないが、もう少しまずやってみて考えてみるとの発想が多くに自治体に必要ではないかとも思う。

 武雄市役所には、お結び課(市内の男女の仲を取り持つ、縁結び事業)、わたしたちの新幹線課(新幹線を活かした地域振興政策など)、いのしし課(鳥獣保護及び被害に関すること)、佐賀のがばいばあちゃん課(テレビドラマ誘致など) というユニークな課がある。これらは、何をすべきかのミッションんを分かりやすくしているように思える。これらも含めて、従来の行政の発想を変えているのではないだろうか。結果的に財政力指数があがり、市の借金も減っているというのだから十分成果がでているように思えた。

 また、行き過ぎた行革は暗くなるとの発言も興味深かった。やりすぎるとやる気がなくなることになるからだそうだ。
 市長の仕事については、自らの責任で地域が豊かになることにある。自分たちが努力することで市がブランド化し地域の人の所得を増やすことになるとされていた。レモングラスという特産品を市が開発し営業も行っているのがその例だろう。レモングラスを使ったサイダーも売り出しているのだそうだ(のむネ、というネーミングに個人的には好感)。最年長のアイドルというおばあちゃんのアイドルグループGABBA(ABBAをもじった。Bは反対向きになる)などユニークな“産業”も興味深い。

 ■議会は“暴風雨”

 ツイッターや市政のことはマスコミなどで報道されているが、議会とはどうなっているのか。気になって質問をしてみた。
 すると、議会は“暴風雨”と表現されていた。たんに荒れているのではなく、市長は言いたいことをいい、その反論もあるからのようだ。研究します、検討しますの答弁はしない。やるかやらないかしかない。隠し事はせず常に公開の場である議会での議論を重視している。そして、議会は吉本でないと、との表現も興味深い。このことは、寝ている議員がいないほどで議論が活性化しているからのようだ。ケーブルテレビでの視聴率は40%はあるのだそうで、市民の関心も高いという。
 ツイッターも含めてだが、政治に興味がない市民も議会を見るようになっているという。実際の議会を見ていないのでなんともいえないが、市民の関心が高いことは参考になりそうだ。講演会の後の雑談で、議会改革は首長の影響が大きいと話されていた、そうだよなと思う反面、本来は議会が自ら改革すべき、との思いもあり複雑な思いだった。

 講演は多方面にわたり何がテーマなのか分からなくなってしまったが、樋渡市長のキャラクターと行動力で市が変わった、元気になったのは確かなようだ。「逆風を順風に換えることが楽しい。せっかく風が吹いているのだから」「ツイッターで世の中が変わるか? 変わらない。変わるわけがないが幅は広がる。フェース対フェースが基本だが選択肢の幅は広がるからだ。何よりも無料なのでコストパフォーマンスがいい」との言葉も印象深かった
 そして、ツイッターには作法(ルール、マナー)が確立されていない。ソフトバンクの孫さんに作法の孫家を作らないかと提案している。そうれば、裏孫家を作れるから、などのユーモアも印象的だった。何ごとも楽しむこと、hiwatashi楽しさがないとやっていけないとの思いは私と共通のようだ。そして、何ためにやっているのかを明確することにも共感を覚えた。

【参考】
武雄市
武雄市長物語(市長のブログ)
武雄市総合計画
日本ツイッター学会