市民の想いを受け止めるには  【福祉公社と社協の事務所移転問題】 

 8月5日に第四回目の福祉公社と市民社協の事務所移転検証委員会が開催された。この日には、前回から調査が進み、八幡町の当初移転案を含め移転できる可能性がある7件の物件が示されていたが、この日の議論では、どの場所がいいのかという具体的な候補地にまでは至らなかった。
 一方で本来の委員会に求められていることではないとは思うのだが、委員と傍聴者との意見交換や傍聴者から事務方(両団体の職員)への質問などに多くの時間をかけていたことは印象深く、この手法には好感を覚えた。
 しかし、時間に制約のあるなかで移転先を決めなくてはならないという悪条件だけでなく、もそもの市としての福祉への思い、地域の福祉を担ってきた市民への行政の対応の仕方など市民の“想い”も重なりあい移転問題の解決の糸口は、いまだに見出せていないようだった。

■旧図書館跡地は公共施設の建替え用地 
 
 検証委員会に示された候補地の案は、約150平米(約45坪)から約2000平米(約600坪)と差があるものだった。当初案の八幡町の場合は、約965平米(約292坪)の敷地面積。面積だけではなく、駐車場や駐輪場の設置台数、近隣に金融機関があるか。市民に分かりやすい場所にあるかなどの項目で現況も報告されていたが、土地所有者の売却や賃貸で貸すかどうかの意向が確認されていないものもあり、どこを候補先にするかはこの日の委員会ではまとまらなかった。

 また、委員会には、公共用地での可能性について追加の調査結果も出されていた。以前から移転候補地として市民から提案のあった旧図書館跡地については、公共施設の建替え用地として第5期基本構想・長期計画の策定委員会に提案する予定であり、現段階で両法人の社屋を建築する、あるいは合築する考えはないとの見解が示され、市として現状では可能性がないとしていた。
 旧図書館跡地の利用について、市の考えが示されたのは今回が最初だと思う。今後の大きな議論の的にもなるのかもしれない。

 他に市営プールの駐輪場での可能性も市民から提案されていたが、調査したところ、道路が接続されていないため建築物を建てられない。同じく提案のあった武蔵野芸能劇場の小ホールは利用率が69.6%と高いためできない。東京都の保健所の借用については、会議室的な借用であれば可能であることが都へ確認したことで分かり、現状では難しいと考えられるとの見解も示されていた。

 これらの報告に対して委員から事務方へ質問があった後、傍聴者からの質問や意見を委員会が受ける展開となった。それも意見を聞くだけではなく、委員や事務方が答えたり、さらに委員から傍聴者へ再質問をするなど通常の委員会では考えられないような手法だった。

■市の都合で移転先を決めることに納得できない

 傍聴者との意見交換の中心となったのは、傍聴者から移転先として旧図書館跡地が良いとの意見が出されたことに対して、その理由を委員から傍聴者に聞くというものだった。

 傍聴者からは、まず市の都合で移転先を決めるという考えにそもそも納得ができない。
 利用者の立場にたって考えると場所はまず駅に近いほうがいい。一番の希望は三鷹駅だが、吉祥寺、境でもあると思う。駅に近いことは、バスの停留所よりも説明しやすいからだ。
 次に考えられるのは、最も税金を節約できることと考えれば市の所有し利用計画のない図書館跡地になる。なぜここでできないのか。そこが議論されていないのがおかしい。それに、福祉のフラッグシップは市の中央部にあるべきだと思う。利用者がバスを使って利用することを考えればバス便の多い五日市街道に近いほうがいい。市のはずれにあると、利用者がなえてしまう。市役所に近い場所もいいが、そもそも、市役所がそもそもはずれにあるのだから市役所よりも遠いのは止めて欲しいとの意見だった。

 これらは物理的な条件だったが、より考えなくてはならないと思えたのが、今まで武蔵野市の福祉を担ってきていただいた市民(社協のボランティア)の方々の想いのことだ。

■地域社協の地位が向上しない

 委員との意見のなかで傍聴者から、今まで武蔵野市の福祉を担ってきたが、駅近くか中央部に移転しないとなれば、今後、のぼり状態にしなくてはいけないのに地域社協の地位が向上したとは思えない。外郭団体だから差別されていると地域には噂話が流れていることもあり、市のボランティアに良くない影響になっている。このままでは、福祉やボランティア活動が先細りになってしまう。その必死さを思って欲しい、との内容の意見があったからだ。

 委員からは、福祉のモチベーションが下がっているのは分かるが、モチベーションをあげるには何をすべきだろうか。社屋の場所との関係が理解できていない。駅のぞばだからモチベーションがあがるのだろうか、との再質問も出され、傍聴者からは、社協に行くには自転車の人も多い。そもそも市の中心部から離れている市役所へ行くのさえたいへんなのに、の声がある。地域エゴにならない着地点として真ん中にすれば平等になるのではないか。駅に近い場所は望みだが、当然ながら家賃は高くなる。両団体は、基本的には自立しなくてはならないので、経済性を優先させれば新たに土地を購入しなくて済む市の所有地になる。ぎりぎり我慢できるのが図書館跡地なのになぜ分かってもらえないのか、との意見も出されていた。

 この意見に対して委員からは、図書館跡地に可能性があることや福祉への気持ちも分かるが、この委員会には移転先を決める権限はない。移転先を決めるプロセスが正しいかどうかの意見を述べる立場だ、との発言があった。

 確かにこの委員会の目的は、移転先を決めるプロセスが正しかを検証するために設置されたものだ。しかし、今問題になっているのは、移転先の問題だけではなく、地域福祉を担っている市民ボランティアに対する市の対応の仕方、そして福祉公社と市民社協の統合も含めた組織のあり方も含めた武蔵野市の福祉ビジョンの不明確さという要素が複雑に絡みあってしまい出口がみえなくなっていると思えたのがこの日の委員会だった。

 本来であれば、もっと時間をかけて福祉を担ってきた市民の方々の想いを受け止め、今後の武蔵野市の福祉をどのようにすべきかを考えてから必要な事務所機能を決め移転を考えるべきなのだが、現事務所の耐震強度に問題があり早期に移転しなくてはならないという時間的制約からできないことで、問題は複雑化している。

 丁寧に傍聴者の質問や意見を聞き、本意を確認するなど検証委員会の対応は非常に好感をもていた。これが良い結果に結びつけばいいのだが…。この検証委員会の後、市民の方々と事務方の意見交換がおこなれているはずだが内容は残念ながら知り得ていない。現状を考えると事務的に物事を判断するのではなく、市民の想いを受け止めた上で、最大限できることを行うという政治的な判断が求められているのかもしれない。予定では移転先が決まるのは8月の下旬。移転先は、武蔵野市の地域福祉の行く先にも大きく影響を与えそうだ。