総合計画と行政評価、決算、議会の関係

JMAC(日本能率協会コンサルティング)主催の行政経営実践セミナーに参加してきた。今回のテーマは、市の総合計画(武蔵野市での基本構想・長期計画)と行政評価、議会との関係。それぞれが連携することで、経営がより効率的になるとの内容だ。
 事例報告では、豊田市からの報告があった。豊田市はトヨタ自動車からの税収があり武蔵野市と競い合いような豊かな財政で有名な市だった。しかし、昨今の不況で税収が激減。『潤沢な財政下で危機意識がなく』という状況が改まったとの内容。武蔵野市でも参考になるのでは、と思った。

■行政評価がなぜ活かされないか

 セミナーの基調講演では、法律が改正され総合計画の策定や基本構想の議決義務化がなくなりそうだが、自己決定する自己責任時代には総合計画は必要だ。限られた資源の配分には総合計画が必要であり、総合計画を基にしたPDCAサイクルを構築する必要がある。行政評価をもとに庁内の課・部、トップが互いに課題を認識し問題を解決のための答えを見つけられるか。評価結果を公表して、議会・住民とともに互いに問題を共有し互いに解決の答えを見つけるようにすることが必要だ、との認識が示され総合計画の重要性に加え行政評価評価システム(※)を連携させることで行政経営がより効率的になるとの認識が示されていた。

 しかし、行政評価は6割の自治体が導入しているが、休止しているのが8.1%あるなど有効に使われていない例もある。行政評価は、作るのが目的ではない。正しい仕組みになっているか、目的にたいして適切なシステムなのか導入目的を考えてみることが重要だ。有効にならない理由に、職員のやらされ感、負担感が蔓延していることがあるが、これは行政評価のシステムがまちの将来ビジョンに結びついていないことや行政内部で評価に基づく議論がされていないことが大きい。
 そして、評価は意思決定ではない。評価に基づいて誰が決定するかといえば、首長でしかない。課長で判断できるのは改善。首長が判断するのが改革になる。首長が評価をして意思決定をすることが重要だ、と現状の多くの自治体で行政評価を活かしきれていない原因も示されていた。武蔵野市でも参考になるかと思った。

■総合計画の問題点

 一方で総合計画には、事務事業の優先順位を作らないと施策の重複やモレが出てくるもの。そして、住民 職員に浸透していないこと。計画が達成できたかの判断基準がないこと。財源の裏づけがはっきりしていないので実施ができないことも多い。総合計画の作り方を変えないと経営型にはならない、との問題点の指摘もあった。
 対策としては、総合計画を作成するには策定の2年前程度の期間をかけて住民と課題や将来像を議論する必要がある。執行部内では、自分たちで作ったとの価値観が得られるように課長職、課長補佐クラスの参加も必要。そして、総合計画で示された優先されるべき施策(※)に基づいて事務事業の優先順位を変えるべき。事業仕分けが注目されているが、事業が終わってからではなく総合計画で実施前から考えるべきだ。基本計画の下位には、実施計画があるが、これは優先度の高い事務事業の進行管理に使うべき。いろいろな計画があると混乱になる。それぞれの役目を整理し統合すべきだ。
 また、企画と財政が別次元で動かしていることが多い。予算を部課ごとへの配分ではなく基本計画にそって重点施策への優先配分(※)するように変えるべきだ。重点とそのほかの事業に分けていく必要があるとの指摘もあった。

■決算委員会と行政評価

 行政評価を導入している自治体では、行政評価とは別に決算のための業務を行っていることが多いが、この二重業務をなくすことも必要だとの指摘があり、この決算委員会を行政評価の場にするべきではないか、との提案もあった。
 庁内で行政評価の一次評価を行い、議会の決算委員会での審議結果と執行部により二次評価を行う。評価の観点には総合計画の目的達成に向かっているかどうかで考えていくこと。このことが決算認定のレベルをあげることにもなると指摘していた。

 確かに決算委員会の位置づけが不明確であり、せっかく行われている行政評価(武蔵野市では事務事業評価のみ)と決算との関係が不明確なこともあるのでこのようなシステムにすべきだとも思った。市役所のなかで決算のための業務と行政評価の業務が別々に行われているのもムダといえるのかもしれない。当然だが予算とも連携していくことで、業務の効率化にもなるのではないだろうか。

■総合計画と行政評価

 この日に事例報告として実際のこのように行っている熊本県合志市からの報告があった。合志市では、総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)の政策・施策と連動させた行政評価システムを構築し、さらに予算までを連携することで予算の効率化も図ったシステムとしているとの報告だった。総合計画は、計画を作ったらそのままとの話を聞くことが多いが、毎年の評価を行うことで進行管理を行うとの考えだ。さらに、市長のマニフェストも総合計画に位置付けることにより、選挙での影響も考えている計画なのだそうだ。
 報告をしていた職員の方は、総合計画はあったものも机の中にしまれてしまい、“つまらないもの”となっていた。そのため、建築物などには設計図と同じように総合計画を考え、行政評価も連携するようにした。このことで、大変と職員から不満ややらされ感もあったが、職員間の共通言語になったとそのメリットも話されていた。

 また、行政評価のシートには議会からの項目もあった。例えば、施策マネジメントシートの20年度の政策「みんな元気で笑顔あふれるまちづくり」の施策「子どもを見守り、育てる地域づくり」の評価シートには議会の決算審査における指摘事項として
・保育園、学童保育の充実を図ること。
・子ども見守り隊への支援強化を行うこと。
・関係各課の連携を十分行うこと。
・日本一の子育て支援の定義の明確化(行政、市民、企業の役割)をはかること。
・アンケートの実施だけでなく実態把握を行う必要がある。
と記載されていた。総合計画と行政評価、議会の決算が連携している実例だ。

■危機感のなかった豊田市 

 事例報告には豊田市役所からもあった。報告に立った豊田市の職員は、行政評価は5年前に提案しても誰も見向いてくれなかった。潤沢な財政下で危機意識がなく、行政評価にはアレルギーがあった。市政は予算の消化でしかなく、財政の顔色伺いで動いていた。それが、トヨタショックによる税収減(一般会計の三分の1強の約600億円が入らなくなった)に対応するため事業費を削減しなくてはならなくなったが、財政は査定はできるが本当に削っていいのかの判断はできないという状況だった。企画と財政がともに考える必要があり行政評価を活用するようになったのだという。

 今後の課題は、行政評価が市民に伝わるようにすること。議会が関心を持つようにすべき。そして、議論が足りないとされていた。市民のことを思っても削減に踏み出せない、判断するよりどころがないからで、何が重要でどこまでできるかを見極めることができないからだ。市民、議会と議論するベースに行政評価があり、トヨタショックでようやく行政評価のスタートラインにたったと思う。これからはパフォーマンスの高い自治体になれると信じていると報告されていた。他人事ではないな、と思った報告だった。

■武蔵野市の場合は…

 トヨタ市の報告を聞いていて思ったのは、財源が厳しくなってから考えるのではなく、普段から行っていることで効率的な市政運営ができるということだろう。なんとなく予算を消化していることでムダになっていないか。その財源をほかにもっと使えるはず、との観点も必要なのだろうということだ。
 そして、総合計画から評価を行うことを前提にしておくべきだと思った。計画はあれこれと作ったけれど、その後どうなったか分からないことが多くないだろうか。この前計画を作ったのに、また計画を作るの? ということはないだろうか。 
 計画とはそもそも何のためか。目標を達成するためにつくるのであって、そのためには進行管理をしっかりしないと達成できないはずだ。だから行政評価を組み込んだ計画を作るべきではないか、と思う。このことはこれまでにも議会で提案しており、一部の計画では取り入れられているが、武蔵野市で策定が始まった第五期基本構想・長期計画でも取り入れるべきだ。

 今回のセミナーでは総合計画との連携の実例を聞くことができ非常に参考になった。評価を“商売”にする会社のセミナーなので、多少大風呂敷なこともあると思うが、伝えたいことは正しいと思う。行政評価は自治体によりシステムや観点は異なり、ほかの事例がそのまま導入するわけにはならないが、基本的な考え方は参考になるはずだ。

※施策
 行政の政策体系は目指すべき方向、目標を示す大項目となる「政策」。実現するための方法で中項目になる「施策」。目標を達成する具体的な事業で小項目となる「事務事業」の3層構造に分けられている。大雑把に言えば、子どもが元気にそだつまち(政策)-子育て支援の拡充(施策)-保育園(事務事業)などになる。

※行政評価
 行政の事業や施策、活動について、必要性、有効性、効率性、コスト、達成度などの観点から数値などを使い客観的に評価・分析し改善を行うためのシステム。計画(plan)、実施(do)、評価(check)、改善(action)」というPDCAサイクルに組み込んで使う。

※施策への優先配分
 事務事業ごとの予算配分にするのではなく施策全体での予算で考えること。例えば、保育園課だけの予算の増減で考えるのではなく、子育て支援拡充という施策となれば、教育委員会や福祉での子ども事業も入り部課を横断して考えることになる(枠配分型予算)。部課同士の予算の取り合いから、市として目指すことが効率的に実現できるとされている。

【参考】
熊本県合志市 行政評価