学童を辞める率で考える保育の本質

6月にあった学童保育学会設立大会に参加してきた。総会なども含めて二日間の日程だったが、都合で参加したのは二日目のみ。運動とは別の研究者からの視点が伺えて参考になった一日だった。だが、当事者(現役保護者)も含めてだが、学童保育とは何か、どのようなことを期待しているのか、されているのかをもう少し考えたほうがいいのかも、と正直なところ思った大会だった。研究発表のなかで最も注目したのは、“学童を辞める率”の調査だった。これは保育の質へつながる重要なデータだと思う


 私が参加したのは、『放課後児童指導員の資格認定カリキュラムの開発』『学童保育指導員の労働と意識』『放課後子どもプランにおける学童保育の全国的実施状況』『保護者団体による「学童保育の質」の評価に関する研究活動-東京都・小金井市の事例報告-』の研究発表があった第二分科会と『学童保育実践をめぐる実践者と研究者の関係』の全体会。

 全体会は設立大会の最後をしめる意味を持つもので現場の指導員と研究者が連携することで、指導員の意識や保育内容がよりよくなるという実践例の報告となっていた。保育の中身をよりよくするためも多くの自治体で行ってほしい内容だった(参照『荒れる子どもとガチンコ勝負  子どもと育つ学童保育指導員』(フォーラム・A))。
 分科会は、研究者から見た実際の学童の検証ということもあり、いつもの視点と違うなと思うことが多かったのだが、そもそもの背景が分かっているのだろうかとの疑問もあった。

 例えば学童保育(武蔵野などでは学童クラブ)指導員のバーンアウト(仕事の燃え尽き症候群)の研究発表だ。教員を対象にした研究は聞いたことがあるが学童クラブ指導員を対象にしたのはおそらく初めてだと思うのだが、その結果よりも、そもそも仕事といえる給料を得ているのか。アルバイトと同じような給料、非正規が多いなかで燃え尽きるほど仕事をしているか、していないかと聞けるのだろうかというそもそもが分かっているのだろうかと疑問を持ったからだ。
 また、放課後子どもプランが始まっていらいの学童保育と放課後教室事業(全児童対策事業、武蔵野ではあそべえが近い事業)との連携を調査し、一体化が進んでいるのか。保育機能が残されているかの調査があったのだが、連携や一体化には財政難から進めている事例も多いことから、事業費での比較をしているのかと質問をしたところ、そのような観点はなく今後、考えてみたいとされていた。調査は非常に興味深いもので今後も続けて欲しいのだが、自治体の裏事情も考慮するとよりよい調査になると思えた。

 この分科会で最も参考になったのが『保護者団体による「学童保育の質」の評価に関する研究活動-東京都・小金井市の事例報告-』の研究発表で、学童保育で子どもがやめない率を算定し、質との関連を調べた調査発表だった。yamenai1

 報告者は国立教育政策研究所の橋本昭彦さん。自らの子どもが通う学童を民間委託したいと小金井市が発表したことから、単純な民間委託反対ではなく、質がどのように変わるのか、変わらないかで判断すべきと考え、子ども・保護者の視点から保護者へのアンケートなどを行った中での調査なのだそうだ。

 この民間委託での保護者がどのように考え、行動したかは『民間委託で学童保育はどうなるの?―親たちによる“学童保育の質”をめぐる調査・研究・政策提言』(公人社)で紹介されているので参照して欲しい。堅いタイトルだが内容は読みやすく、保護者、父母会とは何だろうと基本的なことを見直すにも良い内容となっている。
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 調査は、安全で楽しく毎日嫌がらずに通って欲しいが親の願いであり、質につながると考え、学童保育へ入所した子どもが途中で辞めていく率を調査したものだ。ただし、転入転居による途中入所や転居、待機児対策として1年生を優先させ2、3年が辞めるデータも集計されているので正確ではないとされていたが、学童保育の指導員が自らの業務を解析することはないことを考えれば、質を議論できるデータになったとされていた。他の課題としては辞める率の差の分析をして、何が違うかを検証すべきではとのコメントもあった。

 学童保育所は第二の家庭と言われる。通うことを嫌がる、辞めたいと子どもが言い出すことは家に帰りたくないということ。学童に何かの課題があることになるのだと思う。事業者側(市や運営主体)から見れば、顧客が逃げていくことにもなるのだから、あってはならないことで対策をしなければならないはずだ。武蔵野市の学童でも言えることだが、なぜ辞めていくのかをもっと真剣に考え、保育内容を検証し改善していくことでより良い内容になり、ひいては子育て支援、少子化対策にもなるはずだ。

 辞めたいのならどうぞという行政。辞めてもいい、あるいは塾でも代わりにいくか、と考えてしまう保護者。指導員も含めてそれぞれが、今一度、辞めたい理由を考えるべきだと思う。そこに学童保育の本質があるはずだからだ。税金を投入している以上、よりよい内容にしなければならない。それでいいや、では無駄になってしまうことも考えるべきだろう。子どもが毎日行きたがる、そんな学童保育こそ今必要なのだと思う。施設を整備したから良くなる、民間委託が良い悪いという次元の話ではないのだ。
 調査の概要は画像のとおり。学童保育の本質を考えるきっかけとして参考になる数値だと思う。ちなみに、武蔵野市の辞めない率(残留率)は、72.9%と77.3%。他市と比較するといいほうだが、小金井市の79.4%、86.0%と比較すれば低い。その理由を検証する必要があるだろう。ざっと見ただけだが、父母会や父母会の連絡協議会が元気な自治体ほど率が高いように思える。保育内容だけではなく、保護者とのかかわりも検証する必要がありそうだ。

 余談だが、橋本さんとは旧知の間柄だったが、仕事までは知らなかった。あらためていろいろな人がいて、地域には人材が豊富なのだと思った。小金井市の学童の民間委託はまだ流動的だが、いろいろな人材を活かして良い保育へとつなげてほしいと思う。

画像は橋本さんの当日資料より多摩地区の学童のやめていく率

民間委託で学童保育はどうなるの?―親たちによる“学童保育の質”をめぐる調査・研究・政策提言民間委託で学童保育はどうなるの?―親たちによる“学童保育の質”をめぐる調査・研究・政策提言
著者:東京小金井の親たち
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