議会と総合計画、議決

議会と総合計画(武蔵野市では基本構想と長期計画)のかかわり方について、西寺雅也山梨学院大学教授の話を伺ってきた。西寺さんは地方自治が専門。大学では地域経営論を担当している。元の多治見市長で市議を5期努められた後、市長を三期、努められた。市長時代には市政改革を行い、飾りとも言われることがある総合計画を総合計画を見直し、行政全般をコントロールする計画にしたことで知られている。その西寺さんは、現役時代は行政ががんばっていれば良いと思っていたが、今では、議会のかかわり方が重要との認識なっていると話されていた。



■総合計画で行政をコントロールする

 西寺さんは市長時代は議会とは決していい関係ではなかった。自分さえ良ければ、行政はよくなると思っていたが、最近では極端な市長が登場し市長が自ら議会を解散させようとしていることなどにショックを受けているとして、改めで議会の重要性を認識しているという。

 また、法律で自治体に策定が義務付けられ議決を必要としている総合計画(※)の基本構想について、地域主権の流れのなかで義務付けをやめようとなってきた。現職の頃、改革派の首長からは、いらないとの話しをよく聞いていたこともあり、そういう流れで総合計画はいらないと議論が進んでいるのだろうが、おかしいと思う。
 義務付けがなくなると議会の関わりがはなくなってしまう。議会の位置が変わってしまいまずいことになる。首長が自分の意思のままで市制を経営することが許されるのか、と疑問を示していた。

 西寺さんは、結論からいえば総合計画によって行政がやる全体をコントロールすることが必要になると考えている。理由は、これからは人口の縮小し働く人も減る一方で高齢化が進み財政が縮小時代になっていく。拡大はしない。そのなかでひとつひとつの事務事業を今のままやっていくべきか。事業を必要か廃止で仕分けることになり、必要でも拡大か維持か、縮小か、担い手を変えるかを考えなくてはならない。行政関係者なら分かるが、利害関係者がいる各事業をどのように調整して止めるのか。部や課で選択するのか。行政ができるのだろうか。
 右肩上がり経済の時代には、いろいろ入れても何とかはなったかが時代は変わった。どの政策に優先順位を高くするか、何よって選ぶかは総合計画でやるしかない。総合計画は、選択は誰がするのかが問われることになる。

 重要なのは、住民とどのように合意をしていくかで、そこには議会が重要になる。限られた財源の選択と集中をするには、市民、議会、行政の間での合意が不可欠だ。そのためには、基本計画まで議会がかかわり議決にすることが必要で市民、職員、議会の参加も必要だ。
 そして、市民との約束事として示すべきだ。総合計画に書いたことはしっかりやる。書かないことはやらないが原則だ。なかなかできないのが現状だが原則は確立すべきだろう。と多治見市の総合計画の設計や自信の経験や思いを話されていた。

■総合計画はなぜ役にたたないか

 さらに、多くの自治体で作られている総合計画の課題についても指摘されていた。

 総合計画は役に立たないといわれるが、それは各課から積み上げたものを書き込むだけのもので、そこに選択がなかったり各課の計画がそのまま総合計画になってしまうからだ。逆に企画課で選んでしまうものも、現場と切れてしまうパターンとなり、どちらも機能しにくい総合計画になる。

 議員時代に行政を見ていて気になったのは、総合計画をいじらなくてやってしまうことが多かったことだ。土地が買えるから何かやろうとういうこともあった。今まで、総合計画にもどこにも想定されていなかった事業が、とつぜん主要事業計画書に出てくることがあった。それらは、国会議員やまちの有力者、議員、あるいは首長の思いつきで事業が始まっていた。だから、これからの財政縮小時代を考えれば、首長も総合計画に縛られる、コントロールする必要があると考えついた。

 特に首長の任期が4年に対して、計画が10年であることは問題だとされていた。首長の交代があった場合、特に前任者を批判して当選した場合は、前任者の計画を無視することになる。それでいいのだろうか。そのため、多治見市では首長の任期中に一回は見直すようにしている。
 北川正恭さん(マニフェスト研究所所長。元三重県知事)は、総合計画は役人の作文で、任期の4年間に何をするかを有権者と約束したマニフェストが優先されるべきと主張されているが、現場は総合計画とマニフェストの二重構造になり困ってしまう。総合計画が10年単位で改定が5年で考えられているならばそうだろうが、多治見市のように4年ごと、任期中に見直しするようにすべきだ。首長のマニフェストは事前には検証されることはない。総合計画へ反映するときに議会の議決によって取捨選択すれば検証にもなるのではないか、との提案もされていた。

■なぜ議員が反対するか

 経験から言えるのは、このような総合計画にすることを批判するのは議員だ。理由は、口利きができなくなるから。議員の要求に、職員が計画に書いていないからできないと断ると怒り出してしまうほどだ。多治見市では当初、議会がこのような計画や基本計画への議決を嫌がったが、それは、縮小へのアレルギーがあることや失敗は首長のせいにでき、批判材料にできるからだ。議会とは財政の危機感を共有できるかがポイントになる。でないと議会は状況を受け入れる素地がない、との話も非常に興味深かった。多治見市議会は、今では基本計画も議決に加え、議会基本条例も制定している。
 

※総合計画は、基本構想、基本計画、実施計画の三層構造を総じて言うことが多い。
多治見市の総合計画は、
めざすまちの将来像を定める『基本構想』。
その目的を達成するための手段(事業)である『基本計画』。
その手段の具体的な進め方を示す『実行計画』 で構成されている。
多治見市総合計画より)

武蔵野市の場合は、基本構想は同じだが基本計画ではなく長期計画としている。実施計画は、各事業の個別計画との位置づけ。

★確かに改革派の首長には総合計画よりもマニフェストが重要と考えることが多いと思う。そのために、総合計画は不要と考えているのが今の国の流れ(策定と義務化をなくすこと)だろう。しかし、現場は実情は別としても総合計画を元に運営を行っている。そのぶつかり合いを回避する意味でも多治見市の総合計画や西寺さんの提案は意味深いと思う。

 ここでよく考えておかなくてはならないのは、民主主義は暴走するということだ。いい人が首長であればいいが、選挙だけうまくて自己利益の追求や自己満足を優先させてしまう首長が登場した場合、なかなか歯止めが利かない場合も考えられる。議会が本来は抑止になるのだが、議会多数と手を組めば本来の力を発揮しないことも考えられる。首長の提案、考えを総合計画に反映するときに市民や議会を議論をすることで本当に必要なのか、課題は何かを浮かび上がらせよりよい事業につながることなるはずだ。

 首長が好き勝手にやって、良いこともできるがダメなこともある。特に財政が厳しくなる今後を考えた場合には、好き勝手にはできないとの考えにたって総合計画で公正に判断しよう、という考えが西寺さんの提案であり多治見市の総合計画なのだろう。好き勝手にやったことが、多くの自治体の財政危機の原因との考えも反映されているのだと思う。

 そして、総合計画の基本理念となる基本構想だけの議決では、行政をコントロールすることが難しい。実際の個別事業の政策的な目標を示したり横断的に連携させるために基本計画を議会の議決にすべきだと思う。首長だけが自治体の運営を決めるのではなく、市民代表としての議会も関与することで、市民が間接的に関与する、自治を担うべき市民が参画する総合計画にすべきだ。
 市民参加により総合計画が策定されたとしても、それはあくまでも首長の計画だ。議案として議会に提出されるときには、最終的に首長が修正して提出されるのがほとんどだろう。策定に公募市民が参加したとしても、選挙で選ばれた人でないと市民の計画というには、正当性が難しいともいえる。総合計画が市民自治による計画にすること。首長や行政のための計画ではなく、自治体全体の総合計画にするためにも、基本計画への議決が必要になると思う。

 当然だが、議会が好き勝手に数頼みに否決したり、修正することはあってはならない。財政や市民の考えを議会自ら調査、検証したうえで、議員の主張をぶつけるだけではなく、何が最善かを党派を超えて議会全体として判断をすべきだ。その判断や議論の過程も常に市民の目の前で公開して行うことで市民の関心も高くなり、市民のための計画になるのでないだろうか。議会の責任も重くなることでもある。

 自治体によって、基本構想や基本計画の作り方が異なるので議決にすれば一律にいいのではないが、議会も責任を持って、自治体の将来を議論によって決めると計画にすべきだと思う。それが本来の総合計画になるのだと思った。

 今回の話は、議員力検定の講座で伺ったもの。コーディネーターの江藤俊昭山梨学院大学法学部教授は、総合計画の基本計画を議決事件として追加している議会が多くなってきている。このことは、形式的ではなく地域経営に責任を持つことを宣言したものだ、議会改革の先駆的な議会ほど地域経営を真剣に考えている。例えば、北海道栗山町では、総合計画審議会メンバーと議会案を示した議会と議論をして修正を出している。京丹後市議会でも100項目に近い修正をしているが、どちらも議会が住民と議論をしているからできること。議会への住民参加が必要になる、と話されていたことも重要だ。

 武蔵野市議会は、今年度から策定される第五期基本構想・長期計画の長期計画部分も議決すること決めている。詳細は今後。

【参考】
 視察報告 多治見市議会の議会基本条例