公立保育園のガイドライン

 武蔵野市の公立保育園の保育のガイドラインが公表されている。中身を読むと、細かいところで気になるところはあるものの、どのように保育を行っているかなどが分かりやすくなっていて良いものだと思う。残念に思うのは、このようなガイドラインを作っていることをなぜ広く知らせようとしないかだ。関係者だけが分かっていればいいのではなく保育園とは関係がない人にまでこのような保育をやっていると胸を張って伝えないのか、ということ。保育園への理解が広がるはずだ。今の保護者がこの中身を知っているのか。そして、ガイドラインによって武蔵野市の保育がどうなかも気になる。


 市のサイトでは、ガイドラインについて次のように説明している。
『本ガイドラインは、平成16 年度から平成18 年度まで実施された「武蔵野市公立保育園改革計画」において「保育の質の向上」の取組として位置づけられて作成したものです。 作成にあたっては、保育課・保育園の職員で検討チームを設置し、保育所保育指針を基に、これまでの武蔵野市での保育の実践を中心に検討を行い、基本となる事項をガイドラインとして定めたものです。
 各園においては、本ガイドラインを基本とし、それぞれの取組に対しては各種マニュアルを整備し、日々の保育を実践することとしています。
 平成19 年3 月に第1 版として作成しましたが、平成21 年4 月1 日より保育所保育指針が改定されて施行されたこと、また第四期長期計画・調整計画の分野別アクションプランである「第三次子どもプラン武蔵野」が平成22 年度から26 年度までの計画として策定されたことを受け、内容の一部改訂を行いました』

■問われている質を示すもの 保護者は知っているのか

 いわば公立保育園の存在意義が問われている時期に作成され、さらに委託かどうかで騒ぎになっているさなかに改訂されたものだ。保育の質が問われているなかで、公立保育園の保育内容、質を示したともいえる。それをなぜ今まで公表していなかったのだろうか。

 詳細は実際のガイドラインを見てもらいたいが、給食の食材の選び方についても『食材の産地や流通経路を調査し、良質で安心できるものを使用する。また、できるだけ添加物の少ない食品、非遺伝子組み換え食品、旬の食材、国産品を選択する』、『武蔵野市立保育園独自のものとする』などとかなりのこだわりも見せている。このような保育を武蔵野市が行っていることがどれだけ保護者、そして多くの市民に伝わっているのだろうか。
 公立保育園にはコストがかかりすぎるとの批判は多い。そのコストに見合う内容なのかも問われているのだから、もっと積極的に公表すべきだ。市のサイトのトップページの更新情報でも知らされていないし、議会にも報告されていないのだ。何か理由があるのだろうか? 中身を見ればこのような保育をしていると胸を張って示しても問題はないと思うのに残念だ。

■認可は公立だけではない

 公立保育園の委託問題では、公立保育園を守れとの主張があったが、公立の何を守ればいいのか。公立保育士の身分・給料以外に具体的に示されていなかったことを考えれば、このガイドラインは貴重な判断材料になったと思う(改定される前の中身は公表されていないから分からないのだが)。そして、市が出資する財団法人子ども協会へ公立保育園を委託した場合、ガイドラインで示されている内容がどのように変わるのか、変わらないのか。あるいは良くなるのか、悪くなるか、これらを判断する重要な役目を果たすことにもなるはずだ。

 ガイドラインには下記のように『市における認可保育所の役割』を具体的に示している。

(1) 児童祉法に基づく児童福祉施設として保育に欠ける乳幼児の保育を行う役割
(2) 地域の他機関との協働的支援と保育行政と連動したネットワークの組織としての役割
(3) 地域の子育て支援の拠点としての役割
(4) 養育困難ケースの対応を行う保育施設としての役割
(5) 災害発生時の社会福祉施設としての役割

 市内には公設(公立)と民設の認可保育園があり、今後は子ども協会設立の認可保育園ができることになる。認可保育園への申し込みは、園にするのではなく市役所に申し込み、希望はできるものの各認可保育園へ市が振り分けるステムとなっている。つまり、公設、民設、子ども協会の認可保育園を保護者は選べない。保育料も同じである以上、保育内容に差があってはならないはずだ。その意味から考えれば、多少の差はあるにしても、保育内容、ガイドラインはどの認可保育園でも同じように保障されなくてはならない、となる。そして、保障するにはどのようなことが必要かが問われるはずだ。

 ガイドラインには冒頭に『作成にあたっては、保育課・保育園の職員で検討チームを設置し、保育所保育指針を基に、これまでの武蔵野市での保育の実践を中心に検討を行い、基本となる事項をガイドラインとして定めたもの』とある。つまりは、市と公立保育士(公務員)が作成したということだ。冊子のタイトルは「保育のガイドライン」ともある。

■ガイドラインの今後

 ガイドラインには、民間のと比較や作成することにより何がどのようになるのか、制度的にどのように保障するのか。評価手法など細かなことで気になることは多いが今後の課題だろう。そのことよりも、このガイドラインを元に武蔵野市のめざす保育はこうあるべき。そのためにどのように制度設計をするか。さらには子ども環境をより良くすることへつながるガイドラインとしていくべきだろう。そして、市全体の子どもの環境を良くするためのリード役が、ガイドラインを作成した公立保育園になるのではないだろうか。そうでなければ、公立の意味、公務員である意味がなくなってしまうと思う。ガイドライン、公立保育園のミッションも示すべきだと思う。

 何はともあれ、今まで公表されていなかったものを公表したことは、内容も含めてまずは評価したい。

【参考】
公立保育園の保育のガイドライン (PDF)