マンション紛争  調停会の限界

 7月2日に開催されたまちづくり条例に基づく調整会を傍聴してきた。この日の調整はは2件。境南町1丁目のスーパー跡地のマンション建設と吉祥寺図書館東側、青山外科跡地に予定されているマンション建設にともなう近隣住民との調整だ。結論から言えば、住民側に不満が残った調整内容だと思う。しかし、事業者にも利益を上げる必要があること。あくまでも法律の範囲内で双方の歩み寄りが前提となるため、一定の歩み寄りを示した事業者を評価することも必要だろう。強制力のない現状では、この日の内容が限界ではないかと思った。今回の調整にあたって、委員長が両者の言い分は分かる。用途地域の矛盾が出ており、制度的な欠陥があると発言していたことがなによりだろう。



 調整会は『開発事業に関して近隣関係住民と開発事業者の意見が当事者間で調整できないときに、それらの意見の整理、調整を行うための会議です。(近隣関係住民とは、開発区域から20m又は建物の高さの2倍の距離どちらか長い範囲内に住んでいる人、事業を営む人、土地又は建物の所有者などをいいます)』(市のサイトより)というもので、市の職員ではない第三者(学識経験者と公募市民)によって構成されているまちづくり委員会が主催するものだ。

□境南町 6階建てマンション

 この日の調整のひとつは、境南町1丁目1-1に予定されている(仮称)センチュリー境南?新築工事。
 連雀通りの塚交差点に隣接し都道3・3・6号線予定地に隣接していたスーパー跡地に計画されている地上6階のマンションに対して、環境や景観、日影、プライバシー、ビル風などの問題からここに6階建てを造ることは住民軽視であり環境、モラル、武蔵野市のまちづくりの考え、方針からも考えられないとしてまちづくり委員会に意見書が出されていた。
 この意見書に対して事業者側は、6階は予定通りにする。プライバシーや音の発生などへの配慮をさらに行う。ビル風は、この規模の建築物では義務付けがなく3・3・6号線が経過屈されていることもあり予想が困難なため行わない、というものだった。

 柳沢厚調整会委員長は、両者の意見の後、第一種低層住居専用地域(80/40)第1種高度地域と近隣商業地域第2種高度地区(300/80)第2種高度地域の両地域にまたがることもあり、制度的な欠陥があると指摘。主要な論点を整理した後に、6階部分をなくすことについては、互いの歩み寄りが前提の調整会なので、調整ができないと判断する。立体駐車場の音については、心配がないといえる情報提供を行うことが今後の検討課題と指摘し調整会を終了するとしていた。

 
□吉祥寺 青山外科跡地マンション

 もうひとつの調整は、吉祥寺図書館の東側にあった青山外科の跡地、約100坪の敷地に予定されている22戸のマンションについてだった。
 近隣住民からの要望は施設の規模ではなく、周辺の商業の活性化のために一階を店舗にして欲しいこと。分譲ではなく賃貸マンションにして欲しいこと、屋上緑化を計画しているが、屋上では効果が少なく目に見える地上にするべきではないか。屋上の駐輪場も疑問というのが主なものだった。

 賃貸を望む理由は、この地域は30数年間環境浄化に取り組んできており、ストリップやラブホテル、風俗店などへの反対運動に取り組んできている。分譲にしてしまうとどのような人が持ち主か分からなくなり、違法な風俗に使われてしまわないか不安があるため、違法なことが行われないように契約を解除できることや将来の建替えや管理面も考えて賃貸にして欲しい。仮に分譲するとしても、問題が起きた場合の責任の所在をはっきりできるように管理組合の理事長と話し合いができる形態にして欲しいというものだった。
 
 これらの意見に対して事業者側は、浄化運動の苦労を理解したうえで誠実に応じたい。賃貸か分譲は決めかねている。当社は、吉祥寺地区で他の物件を持っており、できれば賃貸にしたいが、今の経済状況を考えれば、できる限りとしかいえない。判断するのは今年の12月までにしたい。分譲にした場合、管理組合は設置し近隣への窓口はできる。だが、執行に責任を取れる管理組合はないと思う。責任の所在は所有者になるのではないか。
 1階に店舗の考えはない。店舗が埋まる自信がないし、分譲となると店舗は売りづらい。SOHOを想定し販売か賃貸にしたい。
 緑化はできるだけ増やしており屋上も駐輪場以外は緑化している。マンションの周囲の敷地を道路として提供しており1m下がっている。下がらなくていいのなら別だが、現状では1階で空いているところはない、との見解となっていた。

 その後、住民側からは災害時に地域で相互支援をしようと活動をしているが、マンションが悩みのたね。災害時の相互救援、助け合いを考えられる管理体制や近隣とのいい関係を結んでもらうかを考えてもらいたい、との意見が出されたが、取組みができるか、管理組合に申し伝える事項か調べてみるとの返答となっていた。

 店舗については、周辺の店舗は賑わっているのだから調べて欲しいと再度の意見が出され、委員長からも1階に一部でも店舗ではダメだろうか? との質問があったが、我々は事業者であり事業として進めている。売れ残ったら、賃貸で埋まるかを考え最もリスクが少ないと考えれば可能性はまったくないとの返答となっていた。

 この後、休憩の時間をとり調整会としての意見として、分譲か賃貸かは経営上の判断で強制力はないが申し上げることとして、賃貸は積極的に検討するように。分譲になった場合、管理組合は任意だが初期段階から立ち上げるように誘導すること。屋上の駐輪場はいいのでないか。プライバシーへの処理、地上にはみ出ないように管理組合に伝えること。屋上の緑地はもヒートアイランドの対象なので無意味ではない。道路用地を緑化する議論があるが、歩行空間か緑かの議論では歩行を優先させるのはやむをえない。店舗は、努力はしてもらいたいが、明確にできないとしているので歩みよりはできない、と判断したいとの内容だった。

★調整内容を聞いていて思ったのは、調整内容は現状を考えれば的確だろうということだ。調整会自体に強制力がなく、また、事業者が法律に違反していない以上、多少の譲歩があったとしても、収益を上げなくてはならない事業者の言い分には理があり住民の希望にはならないのが現実だ。
 しかし、他のことでも思うのだが、双方が争う前にできることがなかったか、ということだ。境南町の場合は、敷地が一部分が近隣商業地域になっていることから6階が可能となっていた地域だ。現在が住宅や低層建築物であっても、区域の指定が住宅地ではないよう場合は、高層建築物がすでに建てられることは以前から分かっていたことだからだ。現状のうちに制限をかけるなどをしておけば、今回のようなことは起きなかったのかかもしれないからだ。
 とはいえ、高層にできる区域であれば資産価値は高くなる。価値を下げてまで住んでいる人(土地の所有者)が納得するかとなれば別の話かもしれない。簡単には決められないだろうが、いま一度、自ら住んでいる地域がどのような指定になっており、どのような建築が可能なのかを考えておく必要があったのだと思う。今回の境南町のマンションだけではなく、他にも同じような地域があり、今後も同じようなことが起きる可能性があるからだ。建設計画が始まってからでは、今回と同じことになってしまうかもしれない。

 吉祥寺のケースは考えさせられた。住民の主張はよく分かるし、今後の懸念もそのとおりだと思う。しかし、ではどうすればいいか、といわれてしまうと案を持っていないからだ。ワンルームマンションの建設を規制している自治体の例は知っているが、家族用で分譲され、さらに転売となれば、どうしようもないのが現状だと思う。怪しい商売に使うのではなくても権利関係が複雑になれば、建替えの同意も簡単に得られず、できなくなってしまうことも十分考えられる。そのようなマンションも多いのではないだろうか。違法な商売を規制するには、そもそも法律にそって営業しようとしていないのだから簡単には防げないのだと思う。

 この日は調整会の限界を見たように思う。では、具体的な何をすべきか、その即効的な答えを持っていないのは自分としては悩むところだ。本来は、もめごとが起きる前に、この地域はこのような地域という明確な規制、計画を作っておくべきなのだろうが、実際にできるのだろうか。その意味では現在、改定が進められている都市マスタープラン(将来のあるべき姿を具体的に示したまちづくりの基本構想)が重要になるのだが、いまひとつ注目されていないことも気にかかっている。

【参考】
武蔵野市都市マスタープラン