御船町の改革  まちづくりは住民、議会、執行部のバランスで

 国政でのマニフェストは色あせているかもしれないが、マニフェスト=政策を中心とした改革を続けいる熊本県上益城郡御船町の話を伺ってきた。伺ったのは山本孝二御船町長と田中隆敏議長。行政の長と議会の長、それぞれから行政と議会、そして、町がどのように変わったのかがテーマだ。
 
 山本町長は現在、一期目。町長選挙では、マニフェストを前面に掲げて当選。庁内だけではなく町民などによるマニフェスト実行部隊を作り、年に二回の検証大会(まちづくり大会)を開き、町民との集会を数多く開催し町民に情報を伝え協議することでまちを元気にしようとしてきている。
 町議会も議会不要論があるなか、議会報告会を実施し町民との直接対話や通年議会の実施などの改革を行い二元代表制の一翼を担うようになっているという。



 話を伺ったのは、熊本県で行われたローカルマニフェスト推進議員連盟の研修会。同連盟の顧問・北川正恭早稲田大学院教授から、議員は組織団体の代表、御用聞きからの脱却をしなくてはならない。客観的にみれば、いらないか汚いといわれるのが地方議会。自ら変わる必要がある。堂々と二元代表の一翼を担うべきだとの基調的な話があり、町長と議長からの報告となった。

□まちづくりは住民、議会、執行部のバランス

yamamoto2 山本町長からは、マニフェスト型(目標達成型)の行政運営には、いい面と課題があるが、結論を言えば、まちづくりは住民、議会、執行部の三者のバランスでなりたつ。議会からは町民だけに話を聞いて議会の意見を聞かないと言われ、町民からは行政が決めてしまっていると批判があった。課題の協議をしても反対はあり、どこまでやればいいのかの課題もある。いつかは決めないと終わりがない。その一方で、行政だけ決めるのでは民主主義にならない。三者のバランスをいかに図っていくかが重要だ。
 
 しかし、議会と町民には情報などの差がある。二元代表制なのに、文句は全部執行部にくることもある。このいびつな三角形を正三角形にするために、年間54回にものぼるミニ集会を始め、情報を提供することで今では町民の情報が多くなっている。このことはまた、それまでの町民と議会のバランスが崩れることになり、議会は不要とにならないかと議会が考え、議会報告会が始まっているとの話もあった。

 そして、地域主権には住民のパワーが必要だ。そのパワーを発揮できる場を提供するのは行政の仕事ではないか。三角形の頂点しか行政は見ない。底辺の不安材料などを浮き上がらせて解決を考えることが必要。そう決めると公務員は進んでいくもの。公務員は決まると早い。町民を迷わせてはいけない。一番いけないのは情報が伝わっていないこと。町内を回って説明している 正しい情報を伝えることだと自らの行政運営の手法を話されていた。

 そのうえで 町民、議会、行政の三者がそれぞれ自分が何ができるかを問わないと変わらない。批判がないわけではないが、町民ができることは町民でとなった。施設の管理運営会社を立ち上がるなど雇用の場も生まれている。今では町民がしたいこと、やりたいこと、ひとつでも目標をつくり何をするか、それぞれマニフェストを作ることを行っている。やりたいことを誰でもひとつはもっているもの。夢を掲げて達成していくことで、まちが元気になると報告されていた。

□議会報告会で議員の資質が向上

tanaka 田中議長からは、行政が町民と近くなっていくなか議会がどのように変化、改革されたのかの報告だった。
 話のなかで今の改革のきっかけになったのは北海道栗山町への視察だったと話されていた。山本町長は元議会事務局長で、議員と一緒に栗山に研修にいっている。そこで、議員は何をすべきか。まちに何をするのかを研修してきた。視察の後で町民から議会の視察報告会をすべきと提案を受けたが、行うかどうかすぐに判断ができなかったが、やってみて都合が悪いことがあれば改善すればいいじゃないかと判断してやってみることにした。やってみることで自信になり、これが大きな力になっている。

 町長が当選されてミニ集会を行い、町民と近くなっていたったが議会はそうではなかった。視察は旅行と思われていたり、テレビ番組で報道されているようにこのままでは議会がいらなくなると町民から言われたこともあった。視察だけではなく予算審議などの議会報告会を行っていくことで、今は町民のための議会であると思っている。報告会は、議会が何をしているか分からないという町民の不審を払拭することになっている。
 また、報告会があることで、執行部に質問するだけの議会から報告を前提にする質問となり議員の資質が向上している。議会は住民の意見を市政に反映しようとしているとの認識も話されていた。

□悪いのは議会と非公開で談合すること

kitagawa 山本町長と田中議長の報告を聞いた後で北川教授は、マスコミウケけではなく本気で町を変えようと首長が思えば議会も変わる。経験から言えることだが、これまでの議会が悪いのではなく、執行部がまるめ込もうとすること、議会と妥協することが最も悪い。執行部が議会と談合してきただけ、非公開で決めてきただけだ。どのような目標を達成するかという政策中心型、マニフェスト型の町政にすればまちはかわる。町長が変わったら議員も気がついた。これまでを乗り越えられたいい事例が御船町だ。議会がしっかりしたら執行部もしっかりする。楽な道ではないが、市民のために首長も議会も覚悟をきめることだ、と話を結んでいた。

□地域主権で議会の必要性

 研修会の冒頭では、北川教授から国の地域主権への考え方についての基調講演があった。
 主な内容は、現在では執行者に権限が集まっている。高度成長時代は検証するだけ、チェックするだけでやってこれたことから、このの機構に落とし込まれていた。地域主権会議のメンバーには、地域主権時代には選択された首長が議会にチェックされなくてはならないのか。執行権者だけ残して議会はいらないとの流れに収斂してきている。一方で世界的にみれば、議会が執行権もかねるのが主流だろう。

 これまで調査をしてきたが、自治体の全体の将来を考えている職員は少数。そういう組織、システムになっている。部課長になればその部課の予算・権限を増やすことが使命、プライオリティになっている。その結果が結果が借金まみれだ。部課長は一所懸命やっていても、合わせてみるとだめになっていることが多い。互いに甘えていることが今の日本で、責任のいったんは議員にもあることを自覚すべきだ。議会のあり方は執行のあり方になる。議会がいらないか。執行がいらないかになるのではないか。
 いずれにせよ、情報非公開で行われてきた執行や議会が批判されるのはあたりまえだ、と手厳しい話だった。

 参議院選挙が行われていることから、地域主権の戦略会議などは中休み状態のようだが、結果にかかわらず地域主権、あるいは地方分権は進むに違いない。その時に、議会が必要なのか。その前に何をするのかが問われることもなるのではないだろうか。

★山本町長の話を聞いていて武蔵野でもヒントになるかと思ったのが、マニフェストの推進体制(政策の実現)を庁内だけではなく、外部の人材を入れることで進めようとしていることだった。
 
 山本町長は、マニフェストの実行にあたっては、職員上がりであったこともあり職員のよさを引き出そうと考えていたが実際には手探りだった。しかし、そこでとどまってはならない、お題目を並べても行動しないと始まらないと北川教授に指摘されたこともあり、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)のメンバーでローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表のジャーナリスト、神吉信之さんと年間契約でのアドバイザーを結び実行体制を固めたことでシステムが固まったとされていた。行政だけの視点、考えにならないようにとの考えだろう。

 武蔵野市では、多くの市民が参加する委員会があり研究者が多数参加している。しかし、計画が完成すればそこで終了というケースがほとんどだ。計画は作ればいいのではなく、実行して成果を出すことが求められていると考えれば、実行を検証することへも関わること。さらに、個別の計画だけではなくほかの計画との整合性を考える横断的な検証システムも必要ではないか、ということだ。御舟町でのマニフェスト実行部隊や検証大会にあたるものだ。事業を横断的に横串して検証できるシステムも必要だと思う。当然ながら、住民、議会、行政がかかわって、だ。

 住民に議会と同じ情報を発信していることも興味深い。聞いていなかった、知らなかったで問題になってしまう例があると思う。どのように伝えるか、住民自ら興味がないなどの課題はあるが、まずは発信することが重要なはずだ。
 地域主権とは地域が自ら決定し責任を負うこと。そのためには、行政任せではなく、住民、議会、行政が同じ情報を持ち、二者同士、三者で協議していくことが必要不可欠だと思う。行政から住民へと情報が今以上に伝わり協議の場が増えた場合(タウンミーティングなど)、yamamotoさらに、検証は住民でも可能であり監査法人でもできる(民間委託ともいえる)。携帯電話や地デジなどを使えば住民による投票システムも簡単にできてしまうことを考えれば、行政のチェックと議決が議会の仕事とは言っていられない。今の議会が取り残されないか、とも思った。

【参考】
山本孝二のマニフェスト

 写真は山本町長と。藤沢市での研修会でもお会いしている。議会、議員と市民との距離 市民と議員の条例づくり交流会議 in 九州 報告 その2 をご参照ください