市長が提案する議会改革案

 借金時計や副市長の公募で知られている三重県松坂市の山中光茂市長が市議会改革検討委員長宛に議会改革の提言を行った。議会は独立した機関であり、“軋轢”が起きないようにと市長や執行部から議会運営に口を出すことは聞いたことがないので異例だ。しかし、中身を読むとそのとおりと思うことが書かれていた。

 提言には、住民の意見を聞き住民に伝えるシステムを作ること。議会と行政の互いの住民への説明責任能力を高める工夫を求めていること。監視型議会から政策の実行型議会へと向かうこと。さらに、住民の責任についても考えてほしいと記載されていた。

 どのような経緯でこの提言になったのかは分からない。松坂市議会の対応も分からないが、松阪市議会議員の海住恒幸さんのブログによると、海住さんの提案も含めて通年議会や自由討議などさまざまな改革が検討されているようだ。市長に言われる前に議会が自ら変わらなくては、と思うが実際はどうなのだろう?

 行政が変わっていく時代であり、監視だけ、文句を言うだけの議会では、必要ないといわれてしまうのではないか、と私は思っている。議会も変わらなくてはならないはずだ。松坂市議会がどうなるか注目したい。

 市長の提言は下記。

          平成22年5月20日
議会改革検討委員会委員長 様
   議会改革に向けての提言
          松阪市長 山中光茂

<提言の趣旨>

 松阪市議会が今年度より議会改革検討委員会を設け、「住民視点」からの様々な議論が行われることは非常に望ましいことである。「行政の長」が市民から選挙で選ばれ、一方で行政をチェックする立場である「議員」も市民から選挙で選ばれるという「二元代表制」のもとで、両機関が住民からの信託に基づいているという制度のもとで地方自治は「住民」を基軸として推進されている。

 議会機能の強化と「住民視点」での適正な議会運営は、市民からの税金を事業として「執行」する行政運営により緊張感を持たせ、また住民意思を行政に強く反映させることにつながるといえる。今回の提言は、常に「現場」に関わる行政各部からの意見も取り入れながら、「現場視点」から今後の議会のあり方として検討していただきたい案件を提示させていただいた。

 議会改革を進めていただくうえで、予算や条例に関わる課題が出てくることは否めないが、行政としては議会の「住民視点」での前向きな改革に対しては一緒になって積極的に取り組ませていただきたいと考えている。

 以下の具体的な項目はあくまで「住民の市政への参画」とそれを通じての「住民の幸せ」につながると考えるために重点的な検討をお願いするものであり、今後議会改革検討委員会のなかで幅広く、積極的な議論と住民視点での「覚悟ある決断」を行っていただけることを強く期待するものである。

<具体的な提言内容>

?議会として「住民の声」を聴くシステムの構築

:松阪市では、「シンポジウム・システム」として様々な市政の重要案件について、行政決定を行う前に住民から声を聴く「意見聴取会」を行うようにしている。すでにいくつかの自治体議会で行われているが、議会としての「意見聴取会」のシステムを創ることで行政と議会がそれぞれの立場において、「住民の声」を聴くことで幅広く住民の幸せや痛みに寄り添える、全国に誇れる「住民の声とともに創られる松阪市」へつなげることができると考えているため、前向きな検討をいただきたい。

?議会の情報をより分かりやすく住民に伝えるシステムの構築

:松阪市においては、今年度から広聴広報機能の一元化を図り、住民への情報提供のあり方を徹底して強化していく方針を立てている。議会においても、様々な媒体を通じての議会情報の発信を強化するとともに、議員の本会議や委員会での議案に対しての質疑・討論の内容、賛否の状況などがより詳細に分かるような工夫が必要であると考える。
「休日夜間議会」を行うことは、平日に議会傍聴に来ることができない層への市政への関心を生むことにつながる。また、インターネット中継を採用することで自宅において、より多様な層が市議会に関心を持ち、傍聴することにつながるといえる。市議会ホームページに本会議における議会の賛否の状況などを載せることは、議員としての自分自身の判断を市民に説明責任を果たす大きな契機にもなる。
様々な手法を用いて市議会の情報を発信することで、「住民に身近な市議会」となることを検討いただきたい。

?本会議や委員会等における「形式主義」にこだわらない改革を

:本会議や委員会の進め方において、「形式」「慣例」にこだわらず、議員の方々にとって最も効果的な、そして住民の皆様にその中身が最も伝わりやすい議会運営のあり方を検討していただきたい。総括質問ではない一問一答方式や反問権の導入など、議会と行政の互いの住民への説明責任能力を高める様々な工夫についてメリット、デメリットを含めて検討を深めていただきたい。現在、理事者側が行っている提案説明のあり方についても、議員の方々が最も市政の情報を効果的に取り入れ、行政へのチェックを厳格にできるような手法を提案いただくことを期待する。

?「監視型議会」から「実行型議会」への期待
:行政を形式的にチェックするだけではなく、住民目線から行政に対して提案権・修正権を行使し、または付帯意見などを付して議決をするなど「実行型議会」の方向へ向かうことを期待している。委員会においても積極的に公聴会や参考人招致を制度として活用していただくことにより、住民の声を聴いたうえでの議会自らの意思形成を「実行」していくことのできる議会の制度設計を検討いただきたい。

<今後の議会と行政、そして住民との関係について>

 今年度は松阪市の「改革元年」と銘打たせていただくなかで、行政も議会も「住民の幸せ」という基軸を共有して住民のための改革を進めていく一年になると確信している。
 景気の低迷と高齢社会の進展により、税収が大幅に減る一方で、社会的なサービス給付の必要性は増大している。そのなかで、「公」は自らが果たす役割を改めて真剣に考えなくてはいけない一方で、住民の方々も行政や議会のあり方に対して無関心であってはならず、社会における「住民の責任」を考えていただく必要があると考えている。

 今後は、行政としては「自治基本条例」、議会としては「議会基本条例」の策定に向かうと考えられるが、その大きな目的として住民が直接的に市政運営に対して積極的な役割を果たしていただくことが大切であると考えている。

 行政を通じても、議会を通じても「住民の声」がこの街の「現実」と「次の世代」をしっかりと創っていけるような改革の「覚悟ある実行」を議会に対して期待するとともに、行政としてもその議会改革に対しての全面的なサポートとその改革に負けないような行財政改革に取り組むことを約束し、今回の提言とさせていただく。

(松坂市のサイトにあるPDF文書はこちら