議会がなくなると何が困るのか                     市民と議員の条例づくり交流会議 in 九州 報告 その3

 今回の市民と議員の条例づくり交流会議 in 九州で最も印象深かったのは、パネラーとして登壇していた市民の方から、議会がなくなると何が困るのかを知りたい、との発言だった。この疑問に対して、全ての議会、議員が明確に答を持っていなくてはならない。理想論ではなく、具体的に示さなくてはならないのだと改めて強く思った。



 全大会が終了した後は分科会となり、私は第一分科会の「議会・議員の実態を見せる」に参加した。
 この分科会は、『政策シンクタンク・東京財団が行った地方議員の活動実態調査報告を踏まえて、議会活動に関する議員の本音(理想と現実)をあけすけに語ってもらいます。それを市民がどう受け止めるか。議員活動が「見える」ようになったとき、市民と議会の関係はどう変わるかを考えます』というのが狙い。
 木下敏之東京財団上席研究員・元佐賀市長が調査の基調報告を行い、実践報告として来海恵子熊本県合志市議会議員、佐々木允福岡県田川市議会議員、戸波真也宗像青年会議所元理事長がパネラーとなりディスカッションするという内容だ。コーディネーターは、廣瀬克哉法政大学教授。

 ■議員の報酬 住民が何をして欲しいのかで決まる

 木下さんからは、日本の議員の報酬は多いといわれているが諸外国と比較すると確かに多い。だが、人口100万人あたりの議員数では多くはない。報酬が高いかどうかを判断するには、活動の実態が分からないと水掛け論になるので、アンケートで調査を行い、議員として公式活動(本会議、委員会 議会を代表しての会合出席など)、準公式活動(質問の準備、会派活動など)、非公式活動(政党活動、選挙応援、大学院通学など)に分類して調査をおこなったところ、一日平均の活動状況は、下記のようになった、と冒頭に報告があった。

・公式=1.2時間(20%)
・準公式=3.1時間(46%)
・非公式=2.3時間(34%)

 しかし、議員の活動内容は個人によって大きく異なり、一般的な特色や傾向。人口規模、財政規模と活動時間の割合などについては、有意義な関係が見いだせなかった。そして、議員としての活動か判断できないものが少なくなかったと報告されていた。

 例えば、会派の活動で打ち合わせとあっても質問の準備か選挙か分からない。調査活動には、勉強会や講演会の参加も含むことになり、自己研鑽は準公式なのか、非公式なのか。ネットを使った調査もどこまでか分からない。消防団や地域の雪がこいなどは、地域によっては議員の仕事になっている例もある。自分の広報誌やブログの更新は、人によって分類が分かれる。陳情や請願の受け付けも個人か会派か政治活動か難しいなど迷った。

 公式か非公式かの分類は、最終的には住民が考えるべきだろう。住民が議員・議会に何をして欲しいかが根本の問題になる。これを明確にしないと報酬額を判断できない。議会としてやるべきことは、現状では分からないので住民への報告会などで公表し、議員や市民が何をもって「議員としての活動」、「議会としての活動」とするのか、出来るだけ明確な定義が必要だ。

 また、公式活動は、1.2時間だけとしても、すばらしい成果になれば、短いとはならない。バリューを図ることが今回はできなかったが、どのような付加価値を提供できたかがこれからはポイントになるのではないか。

 結論として、議会、議員の見える化は必要。市長は一日が情報公開で分かるが議員にはない。議員活動の情報公開「地方議会/議員の活動の“見える化”」が必要だと結んでいた。
 

 ■時給1,494円で議員になりますか?

 基調講演の後、来海合志市議が、議会活動(本会議や委員会などの公式活動)、議員活動(議員の立場で参加する活動、行事。ホームページの更新、研修会参加、後援会便りの作成・配布、選挙応援など)、ボランティア活動に分けて10ヶ月間の記録を元に自身の活動を公表していた。発表されていた資料によると、一日平均では

 ・議会活動 1.4時間
 ・議員活動 6.2時間
 ・ボランティア活動 2.5時間
   合計 一日あたり10.1時間とされていた。

 そして、合志市議の報酬で時給換算をした結果も示されていた。

 ・議会活動のみ=時給8,887円
 ・議員、ボランティアを含む=時給1,494円

 (※ボランティアは市民としての活動だが、選挙区内の活動であり投票に大きく影響している判断されているため、議員活動と関係性があると判断されているようだ)

 来海さんからは、この時給で議員になりますか、との問いかけもあった。ただし、議員、ボランティア活動は議員それぞれで、やらない人はやらないのが実情とされていた。

 ■市民相談は“口利き”? 議会報告会の必要性

 実践報告の二番手は、佐々木田川市議。市民相談の価値についての報告だった。田川市議は、カーブミラーを付けてくれ、職員の態度が悪い、就職の斡旋をして欲しい、お金を貸して欲しい、市有地にある木からどんぐりが落ちる音がうるさいから木を切ってくれ。単に話し相手になって欲しいだけなどさまざまな市民相談がある。不効率で“口利き”と思われてしまうことも多く一般的に評価は低いが、政策提言につながることもあり、そもそも自治に効率性を求めることが難しいので重要な政務活動だと考えている。しかし、議員に相談すべきことなのか市民にも考えて欲しいとされていた。

 そのうえで、現状を改善するには、チーム議会として相談を受けるべきだ。議会報告会を開いて直接市民と対話して政策につなげるべき。今は、議員の働き方が問われている時代。議員の権威化が行動を阻害する。市民と議員の距離を縮めること、議員の意思決定、活動の見える化をまずしていくべきだと主張されていた。

 ■議員、議会がなくなったらどうなるか。デメリットは何か。
 
 パラーの三番手は、戸波宗像青年会議所元理事長。投票率が40%台と低いことから、市民の関心が低いのは、市長や議員の責任ではなく市民の責任。無責任な政治家よりも無関心の市民のほうが責任は重い、と考え市長選挙で公開討論会を行った経験から、先の二人の議員の報告を聞いて、議員の活動は知らなかった。市民の多くもそうだろうとの感想を述べていた。
 そして、市民は議員はいつ、どこに出勤しているか。毎日市役所にはいないようだし、何をしているか分からない。市長と仕事の差は何か? 選挙で同じように選べれているのに、よく分からない。多くの市民は、公務員のように思っているのではないか。

 また、選挙では、地域代表として出している感覚が多いのではないか。それは、地域への利益誘導を求めていることにもなってしまう。議員に期待することは、お願い事(陳情・請願)を処理することが仕事かとの話しがあったが、市民にとってはどうやって行政に届けるか分からないので必要性はあるのではないか。でも、それができるのがいい議員なのだろうか? 市民それぞれに求めているものは違うが、市全体の利益につながることが評価になればいいと思う、との感想を述べられていた。

 そして、選挙では単に知り合いだから投票したとの例を聞くが、関心がない、傍聴もしていないで投票している実情がある。逆に言えば満足している、求めているものがないのかもかもしれないが、まずは、情報を発信してほしい、との要望も話されていた。

 会社であれば売り上げ、利益を上げで評価するが、議会や議員の評価はどうやって決めるのだろうか? 地域の運営を議員だけの任せるのではなく、市民こそ意識をあげるべきだろう。ただし、仕事もあるので、行政まで意識が届かない モンスターシチズンになることもある。
 だからこそ、行政と市民とのパイプ役は必要であり、職業としてコンセンサスが必要だが、もし議員、議会がなくなったらどうなるか。デメリットは何かを知りたいと発言されていた。

 ■議会は競技内容を間違えている
 
 この後にコーディネーターからいくつかのテーマが出され議論となったのだが、興味深かったのは、議員、議会がなくなったらどうなるか、の問いかけに対しての木下さんの話だった。

 木下さんは、議会は団体競技。本来、サッカーをする競技なのにゴルフをやっているようなもの、と現状の多くの議会についての見解を述べた後に、行政が3000名のアンケートをとり事業を行おうとすると議会の反論はない。なぜ、議会で独自のアンケートをやらないのか、自ら調査しないのか。役人は仕掛けをするもの。役人だけの資料だとだまされる。執行部ではいえないことを言ってもらいたい、と元市長だからこそいえる議会のあるべき姿について意見を述べていた。

 市長(行政)と議員はそれぞれ別の選挙で選ばれており、議会は二元代表性の一翼を担う、とされているのが一般的だろう。一翼として何をすべきか、何をしているかを「見える化」するようにするべき、というのがこの日の分科会の結論だろう。

★議会不要論があるなか、議員の実際の活動内容を公表していくことは重要だろう。そして、どこまでが議員としての活動なのか。報酬の対象になるのかを、市民も考えてみる必要があると思った。
 いろいろな会に呼んでくれるのはいいが、祝い金を求めないで欲しい。会合に参加したからとって、同じ考えだと思わないで欲しい。白を黒にしてくれなどの理不尽なお願いや“口利き”を議員に求めないで欲しいなど議員の本音もこの日の分科会では話されていた。議会不要論を払拭するには、議員が変わることが何よりも必要だが、市民、そして行政も今までの先入観を変える必要があるということは確かだ。それぞれに役割がある。はっきりと分けるわけにはできないだろうが、それぞれの役目、そして、議会の必要性をもう一度、考えてみるべき時期が今であり、それが地域主権になるはず、と思った。

 (上記の発言などは、当日のメモから編集したもの)