待機児対策に保育園を増やせ,は間違い?

 待機児対策は必要。しかし、今のような保育園を増やすべきではない。少子化時代に施設を増やしていくべきかという問題提起と発想を変えて新たなミニ保育園で待機児対策をしようと呼びかけているNPOの話を聞いてきた。

 話を伺ったのはNPOフローレンスの代表理事、駒崎弘樹さんだ。フローレンスは、自動車の任意保険とおなじように、毎月の掛け金をかけておくと必要な時に病児保育室を使えるというシステム(というよりビジネスモデル)で知られている。子どもが病気になったき、保育園では預かってもらえないので右往左往した経験を持つ身には魅力的で、私の子どもが小さかった頃にあれば使っていただろうと思うものだ。

 今回は、この病児保育のことも少し伺ったがメインは、この4月から江東区東雲で始まった新型のミニ保育園「おうち保育園」についてだ。

■複数の保育ママによるミニ保育園

 ミニ保育園(以下「おうち保育園」のこと)とは、簡単に言えば、空き家やマンションの一室を使い、複数の保育ママ(家庭福祉員)が乳幼児を預かるというもの。
 保育ママは、保育ママ一人あたり武蔵野市の場合では2~5人まで預かる(※)ため、少人数保育ができること、自宅を改造して行うのでアットホームな雰囲気で保育できるメリットがある。しかし、アルバイトは雇うことがあるが、一人でほとんどの保育することから自ら病気になってしまった時や出かけることもできないなど保育ママが休みを取りにくいこと。他者との接点が少なく孤立してしまうこと、保育室に改装ができる自宅が必要という条件などがあり、増えていない現状がある。

 そのため、フローレンスが保育ママを雇用し、ひとつの施設で複数の保育ママが保育するというシステムを考え出したのだそうだ。複数で保育できるため、保育ママの休みが取れることや預かれる人数を増やせることも特徴となっている。東雲で始まった「おうち保育園 しののめ」の場合は3名の保育ママによって9名を保育している。専用の施設がある保育園と自宅を改装して行う保育ママの中間ということになるのだろう。

■保育市場をつくるべき 

 駒崎さんは、認可保育園のように広い土地に立派な施設を用意していての待機児対策では時間と費用がかかり、とても待機児童問題解消につながる数の保育園を開設できない。空き家やマンションの一室など既にある施設を活用することにより、保育園開設時のコストを下げることができ、すぐに開設することができる。なによりも、現在は少子化であり子どもが急増するのではない。減ってしまった場合の施設をどうするか。撤退コストも考えれば、今以上に作るべきではないだろう。財政状況を考えれば、公費を増額することも難しい。
 何よりも待機児が多い都市部では土地がない。認可を作るとなれば税金がかかってしまう。公設公営の認可保育園では、一人当たり年間600万。民間の認可保育園なら240万。認証保育園なら150万がかかるとされているが、ミニ保育園なら140万で可能だ。そこで、待機児対策には、認可保育園をたくさん作るのではなく、家庭的保育市場を作ることだ。雇用にもつながる。認可保育園が大型バスなら、おうち保育園はタクシー。巨漢主義ではなく小さな船で対応すべきで、家庭的保育市場を作ることだ。

 ミニ保育園は施設を大きくしなくても済むので設置コストが低いばかりではなく、待機児が多いような町にてピンポイントで作ることもできる。諸外国では、イギリスのチャイルドマインダーなど同様の保育園が多い。保育園に入れないで仕事を諦めている潜在的な需要も考えれば、日本でもこのような保育園を広めるべきだ。
 肝心の保育内容、よく言われる質については主な対象は0歳から2歳なので、広いスペースは必要としないためことや子ども三人に一人の保育者になるので認可よりも手厚い。 また、日本では、ビルなどに開設するとなると用途変更の手続きが必要なことや保育園の運営を新規に受託しようとすると実績が必要になり新規参入ができない。施設基準などの規制も厳しく緩和することや民間企業が保育に参入しようとすると保育団体から反対の声があがってしまう。保育園が足りない時代なのなぜこのような参入障壁があるのか。政治家は考え直してほしい。待機児対策が進まないのは、このような保育社会主義に問題がある。保育園は現在の許可制から届出制にして市場原理に任せれば競争により質は高くなるはずだと話されていた。

 しかし、利用者の保育料だけでは、ミニ保育園の運営はできない。家賃などへの公的な支援は必要だろう。民間にすべてを任せるのではなく、現在の保育社会主義と市場主義の間、準市場という概念が必要になる。医療保険や介護保険と同じで、個人負担以外は社会が負担すると考えたほうがいい。東雲の場合は、大型の団地ができるさいに行政が間に入り、団地の一階に保育施設を確保できたから実現できたのだそうだ。

■短期的にはいいが

 以上は、ミニ保育園の概要。確かに子どもが右肩上がりに増えていくとは考えにくいこと。財政も厳しくなることを考えれば、保育園という新たな施設を作るべきかと考えてしまう。ミニ保育園なら住宅街の中に作ることもできるので、保育園への行き帰りの負担も少ないと考えられること。フローレンスで雇用する保育ママは正規職員であり、月に20数万円の給料を払うとしていたので安すぎる人件費で成り立っているのではないことを考えれば良いことが多いように思えた。武蔵野でこのようなことを担えるNPOなどの団体があればいいが、ないのなら認可保育園のサテライト園(分園)として連携しながら実施することもできるのではとも思った。
 実際の保育内容を見ていないことや実績がまだなことを考えれば、手放しで歓迎というわけにはいかないが、ミニ保育園を武蔵野市でも早期に検討をして可能なら実施をしてもいいと思った。
 
 ただ気になるのは、いわゆるバウチャー制度の導入を想定していることだ。話のなかに、子ども手当てをバウチャーにして、認可だけでなく認可外も使えるようにすべき。認可を増やすのではなく、ミニ保育園も含めた認可外の参入を増やすことで待機児対策を進めるべきとの主張だと思ったが、24時間保育や三食の提供などや何でもかんでも保育園が面倒みますというような保育園のサービス合戦になってしまないか、と思ってしまうからだ。

 保育園の問題は、労働問題、雇用問題でもある。定時に仕事を終わらせ帰宅できることや育児休暇をちゃんと取れるようにすること。孤立化しない育児環境を整える仕組みなど保育園という施設だけでは考えられない幅の広い問題だ。施設整備だけの問題ではない。
 短期的に見れば魅力だが、このようなことも同時に考える必要があり、それが日本の未来を示すことで国政の仕事ではないだろうか。

 駒崎さんは、内閣府の非常勤国会公務員として現政権の政策立案に携わっているのだそうだ。国が保育ママ制度を広めていくとの方針なので、ミニ保育園はより広がる可能性は高いと思う。待機児対策にはスピードが重要だが、同時に本当に子どものためにはいいのかを保護者も行政も考える必要がある。

(駒崎さんの話は、民主党東京都総支部連合会が運営している市民と議員による政策立案サイト、東京ライフの勉強会で伺ったもの)

※保育ママに統一的な基準はないので保育士一人あたり何名などの基準はない。地方自治体が独自に規定して補助金を出している例がほとんどだ。資格もなかったがこの4月から研修制度が設けられている。国は新たな子育て支援サービスとして位置づけ、法整備を行う児童福祉法等の一部を改正する法律案を今国会に提出している。

(改正法律案の概要には下記が記されている)
新たな子育て支援サービスの創設(児童福祉法等の一部改正)

○ 一定の質を確保しつつ、多様な主体による保育サービスの普及促進とすべての家庭における子育て支援の拡充を図るため、新たに家庭的保育事業(保育ママ)、すべての子どもを対象とした一時預かり事業、乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)、養育支援訪問事業及び地域子育て支援拠点事業を法律上創設し、市町村におけるサービスの実施の促進等を図る。

【参考】
バウチャーについて その概念と諸外国の経験 内閣府政策統括官 政策効果分析レポー(平成13年
47news 保育ママ、小学校入学前まで拡大 厚生労働省
児童福祉法等の一部を改正する法律案 (平成20年3月4日提出) 法律案案文・理由
武蔵野市 家庭福祉員(保育ママ)