自治体「内閣制」に異議あり!

 3月27日に開催された『自治体「内閣制」に関する緊急フォーラム』(主催;自治体議会改革フォーラム)に参加した。全国の地方議会の改革を進めてきた議会の当事者や研究者がパネラーとなり、地方議会改革の現状と政府が検討を進めている自治体での内閣制(議員が副市長になるなど執行部に入る)についての意見を述べるという内容だった。緊急ということもあり、テーマを絞りきれなかったが、内閣制にするこkinnkyu1003 (5)とで議会の機能が弱まり二元代表性が機能しなくなる可能性が高い。現在の制度のままで改革は十分できるというのがパネラーすべての見解だった。


 政府は、地域主権の確立を目指した地方自治法の抜本的な見直し行うために総務省に地方行財政検討会議(議長・原口一博総務相)を設置。来年3月をめどに地方自治法を抜本改正し「地方政府基本法」を策定する予定だ。この検討課題のなかに議会のあり方や長と議会の関係などについての検討があり、イギリスで行われているような議員の一部を副市長などの特別職や幹部職員に任用する「内閣制」などの導入が検討されている。

 フォーラムでは、廣瀬克哉法政大学教授(議会改革フォーラム呼びかけ人代表)をコーディネーターとして、神原勝北海学園大学法学部教授・北海道大学名誉教授 江藤俊昭山梨学院大学教授、三谷哲央三重県議会議長、大同衛京丹後市議会議長、中尾修東京財団研究員(前栗山町議会事務局長)がパネラーとなり、現在改革が行われている先進議会の事例などを紹介し二元代表制の一翼としての議会の役割と「内閣制」についてのコメントが述べられていた。

 それぞれの発言は興味深いものばかりだったが、特に注目したいと思えたのは下記のことだ。

・今回提案されている「内閣制」は、イギリスの地方自治体で導入しているのは少数。課題が多くなくなっていく方向だ。イギリスでは議員内閣制が主流。
・議論が十分ではないか。今の全ての制度を使いこなしてみて、その判断を市民がどうするかで考えるべき。地方のことは地方に任せて欲しい。
・発言力のある首長に取り込まれることが住民の幸せになるのか。そもそも、議会で議論をしていないことに問題がある。
・「内閣制」にすると首長集権になるのは間違いがない。
・多様な住民の意思を反映するには、合議体の議会を活性化すべき。使われていないことが問題。
・住民自治として議会の役割が高まっているのに、水戸黄門を待っている国民のように誰かに登場してもらっての改革がいいのか。今、議会に権限があり、首長にとっては速やかに実行できないので提案されたのかもしれない。
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 総じていえるのは、今の制度のままで議会改革を進めればいい。国や首長に主導されての議会改革をすべきではない。副市長や市の幹部に議員がなると、首長の部下になり上下の関係になり議論もできなくなる。自治体運営の失敗は、たいていは首長の失政であり、その監視も政策の議論もできなくなる「内閣制」には異議あり、というのが共通した主張だったと思う。
 議会基本条例を制定した議会が100を越え、これから次のステージになろうとしている。今までは議会内部の制度改革が主だったが、これからは自治体の改革へとなっていく。議会が変われば、自治体が変わる。その段階に差し掛かっている。議会改革が広がり裾野が広がっていけば頂点も高くなる、との神原教授の話も印象的だった。

★今回の「内閣制」の提案者は、橋下大阪府知事だ。大阪府のサイトでは提案理由として『地方自治体の基本構造である首長と議会の関係を見直し、首長と議会が予算編成等のマネジメントで協働しようとする「議会内閣制」』であり『自立的な地域経営を行う地方政府では、これまで以上に議会が果たす役割が重要だと考えています』とのメッセージが掲載されている。
 地方議会が重要であり『首長と地方議会が協働し責任を共有する』(橋下知事による「地域主権」確立のための改革提案から)ことは共感できる。ろくに調べもしないで勝手なことを言っているだけ、いちゃもんをいうだけ、支援者への利益誘導だけを求める議会や議員であれば、提案のように目的を明確にして議会と首長とが一緒に行動したほうがはるかに効率的だし市民のためになるのかもしれない。この提案が行われた背景には、首長にとって議会はじゃまな存在と思われているのではないか、との視点も必要だろう。 
 議会も首長も同じ方向へ向かって自治体を動かしてしまうと、監視や抑制が効かなくなる危なさは今以上に多くなると思う。神原教授の「自治体運営の失敗は、たいていは首長の失政」という指摘を考えると議会の重要性は非常に高く責任は首長以上にあるはずだ。

naikaku-e パネラーから指摘されていたことでもあるが、議会の権限、機能を常に意識し発揮していない議会のほうがはるかに問題なのかもしれない。首長の政策や自治体の事業の問題点を指摘し、改善策を示す。あるいは、独自の調査や市民との意見交換から異なる見方を示して、よりよい政策へと導く。それを市民に見えないところで行うのではなく、公開の場である議会で正々堂々と議論をしなら進めていく。そのような議会でなければ、首長にとっては“抵抗勢力”ではないのだろう。今回の提案があった背景も考える必要がありそうだ。

 だが、現実には役職を与えて懐柔したほうが面倒は少なく、はるかに政策実現のスピードアップになると首長は思ってしまうのではないだろうか。議員として考えてみると、市の執行部に入ることができれば、支援者への利益誘導がしやすくなる、あるいは名誉を得られると思い、この「内閣制」提案を議会、議員が受け入れてしまうのではないかとの危惧を覚えてしまった。
「内閣制」の動きも気になるが、この提案を地方議会、議員がどのようの受け入れるのか。議会が自ら改革を進めようという気持ちをなくしてしまうのではないかと気がかりだ。

「内閣制」が議会の機能をなくしてしまう危険性が高い。なくなってもいい議会なのかも問われている、と橋下提案からは思った。議会が持つ本来の機能や権限を使うことで、制度を変えるよりも自治体を良くしていくことは十分できるはずだ。そのような議会がどれだけあるのかも、今、問われている。それをしないから、議会なんからいらないんじゃないか、と言われてしまうのだろう。国に言われるよりも先に地方議会が自ら改革を行うことが必要だ。しかし、このような提案があったからこそ、議会制度を考えるきっかけにはなっている。現状のままでいいのかと問われると、はいそうです、とは言えないことが多いのではないか。そう考えると異議だけではなく、意義もあり! と思った。

画像上
 イギリスの「公選首長と内閣制度」(地方行財政検討会議より)

 橋下知事による「内閣制」についてのプレゼンテーション資料